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2018年1月29日(月)

なぜ“女性のひきこもり”は見過ごされてきたのか

高瀬
「けさのクローズアップ。
今日(29日)は、見過ごされてきた『女性のひきこもり』についてです。」

「54万人」に含まれない“女性のひきこもり”

近江
「内閣府が行った『ひきこもり』の調査です。
ひきこもりとは、『買い物などで外出する以外は、家にとどまることが半年以上続く状態』と言われています。
39歳までで54万人いると推計されています。」

高瀬
「しかし、この中に含まれない女性たちの存在が明らかになってきました。
それが『家事手伝い・専業主婦』で、ひきこもる人です。
なぜ見過ごされてきたのか、その実態からご覧ください。」

40歳を過ぎても自宅にひきこもる女性

リポート:大澤深雪(社会部)

41歳の女性です。
1人暮らしで仕事はしておらず、父親の年金などで暮らしています。

女性(41)
「20代だとニートとか、女性だから家事手伝いと言われる。」

女性は高校を中退後、アルバイトをしながら就職を目指しました。
このころは、友人と趣味のスポーツ観戦やコンサートに行くこともあったといいます。
しかし、当時は就職氷河期。
特に女性の就職は厳しく、仕事に就くことをあきらめました。
家事手伝いとして家にいる時間が長くなり、次第にかつての友人たちとも疎遠になっていきました。

女性(41)
「自分の後ろめたさ、劣等感があるので、働いている、家庭持っている、そういう人に、いまの状態を知られるのが怖くて連絡とれなかった。
そのうちに音信不通になってしまった。」

自分に自信が持てなくなり、親戚から勧められたお見合いの話も受けることができませんでした。
40歳を過ぎても、自宅にひきこもる日々が続きました。
食事の買い物以外、ほとんど外出することもなく、人と会話する機会もありません。
「このまま1人で暮らし続けることになるのか」。
女性は自分の将来に強い不安を感じるといいます。

女性(41)
「疎外感と排除感。
(社会から)いないことにされている。
ひとりぼっちでお金もない。
もう生きていくすべがないみたいな。
そういう恐怖を感じる。」

表面化しなかった背景に「偏見」がある

見過ごされてきた女性のひきこもり。
その深刻な実態が当事者グループによる調査で初めて明らかになりました。
回答を寄せた371人のうち、家事手伝いや主婦と見られる人の割合は半数以上に上りました。
さらに、ひきこもりが長期にわたっていることが明らかになりました。
ひきこもりの年数は、平均でおよそ7年半。
中には、20年と答えた女性もいました。
調査からは、「居場所がない」「相談出来る人がいない」など、切実な状況が浮かび上がりました。
なぜ表面化してこなかったのか。
ひきこもりの問題に詳しい精神科医の斎藤環さんは、次のように指摘します。

筑波大学教授 斎藤環さん
「いまだに家事手伝いという言葉があったり、専業主婦って言葉があったり、家に閉じこもってる状態を、そういう言葉でマスクできてしまう。
社会に出なくてもいいという偏見が、社会全体に根強いところがまだあって、積極的に就労しないことの不安感とか、問題意識がまだまだ乏しいと思う。」

面接 話し相手 いじめ… 原因は様々

高瀬
「取材した社会部、大澤記者です。
社会からだんだんと疎外感を感じていく、女性たちの切実な状況があるんですね。」

大澤深雪記者(社会部)
「実態調査の自由記述の一部です。
『就職の面接に落ちて、自分に価値がないと思ってしまった』『話せる人が全くいなかった』、中には、男性からのいじめなどが原因で男性不信になったという人もいました。」

近江
「どうして家事手伝いの人たちのひきこもりが見過ごされてきたのですか?」

大澤記者
「家事手伝いは、家庭内で仕事をしているとして、ひきこもりの状態にはあたらないと、国の調査の対象からは除かれてきたんです。
しかし、実際は、就職などの社会参加の機会を逸してしまい、家事手伝いの期間が長引いた結果、ひきこもりになる女性も多いと感じました。
こうした女性たちを支えようと、新たな取り組みが始まっています。」

