
和久田
「熊本地震から明日(14日)で2年です。
今もなお、およそ4万人の方が避難生活を続けています。」
高瀬
「その理由の1つが『住宅再建の遅れ』です。
“家を建てようとしても、工事が始まらない”という課題に直面しています。」
和久田
「熊本地震から明日(14日)で2年です。
今もなお、およそ4万人の方が避難生活を続けています。」
高瀬
「その理由の1つが『住宅再建の遅れ』です。
“家を建てようとしても、工事が始まらない”という課題に直面しています。」
リポート:岡谷宏基(NHK熊本)
熊本地震で、住宅の6割が全半壊した益城町。
この町で、新しい家が建つのを待ち望んでいる人がいます。
髙宮千恵子さん、80歳です。
地震で自宅が全壊しました。
髙宮千恵子さん
「母屋はこっちのほうに建っていた。」
先月(3月)ようやく新しい家の設計図が出来上がりましたが、業者から思いも寄らぬことを言われました。
“すぐに工事は始められず、自宅の完成は1年以上先”だと言われたのです。
髙宮千恵子さん
「年をとっているから、どれくらい生きられるか分からないのに、こんな目に遭わないといけない。」
新しい家ができるまでの一時しのぎとして、生活しているのは庭にある手作りの小屋。
6畳ほどの小屋に夫と2人で暮らしています。
トイレもありますが、外に出ないといけない上、扉はありません。
お風呂の脱衣所には、床がなく、冷たいコンクリートの上で着替えています。
簡素な作りのため、車の振動や強風などでも、小屋は揺れるといいます。
髙宮千恵子さん
「一生ここで暮らせと言われたら嫌だが、我慢しなければ、しかたがない。」
髙宮さんのように、全半壊となった自宅や、敷地内の小屋などで暮らす人は益城町だけでおよそ4,000世帯。
多くの人たちが、自宅の再建を待ち続けています。
住宅再建が遅れている最大の要因は、建設業の深刻な人手不足です。
この日、熊本市内の工務店の担当者が現場を訪ねると、大工がいません。
工務店社長 若杉美雪さん
「大工も“掛け持ち”で他の住宅会社の棟を上げて、着工されているので、この(人手不足の)悪化はどんどん、ひどくなってきていると思う。」
今、熊本では、職人などの争奪戦が激しくなっています。
1人に対して、およそ6社がとりあっている計算です。
工務店 社員
「(職人が)確保できない。」
工務店社長 若杉美雪さん
「この現場も(日程が)ずれる。
お客さんに(完成延期の)お願いをし直さないといけない。」
この工務店でも、大工などが確保ができず、工事が遅れる現場が相次いでいて、住宅が完成するには1年もかかってしまう状態です。
工務店社長 若杉美雪さん
「(お客さんを)待たせるのも心苦しい。
職人もすごく疲れている、慌てさせると事故のもとだし、会社も順調に回していかないといけない3つが重なるから、(人手不足が)どこで収束するのか、先が見えないのでこわい。」
深刻な“人手不足”の影響は公共事業にも及んでいます。
家をなくした被災者の住まい、「災害公営住宅」の建設が数か月遅れる事態があちこちで起き始めているのです。
しかし、人手不足を解消する具体的な手だてはなく、県は、限られた人材で工事を進めていくしかないといいます。
熊本県 住宅課 課長 小路永守さん
「何かひとつやれば、いまの状況が劇的に改善されるという秘策はない。
県市町村、施行者と情報交換をしながら、住まいの再建の加速化を図っていけたら。」
高瀬
「ここからは人手不足の問題を取材している後藤記者とお伝えします。
建設現場では、どうしてここまで人手が不足しているんでしょうか?」
後藤岳彦記者(ネットワーク報道部)
「建設業の就業者は、平成9年の685万をピークに減少しています。
ピーク時より180万人以上も減っているんです。
180万人というと、熊本県の人口と同じなんです。
少子化もあって、若い人のなり手が激減していることが大きな要因です。」
和久田
「急激にいなくなっていますね。
改善していくのは難しそうですね。」
後藤記者
「さらに、全国的な“人の奪い合い”になっています。
こちらご覧ください。
九州・沖縄をはじめ全国では、外国人旅行者の急増に伴うホテルの建設が相次いでいます。
また、東日本大震災の被災地では、今も復興事業が続いていますし、東京など首都圏では東京オリンピックパラリンピックに向けた工事も本格化しています。
各地の建設ラッシュで、限られた人材を奪い合う状況が続いているんです。」
高瀬
「人材不足の解消にはどうしたらいいのでしょうか?」
後藤記者
「国や建設業界が特に期待しているのが外国人です。
建設業に携わる外国人の数は昨年度5万5,000人余りで、この7年間で4倍以上に増加しています。
しかし、180万人以上も減っている中で外国人の数はわずかでして、抜本的な解決策にはなっていないのが現状です。」
和久田
「ひとたび大災害が起きると、他の地域でも同じようなことがおきかねないですよね。」
後藤記者
「そのとおりです。
被災者にとって、家の再建のためには地元の工務店などが頼みの綱です。
しかし、首都直下地震など大きな災害が発生すれば、熊本のように建設現場の人手不足によって、被災者の生活再建など復興へのリスクになりかねない危険性をはらんでいると感じました。」
和久田
「熊本地震2年、明日は熊本城から中継でお伝えします。」