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2018年3月3日(土)

ふるさとの財産が奪われる! ~広がる森林盗伐~

今、日本の山で思いもよらぬ事態が起きています。
自分の山の木が知らないうちに切られる“盗伐”です。




山の所有者
「ひどいなあ。
ちくしょう、本当に。」




背景にあるのは、木材価格の上昇。
中国など海外への輸出が増え続け、再生可能エネルギーとしての需要も広がっています。
その陰ではびこる盗伐の闇。
あなたのふるさとの山は大丈夫ですか?

二宮
「個人で森林を所有する人は全国に300万人以上います。
その大切な財産が盗まれる事態が起きています。
国も先月(2月)から緊急の調査に乗り出しました。」

小郷
「盗伐の手口とは一体どのようなものなのか。
被害が集中する宮崎からの調査報告です。」

調査報告“盗伐” 狙われる山は…

リポート:松井嚴一郎(NHK宮崎)

宮崎市の郊外に広がる、盗伐の現場です。
年輪を刻んだ杉の残骸が打ち捨てられています。

かつては青々とした杉に覆われていた山。





一昨年(2016年)撮影された写真では、山肌がむき出しになっています。




被害者の1人、海老原裕美さんです。
生まれ故郷の宮崎を離れ、今は千葉県に住んでいます。

海老原裕美さん
「大体樹齢60年くらい。
これも(盗伐)です。」




父親が買って世話をしてきた山ですが、18年前に亡くなり、見る人がいなくなっていました。

海老原裕美さん
「墓参りに来たついでに山を見に行こうとなった。
そうしたら木がなくなっていた。
関東に住んでいたら、まず(山を見に)来ないと思います。」

この事件では2人が逮捕され、今年(2018年)1月、「森林窃盗」の罪で起訴されました。

2人は、いずれも森林の売買を仲介する業者。
通常は、山の持ち主から伐採する権利を買い付け、ひとまとまりにして転売します。



今回、2人は伐採の権利を得ていないのに、あるかのように装って転売。
立件された分だけでも100万円を超える利益を得ていました。
これまでの裁判で、犯行が発覚しないよう、海老原さんのように離れた場所に住んでいる人の山を狙って、盗伐を重ねていたことが明らかになっています。

調査報告“盗伐” 業者の手口

盗伐を行う業者は、どのように山の近くに住んでいない人を探すのか。
過去に盗伐に関わり、摘発されたことのある人物に話を聞くことができました。

過去に盗伐に関わった人物
「山の番地があるでしょ。
その番地の人の住所が知りたいときに、法務局で調べるだけ。」

所有者の名前や住所が記された登記簿をとって、山から離れて住む人を探していたという、この人物。
近くの集落を訪ねて回り、親族が残っていないことまで確認していたといいます。

過去に盗伐に関わった人物
「訪ねていって、いなかったり、遠くにいて連絡がつかなかったりした時に、(木を)切っても分からないだろうと。」

さらに、狙う場所にも特徴がありました。

過去に盗伐に関わった人物
「この辺だったら、やっぱり山の上のほう。
奥のほうです。
あっちの奥とか、こっちの奥とか。
重機の音も聞こえないし、はたから見ても分からない。」

ここ数年、同じような手口で盗伐に関わる業者が目立つようになっているといいます。

調査報告“盗伐” 流通に抜け穴

さらに取材を進めると、流通の仕組みに課題があることも分かってきました。
競りで丸太を買い付ける業者は、盗伐材が混じっていても見抜くのは難しいと言います。

丸太を買い付けに来た業者
「盗伐…、そこまでは分からないですね、その材が盗伐なのかは。
(盗伐された木材が)流通していてもおかしくない。」




要因の1つが、丸太を競りにかける際の証明書にあります。
法律に基づいて提出が義務づけられていますが、場所や面積などの項目があるだけで、切った本数は書く必要がありません。
証明書を見るだけでは、実際に何本の木を伐採したのか分からないのです。
盗伐材の流通ルートを知る林業関係者は、この抜け穴をついて、盗伐材を混ぜ込む手口が横行していると明かしました。

盗伐材の流通ルートを知る林業関係者
「(証明書のある)ほかの所と一緒にすればわからん。
(盗伐材を)混ぜてしまえば、いちいち数えない、何本かは。
だからどうにでもなるということ、悪いことをしようと思ったら。」

その木がどこで切られたのか、さかのぼって調べる仕組みが確立されていないことが、盗伐を止められない1つの要因となっていました。
専門家は、こうした状況を放置すれば、盗伐の被害はさらに広がると指摘します。

宮崎大学 農学部 藤掛一郎教授
「戦後に人工林を作ってきたが、それが今、切り時を迎えている。
本州、東北の方にこれから切り時が移っていくので、宮崎と同じように盗伐の問題が起こる可能性は、全国的に今後増えていくことが懸念される。」

広がる“森林盗伐” 背景に何が

小郷
「巧妙に盗伐が進められているって、驚きましたね。
スタジオには、この問題を取材している國仲記者です。
深刻な問題だと思うんですけれども、対策というのは進んでいるのでしょうか?」

國仲真一郎記者(NHK宮崎)
「違法木材を使わないようにしようという法律は去年(2017年)施行されましたが、抜本的な対策と言えません。
欧米などでは、産地を確認できる仕組みが整っています。
木材を買う側にもその責任を負わせ、罰則も設けています。」

二宮
「日本でそういった対応を取るのは難しいことなんでしょうか?」

國仲記者
「現実的には難しい問題があるんです。
その理由が、この図面にあります。
こちら、ご覧ください。」

小郷
「ずいぶん古い図面ですね。」

國仲記者
「こちらは、山の所有者などを示す図面です。
明治20年に作られたもので、今もまだ使われているんです。」

二宮
「明治20年、130年ほど前。
線が引かれていますが、こちらはどういったものなんでしょうか?」

國仲記者
「こちらは境界線を示すものなんですけれども、ただ、実際にこの山を歩いてみると、地図とは広さや地形が違うなど、全く一致していませんでした。」

小郷
「手書きですし、ちょっと曖昧ですよね。」

國仲記者
「そうなんです。
そして、この境界線の曖昧さが、盗伐が横行する大きな原因でもあるんです。」

二宮
「まず、そうした境界線の曖昧な問題を解決した方がいいのではないかと思うんですが?」

國仲記者
「実は、国や自治体はおよそ70年かけて調査を続けていますが、人と予算が限られているため、確定しているのは、全国の森林の半分以下にとどまっているのです。」

小郷
「70年で半分以下。
まだまだ時間がかかりそうですけれども、摘発逃れを防ぐのは難しいということなんでしょうか。」

國仲記者
「森林は貴重な資源であるにも関わらず、国も、そして所有者も、これまであまりにも無関心だったことが、こうした事態を招いたのだと感じました。
山が直面している危機に目を向け、有効な対策を急ぐ必要があると思います。」

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