つらい思いを共有する試み

今月(1月)東京・渋谷区で行われた集会。
その名も「ひきこもり女子会」です。
孤立する女性たちを支えようと、ひきこもりを経験した女性たちが1年半前から定期的に開いています。
会では、まずスタッフが自らの経験を打ち明け、つらい思いを共有する仲間であることを伝えます。

ひきこもりUX会議 林恭子さん
「27歳くらいだったと思うけど、限界がきて、自宅にひきこもる状態になった。
かなり強い絶望感と、未来を失ったという感じになった。」

そして、参加者が本音を語りやすいよう、少人数に分かれて話す時間を設けます。
相手の話を否定しないというルールの中で、参加者は、「仕事」や「親子関係」など、抱え込んできた悩みを打ち明け始めていきます。

参加者
「母と暮らした時期、心身ともに調子悪く、何日も立ち直れなかった。」

参加者
「経済的に自立したかったので、職業訓練で、体を壊した。」

ひきこもりUX会議 林恭子さん
「焦りはするよね。」

語り合い、苦しみを分かち合うことができる場を求め、2回3回と通うようになる人も多いといいます。

参加者
「体験談を聞いて、すごく心に残ったことがあった。
本当に共有できる場があるのはいい。」

参加者
「自分と同じ立場の人がいっぱいいて、胸を開いて話せるところがある。」

社会とつながりはじめた女性

会に参加したことで、前に踏み出すことができたという女性がいます。

女性(37)
「気持ちが明るくなって、こんな私でもなんとかなるかなって。」

37歳の女性。
服飾の専門学校を中退後、15年近く実家でひきこもっていました。
一昨年(2016年)はじめて女子会に参加。
その場で、同じ苦しみを抱える女性が再就職して努力したという話を聞きました。
勇気づけられたという女性。
思い切って、かつての夢だった服飾関係の求人に応募しました。

「短くなってはいけない。」

今はパートとして働きながら、少しずつ仕事に慣れようとしています。

女性(37)
「(女子会に)行ってなかったら、今もずっと部屋にいて、ひきこもっている。
ひきこもっていると思います。
自分も頑張れるのかなと、ちょっと前向きに考え始めていて、このまま頑張りたい。」

見過ごされてきた、女性の引きこもり。
女子会を行う団体では、女性たちが少しでも社会とつながるための支援がさらに必要だと考えています。

ひきこもりUX会議 林恭子さん
「一人で孤立し、日々たたかう人たちの限界、疲れきっている様子も伝わっている。
苦しさをそのまま受け止めて、決して否定することなく受け止めた上で、彼女たちがどう生きていきたいかを、後ろからサポートする場や支援が必要。」

女性に特化した取り組みが重要

高瀬
「誰かとつながりを持つこと、大切だと感じました。」

大澤記者
「取り組みが始まって1年半になりますが、のべ1,400人が参加したということです。
ひきこもる人たちへの支援は、公的機関でも行われています。
ただし、職場や学校で男性から精神的に傷つけられるなどしてひきこもった女性も少なくないため、女性に特化したこうした取り組みが重要になってきていると感じました。」

実態を把握 支援につなげることが大事

近江
「今後はどのようなことが必要になってくるのでしょうか?」

大澤記者
「内閣府は来年度、40歳以上の男女を対象にひきこもりの調査を初めて行うことを決めています。
一方で、『家事手伝い』や『主婦』に含まれる女性のひきこもりについては、課題だとは認識しているものの、具体的には決まっていないとしています。
現状のままでは、本人たちの社会復帰がますます難しくなる上、親が亡くなった後、生活の基盤を失う女性たちが出てくると、専門家も指摘しています。
実態をしっかりと把握し、支援につなげていくことが大事だと感じました。」

近江
「女子会を主催した団体では、ひきこもる女性たちへのメッセージをのせた冊子を作っています。
また、VTRでお伝えしたこの団体の実態調査は、中間報告の段階で、来月(2月)25日、正式なものを発表するとしています。」

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