これまでの放送

2018年3月28日(水)

里親たちが明かす“現実”

和久田
「虐待などで実の親と暮らせない子どもを里親に預ける『里親制度』。
子育てを終わった人や、子どものいない夫婦など、さまざまな人たちが里親になっています。


子どもは家庭的な環境で育つことが望ましいと、国は、小学校に通う前の子どもについては、おおむね7年以内に75%以上に増やすなどという目標を掲げ、自治体に対し、目標に沿った計画を作るよう今週中にも伝えることにしています。
しかし、実際には20%にも満たないのが現状です。」

高瀬
「なぜ、低い水準のままなのか。
今回、NHKでは、里親の有志グループの協力のもと、全国の里親を対象に、独自にアンケート調査を実施しました。
すると、里親が置かれる厳しい現実が明らかになりました。」

独自アンケート 里親たちの声

今回寄せられた里親553人からの回答。
里子の養育で困難を感じていると答えた人は、およそ8割に上りました。

“盗み癖がある”

“子どもが暴れる”

心に傷を負った子どもたちのこうした行動。
追い詰められ、預かることができなくなった経験のある里親は、4人に1人に上りました。

一度は預かった子どもを手放さざるを得なくなった里親の女性です。
子どもは、施設で年上の子どもたちから繰り返し暴行を受けていたと言います。

里親の女性
「彼が外に向けてやったことは、彼がされてきたことであるのは間違いない。
相当に怖い思い、嫌な思いをたくさん、小さいころからしてきたんだろうな。」

子どもが家にやってきたのは、小学生のころ。
女性は、次第に子どもの行動に振り回されるようになります。

“しょうゆ瓶を壁に投げつける”

“はさみ2丁を持ち出す”

子どもは、女性を試すように問題行動を繰り返しました。
一方で、突然甘えてくることもあったと言います。

里親の女性
「すごいかわいいときはかわいい子。
幅のある子だったので、振り回されちゃう。」

女性は次第に追い詰められ、寝込んで、食事を作れなくなることも増えていきました。

里親の女性
「やっぱり相当疲れていた。
軽くうつ状態だったんじゃないか。」

子どもと向き合う努力を続けた女性。
しかし、限界を感じ、数年後、預かることを断念しました。

里親の女性
「決して楽ではない、そういうのを受け止めるのは。
ちょっとやはり無理だろうと。
無力感はすごくあった、いつも。」

高瀬
「取材にあたった野田記者です。
幸せにしてあげたいと預かりながらも、断念した里親の方の悲しみが伝わってきました。
なぜ、こうした事態になってしまうのでしょうか?」

野田綾記者(ネットワーク報道部)
「里親の元に来る子どもたちは、寂しさや不安など、心に傷を負っているケースがあります。
親から愛される経験をしていない子どもも少なくないため、里親に甘えたいと思いながらも、悪いことをし、里親の愛情を試そうとします。
アンケートでは、『困った時に相談先がなかった』など、里親たちが孤立し、苦しんでいる声が寄せられました。
重要なのは、里親と子どもたちを孤立させないことです。
模索を始めた地域があります。」

東京・中野区。
商店街の一画で、月に2回、「里親サロン」が開かれています。

齋藤直巨さん
「子どもが大変なのか、自分が大変なのかって言ったら、両方。」

里親
「両方だね。」



活動を始めた、里親歴10年の齋藤直巨さんです。
里子を預かる中で生まれる不安や悩みを解消したいと、里親同士が集まって自由に話せる場を作りました。

里親
「何が大変で、何が大変じゃないかが分からない。」

齋藤直巨さん
「子ども自身の出てくるものを、どう受け止めていいのか分からなかった。
なんで私こんなに難しいと思っているのかなって。」

齋藤直巨さん
「その親子だけに任せないというか、孤立しないっていうことなのかな。
その子に関わる人が皆で一緒になることで、この子の一番健やかな成長を守れる。」

さらに、齋藤さんたちは、子どもたちがほかの里親の元にも行き来できるような関係作りに取り組んでいます。

齋藤直巨さん
「よく来た。
勇気出したの。」

「うん。」

齋藤直巨さん
「えらいじゃん。」

子どもが里親との関係に行き詰まった時などに、頼れる場所を増やしてあげようとしているのです。

里子
「里親が増えてほしい。
いっぱい頼れる人がいたらいい。」

多くの人たちが子どもを支えてくれれば、1人で思い悩まずに済む。
里親も期待を寄せています。

里親
「1人だけでは育てきれない。
サポートがあって初めて成り立つ。
受け止めてもらうだけで、こっちもケアされる、復活できる。
子どもとうまく向き合えるかなと思える。」

和久田
「こうした取り組み、もっと増えたらいいですね。」

野田記者
「現状では、こうした取り組みのほとんどは、個人や地域が主体です。
例えば里親への委託率が7割を超えるイギリスでは、合わせて450もの里親の支援機関があり、専門の知識を備えたソーシャルワーカーがいます。
定期的に子どもや里親の聞き取りやケアを行うなど、きめ細かな支援が法律で義務づけられています。」

高瀬
「日本では、ここまで進んでいないということなんですね?」

野田記者
「日本では、児童相談所が子どもの問題全般に対応し、人手も足りず、ケアに手が回らないのが現状です。
子どもが家庭的な環境で健やかに成長していくためにも、行政が主導して支援を充実させていくことが強く求められていると感じました。」

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