これまでの放送

2018年4月12日(木)

「みなし仮設」で孤立死が相次ぐ理由

高瀬
「今も3万8,000人が避難生活を送る熊本地震の発生から、明後日(14日)で2年になります。
今日(12日)からシリーズで、被災地の課題についてお伝えします。」

熊本地震 「みなし仮設」で避難者の7割以上が暮らす

和久田
「こちらは、多くの被災地で使われてきたプレハブ型の仮設住宅です。」

高瀬
「一方、熊本地震では、民間の賃貸アパートなどを行政が借り上げる『みなし仮設』が本格的に利用され、避難者の7割以上が暮らしています。
この『みなし仮設』は、被災者にとってはプライバシーが保たれた住居に早く入居できるメリットがあり、行政にとっても建設コストがはぶけるメリットがあります。」

和久田
「しかし今、住環境が整っているはずのみなし仮設で、孤立死が相次いでいる実態が明らかになってきました。」

みなし仮設で孤立死した男性

リポート:木村隆太記者(熊本局)

今年(2018年)1月、御船町のみなし仮設で1人の被災者が亡くなりました。
木下正美さん。
死因は心不全。
誰にもみとられずに亡くなった孤立死とみられています。

農家だった木下さん。
地震の前、今はさら地になっている御船町のこの場所で、1人で暮らしていました。
自宅を失い、5キロ離れたみなし仮設に入居することになったのです。

長年、木下さんと同じ地域で暮らしてきた友人は、住み慣れた地域を離れたことで、孤立していたのではないかと感じています。

同じ地域に暮らしていた 川添誠一さん
「アパートに入って1人の生活が始まって、安らぎというか、そういったことがだんだん薄れていったのではないか。」

今回の地震で利用が広がった、みなし仮設。
実はこの2年、孤立死した人は16人にも上ります。
なぜ、みなし仮設で孤立死が相次いでいるのか。

(理由1)広範囲に点在しているため見守りに手間と時間がかかる

理由の1つに、行政の支援活動の難しさがあります。
益城町から委託を受け、みなし仮設の見守り活動をしている団体です。

見守り支援担当
「困っていることはありませんか?」

「足がときどき痛い。」

2人1組のスタッフが1世帯ずつ訪問して、暮らしや健康の相談にのっています。
しかし、スタッフが手分けして回っても、1世帯につき、4か月に1度訪問するのが限界だといいます。
益城町で被災した住民は、熊本市など23の市町村に点在するみなし仮設で暮らしています。
そのため、見守り活動に膨大な手間と時間がかかるのです。

見守り支援担当
「基本的には1軒1軒足で稼いで回るから、時間と労力が大変。」

(理由2)電話聞き取りでは変化に気づきにくい

木下さんの場合、支援の受け皿から外れてしまっていたことも分かりました。
木下さんの支援記録です。
支援スタッフは、電話などで様子の聞き取りを行ってきました。
その際、木下さんが「仕事をしていて不自由はない」と答えたことから、継続的な支援は必要ないと判断。
その後、スタッフが体調の変化に気づけないまま、亡くなってしまったのです。

離れて暮らしてきた、木下さんの息子の和輝さんです。
みなし仮設に入れば、父親は落ち着いて暮らせるのではないかと考えていました。

木下和輝さん
「突然だったんで、さみしい。
近くにいてあげれば一番よかったかなと。」

「支援の必要なし」とされている人から孤立死が相次いでいる

和久田
「取材した熊本放送局の木村記者とお伝えします。」

高瀬
「みなし仮設で孤立してしまいがちな被災者の状況を見守るというのも、なかなか簡単なことではないようですね。」

木村隆太記者(熊本局)
「熊本では、少しでも支援の効率を上げようと、支援の区分を作っています。
『日常生活・住まいともに課題がある人』『どちらか一方にだけ課題がある人』、そして『まったく支援の必要がない人』。
この4つに分けて、必要性の高い人に支援が優先的に届くようにしてきたんです。

ところが、こちらの『支援の必要なし』とされる区分の中から、木下さんのような孤立死が複数出ていて、現場ではどう見守っていけばいいのかショックが広がっています。」

みなし仮設の利用は今後広がる方向

和久田
「実はこのみなし仮設の利用は、今後想定される災害でも広がる方向になっています。
国の検討会では、南海トラフ巨大地震と首都直下地震で必要な仮設住宅の総数を、それぞれ最大205万戸、94万戸と想定しています。
その大部分を、スピーディーに準備が整う、みなし仮設で賄う計画なんです。」

高瀬
「そうすると、みなし仮設で孤立を防ぐのは、本当に重要な問題ですね。」

木村記者
「地域防災に詳しい熊本県立大学の澤田道夫准教授は、住民どうしがお互いに支え合う『共助』が重要だと指摘して、悩みを共有できる場や、自治会に加入してもらうなどして地域からの孤立を防ぐべきだと提言しています。

実際に、熊本では取り組みが始まっています。」

月に2~3度の集まりで癒される

みなし仮設の被災者などが集まる交流会です。
月に2~3度、15人ほどが集まって食事会などを開いています。

「今日の来る日を、指折り数えて待っていた。」

「近くのお友だちがほしいわけでしょ?
気持ち分かる。」

離ればなれになり、失ってしまったコミュニティーを取り戻そうと、地震から半年後、自主的に集まるようになったのです。

みなし仮設の避難者
「悩んでいることを話す、そのことだけでも心が晴れる。
この場に来るだけでうれしいと言うように、癒やされる。」

地域のコミュニティーをどう維持していくかが重要

和久田
「こうした取り組み、ささやかに見えますが、行政の支援のすきまを埋めるという意味で非常に重要な取り組みですね。」

木村記者
「実際に参加した人の中には、『避難生活の励みになる』と、自分の住んでいる地域でも、みなし仮設の避難者を集めて交流会を開きたいと話している人もいました。
支援団体もお茶代として5,000円を負担するなど、その輪を広げようとしています。
取材をして現場で感じたのは、人とのつながりが、いかに命を守る上で重要か、そして、維持することがいかに難しいかということです。
今後、さまざまな災害に対応するためにも、地域のコミュニティーをどう維持していくのか、考えていく必要があると思います。」

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