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2018年1月24日(水)

いま「不便」が見直される理由

“夕方から雨が降りそうだけど、乾燥までしておかなくていい?”

アドバイスまでしてくれる、洗濯機。
お客さんを案内する、ロボット。
便利になるのはいいけど、私たちの暮らし、本当に豊かになっているのかなあ…。
そんな疑問をもった研究者たちが集まった。

「インターフェース設計において『不便益(ふべんえき)』視点を入れ、設計をしています。」

ん…?何か難しいこと言ってるけど…。
彼らが打ち出したのは…「不便益」!
不便にすることでメリットが生まれるという考え方だ。

京都大学 川上浩司教授
「何でも『便利にすればいい』じゃダメだ。」

皆さん、今日は、不便のよさを考え直してみませんか?

「便利すぎて逆に不便になること」もある

和久田
「便利になる一方で、不便だなと感じることも多いですよね。」

三條
「便利な製品が出てきて、使い方に慣れたと思ったら、また新しい製品が出てきて、面倒だなあと思うことありますね。」

和久田
「今回、NHKのインターネット会員の皆さんに、『便利すぎて逆に不便になること』を聞いてみました。
こちらが、その代表的なものです。

『スマホを忘れると、番号を思い出せず電話できない』『家電の機能が多すぎて使いこなせない』『子どもが通信販売で何でも買うため、宅配便がよく来てかえって面倒』といった、声も寄せられました。」

三條
「こうした中で登場してきたのが、あえて不便にすることでメリットを生み出すという『不便益』なんです。
今、この『不便益』が、さまざまな現場で実践されはじめています。」

スマホ不所持で奨励金 業績アップ

今や街を歩けば、スマホ、スマホ、スマホ。
しかーし!この会社では…。

「私はガラケーです。」

「私もガラケーです。」

「自分もガラケーです。」

なんと、社員の半分近くがガラケー!
スマホを持っていないと、月5,000円の奨励金がもらえるんだとか。
この会社は、従業員107人の機械部品メーカー。
ちょっと変わった制度を始めたのは、社長の岩田修造さんだ。
きっかけは、社員どうしの会話が少なくなったことなんだって。
以前、ほとんどの社員は仕事が空いた時間にスマホばかり見ていた。
顔を合わせた会話が少なくなって、社員どうしの関係が希薄になっていったみたい。
そこに危機感を覚えたんだって。

岩田製作所 岩田修造社長
「デジタルの時代だからこそ、アナログ的な能力をどう維持するか。
それを真剣に考えなければいけない。
これを何とかしたい。」

昼休み。
この制度のおかげで、今ではスマホを見ずに、みんなでおしゃべり。

「忙しいですか、技術。」

「出荷の日だったので、今週はそれずっとやってた。」

「でも明日で落ち着くんでしょ。」

おかげで社員どうしのコミュニケーションも活発になった。

「会社の情報交換がたくさんできるようになりました。」

「信頼関係が日常会話でできていくのかなと思って。
仕事においても大事な話の時も、伝えやすい。」

製品のアイデアなどが次々と生まれるようになり、会社の業績もアップした。

岩田製作所 岩田修造社長
「アナログ的な能力が大事。
社員がそういう能力を失わなかったら、これは絶対競争力になる。」

時間かけて手紙つづる 顧客を獲得

こちらは、ジュエリーを販売するお店。
手間がかかる不便な方法で、お客さんの心をつかんでいるんだって。
店員さんが接客の合間に取り出したのは、「便せん」。
自分で選んで買ってきた。
来店してくれたお客さんには手紙を書いている。

お客さんのことを思い浮かべながら、お店に来てくれた感謝の気持ちなどを、ひと文字ひと文字、丁寧につづっていく。
15分かけて、ようやく完成。
心を込めた言葉に、イラストや絵文字も添えて、華やかに。

お客さんからも大好評。

“お手紙ありがとうございました、とてもうれしかったです。”

“またお店に遊びに行かせていただきます。”

時間をかけて手紙を書くことが、お客さんの獲得につながっている。

フェスタリア ビジュソフィア銀座本店 石川茜さん
「一生懸命書いていればそれが伝わると思う。
『あなたが勧めるならそれにするわ』と言っていただくといった効果はある。」

バリア「アリー」で体の機能回復

介護の現場でも「不便益」の考え方が取り入れられている。
介護施設は、バリアフリーが普通だけど…。

夢のみずうみ村 藤原茂代表
「うちの施設は『バリアアリー』です。」

えっ?「バリアアリー」?
この廊下、なーんか足りない気がするけど…。

あ、介護施設なのに「手すり」がなーい!
この施設では、お年寄りたちが手すりに頼らず歩いている。
さらに、2階に行くには急な階段。
あえて不便にすることで、日々の生活の中でリハビリになるようにしている。

でも、症状が重い人はスタッフがサポートしてくれるので、ご心配なく。
こちらの男性。
脳梗塞になり、その後遺症で車いす生活だったけど、今では自分の足で歩けるまで回復した。

「脳梗塞の前の状態に近づいたので、うれしいですよ。」

とっても不便な「バリアアリー」。
でも、体の機能が回復するお年寄りもでてきて、全国的に注目を集めているんだとか。

夢のみずうみ村 藤原茂代表
「不便だったら不便なように克服していく方法を自分なりに体験し、気がついたら知らず知らずのうちに克服できている。」

不便は手間だが役に立つ。
皆さん、便利な世の中で、何か大事なこと忘れていませんか?

和久田
「『不便』というと、手間や時間がかかって悪いイメージがありますが、いいこともあるんですね。
手間や時間をかける分だけ、相手に気持ちが伝わりますし、今の時代、『手間や時間をかける』価値が上がっているのかもしれませんね。」

三條
「人と人とのコミュニケーションなど大切なものが失われてしまうことがないように、本当に便利になっていくだけでいいのか、立ち止まって考えてみてもいいのではないでしょうか。」

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