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2018年5月7日(月)

出生前検査 “納得できる決断を支える”

高瀬
「超音波検査や、羊水検査などで、おなかの赤ちゃんに、病気や染色体異常があるかどうかを調べる、出生前検査。
5年前から始まった、妊婦の血液を分析する、新型出生前検査だけでも、5万人以上が受けています。」

異常が見つかった場合 中絶につながるケースが多い

和久田
「最新の報告では、新型出生前検査を受けた後、その後の詳細な検査で、染色体異常が確定し、出産が可能だった人のうち、およそ98%が、人工妊娠中絶を選んだことがわかりました。
本来、出生前検査は、赤ちゃんの健康の向上や、適切な養育環境を準備する目的で始められましたが、異常が見つかった場合に、中絶につながるケースが多いのが現状です。」

高瀬
「今回私たちは、中絶を選択した女性のその後に目を向けました。」

今も重くのしかかる決断

リポート:柳田理央子

さとこさん、37歳です。
3年前、出生前検査の末、21週になる赤ちゃんを中絶しました。
残された小さな骨つぼに手を合わせるたびに、自分の決断が本当に正しかったのか、思い悩んできました。

さとこさん
「もう二度とこの子を産んであげることができない。
産む選択もできたのに、産まない選択をした自分がいることは、重くのしかかってくる。」

「納得したのかわからないまま その時がきた」

妊娠19週目、胎児がダウン症だと診断された、さとこさん。
人工妊娠中絶が認められるのは、22週未満とされていて、医師からは、「中絶するなら早いほうがいい」と告げられました。
おなかはふくらみ、赤ちゃんの胎動も感じるようになったばかりの時でした。

産んで育てたい、と考えたさとこさん。
ダウン症の子どもを育てるとはどういうことなのか、インターネットで調べ始めました。

夫婦でも、毎日話し合いを続けましたが、結論が出せないまま、時間が過ぎていきました。
最終的に、夫の意見を取り入れ、中絶することに決めました。

さとこさん
「赤ちゃんを産んでいいのか、諦めていいのか、正解を探すけど、分からない。
夫婦で納得したのかしてないのかわからないまま、その時がきちゃったという感じです。」

「誰かに手を差し伸べてもらいたいたかった」

中絶の後、その決断に悩み、家に閉じこもるようになった、さとこさん。
しかし、相談できる場所はありませんでした。
通ってきた産婦人科からは、『何かあったらメンタルクリニックを受診してください』と告げられ、頼れる場所がなくなっていたのです。

さとこさん
「中絶したら、もう産婦人科には用がなくて、『自分たちで心のケアはしてください』ということかと思いました。
誰かに手を差し伸べてもらいたいたかった。」

悲しみやつらさ 受け止め合えるように

聖路加国際大学の、堀内成子(ほりうち・しげこ)教授です。

出生前検査を受け中絶した人の、カウンセリングを行ってきました。
自分を責め、苦しんでいる母親が数多くいることがわかりました。

“娘に対する申し訳ないことをしたという気持ちは消えない”

“毎日心が苦しくて、話す人もいなくて、このままでは心が壊れてしまう”


大学では今、同じ経験をした人たちが定期的に集まれる場を作り、悲しみやつらさを受け止め合えるようにしています。

聖路加国際大学 堀内成子教授
「今の状態だと、(苦しみを)ほとんど女性とそのカップルが抱えたままということになる。
グリーフワーク(悲しみを癒やす作業)をするサポート体制をもっと整えていくことが必要。」

重大な決断をするまでに 考える時間 を

高瀬
「専門家によると、こうした中絶後の、女性達のケアについては、これまでほとんど、議論されてこなかったということです。
さらに、もうひとつ課題とされるのが、重大な決断をするまでに、考える時間が少ないということなんです。」

和久田
「先ほどの、さとこさんの例だと、胎児の異常を示す確定診断が出たのは、妊娠19週目。
その決断までには、3週間ほどの時間しかありませんでした。」

和久田
「こうした状況を改善しようと、医療も動き始めています。
確定診断よりも、早い段階で行う超音波検査などの時から、情報提供を始めることで、考える時間を長く持ってもらおうとしています。」

産みたいという母親の決断を支える情報提供

広島大学病院では、胎児に異常の可能性があった場合、確定診断を待たずに、いち早く情報提供を始めています。
障害のある子が、日々どのように暮らし成長しているか、どんな支援を受けているかなどの、具体的な情報です。

希望があれば、ダウン症の子どもや親に協力してもらい、直接話を聞ける場も設けます。
こうしたことで、産みたいという母親の決断を支えようとしています。

広島大学病院 遺伝子診療部 兵頭麻希医師
「ネガティブなことも伝えるけれども、こういうふうに切り抜けていける、という情報も伝えていく。」

中絶を選ばざるを得なくなった場合の心の支え

一方で、最終的に中絶を選ばざるを得なくなった場合には、その決断に寄り添い、その後に抱える心の負担に、どう向き合えばいいか、伝えるようにしています。

広島大学病院 遺伝子診療部 兵頭麻希医師
「いろいろ悩んだ末の決断で、しっかり見てあげられたというのを、サポートする私たちが、一緒に精神的にも支えてあげることが大事。」

「検査前から妊娠後もサポートを続ける一貫した体制が必要」

和久田
「出生前検査の専門家は、『重い事実を突きつける出生前検査には、一時的な情報提供だけでなく、妊婦やその家族を検査前から妊娠が終了した後もサポートを続ける一貫したカウンセリング体制が必要』だと指摘しています。

高瀬
「ここまで、出生前検査についてお伝えしました。」

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