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2017年12月10日(日)

“飛ぶヨット”でメダルを目指せ!

海面から浮き上がって疾走するヨット。
2020年、東京オリンピックで初めて行われる種目。
男女2人乗りのセーリング競技、「フォイリングナクラ級」です。
水の抵抗を受けにくいため、最高スピードは時速50キロ。
従来のヨットの2倍近い速さに達します。
海の上を飛ぶヨットで東京オリンピックのメダルを目指す、日本人ペアの挑戦を追いました。

川田貴章選手
「2020年に金メダルをとりたい。」

小郷
「スタジオには、『フォイリングナクラ級』で使われるヨットのCGを用意しました。
今回、取材を担当した河村カメラマンです。
この『フォイリングナクラ級』、どういう種目なんでしょうか?」

河村信カメラマン(映像取材部)
「もともとは、前回のリオオリンピックで採用された『ナクラ級』という種目だったんですが、東京オリンピックから、あるものが付くんです。



それが、『フォイル』と呼ばれる水中翼です。」

小郷
「この下に向かって伸びている白い部分ですね。」

河村カメラマン
「この水中翼、水流を受けると、飛行機の翼のように揚力が生まれ、その力で船体が海面から浮き上がります。
すると、水の抵抗が減りますからスピードが速くなるんです。」

二宮
「先ほどのVTRで、日本の選手が『金メダルをとりたい』と言っていましたが、実際、期待できる種目なんですか?」

河村カメラマン
「翼付きのヨットは、ヨットレースの最高峰・アメリカズカップなどでも導入されていますが、まだ導入まもないこともあって、船の操り方は模索中の部分が多いんです。
まさに、各国横一線のスタートで、日本にとってもメダルのチャンスと言えます。
東京オリンピックの日本代表が決まるのは、2019年。
代表の座、そして、その先のメダルを目指して動き始めた選手に密着しました。」

東京五輪で初めて採用 “飛ぶヨット”でメダル目指せ

10月。
「フォイリングナクラ級」のヨットが、初めて日本に到着しました。
各国が使うヨットは、オランダのメーカーが製造する同じもの。
7月に出荷が始まったばかりです。
早速、組み立てが完了したヨットで海に出ます。

このヨットで東京オリンピックを目指す、川田貴章、梶本和歌子ペアです。

風を受けるセールを操るのが、川田選手。
9歳からセーリングを始め、江ノ島沖を練習場に育ちました。
ここは、東京オリンピックのセーリング会場になります。
東大医学部在学中、オリンピックを目指していた川田さん。
医師になるため引退しましたが、地元での開催を知り、病院を辞め、現役に復帰しました。

川田貴章選手
「(東京五輪は)今後、二度と来ないチャンス。
自分は本当に何がしたいのか見つめ直したら、心の中にヨットがあった。」

舵を操るのは、梶本選手。
ロンドンオリンピックに日本代表として出場し、世界ランキング1位になったこともある、トップレベルの選手です。
ヨット歴は20年以上の2人。
しかし…。

梶本和歌子選手
「やりにくい。」

川田貴章選手
「やりにくいな。」

スピードのカギは、海面から浮き上がる、言わば「飛ぶ」状態をいかに保てるか。

2人の船は、いったんは飛ぶものの、すぐに着水してしまうのです。
結局この日、飛べたのはわずかな時間でした。

川田貴章選手
「まだまだ。
飛べる風速まで上がった時に、すぐにパッと飛ばせる技術をつくらなくてはいけない。」

どうすれば飛び続けることができるのか。
2人は、強力な助っ人を招きました。

北京オリンピックのセーリング・トルネード級金メダリスト、スペインのブランココーチです。
水中翼にもいち早く取り組み、1人乗りの競技で、今も現役を続けるスペシャリストです。
ブランココーチがまず指摘したのが、川田選手の体重移動の問題でした。

ブランココーチ
「飛ぶためには、川田選手の体重が重要になる。
必要なのは、もっとバランスを感じることだ。」

水面から浮いたヨットは、少しの風や波でも船体が傾きます。
飛び続けるためには、乗り手が素早く移動し、バランスをとらなければなりません。

画面右側の川田選手。
ヨットが傾いたとき、一瞬、体重移動が遅れ、着水してしまいました。

ヨットが傾き、水中翼が水から出すぎてしまうと…。





浮く力がなくなり、水面にたたきつけられてしまうのです。

ブランココーチ
「ヨットが上昇し始めたら注意だ。
船首が水から離れるのを感じたら、常にベストな位置に移動するんだ。」

体重移動の感覚をつかむための特訓が続きました。

川田貴章選手
「不安定な中、移動しないと(さらに)不安定になる。
難しい。」

梶本和歌子選手
「いっぱい課題があって、ちょっと頭の中がこんがらがっている。」

特訓が始まって2週間。

江の島の海には、水面を飛ぶように走るヨットの姿がありました。
体重移動のコツをつかみ始めた2人。
小刻みに前後に動き、船のバランスを保てるようになっていました。
一方で、向かい風や高い波を受けたときは、まだ不安定になってしまいます。
こうした課題を改善すれば、メダルの可能性も見えてくると、ブランココーチは言います。

ブランココーチ
「2人とも、とてもよくなっている。
上達は目覚ましいものがある。
メダルも夢じゃない。
現実になる可能性もある。」


海の上を飛ぶ新たなヨットを、自分たちのものにしていく2人。
東京オリンピックまで900日あまりです。

川田貴章選手
「簡単に乗りこなせないが、だからこそおもしろい。
課題がどんどん見えてきて、もっと伸びることができるんじゃないか。
1分たりとも無駄に使わず、セーリングで勝つため、全部使っていきたい。」


小郷
「スピード感があって、見ているのがすごくおもしろいですけれども、実際、操るのは、結構難しそうですね。」

河村カメラマン
「VTRでは、まっすぐ進むだけでしたが、方向転換するときは、乗り手はヨットの反対側に移らなければならず、これを飛びながらするには、さらなるテクニックが必要です。」

二宮
「確かに今は飛べていませんね。
難しいんですね。」

河村カメラマン
「また、従来のヨットよりスピードが速いため、より先の風や波がどうなっているか読む力も必要になります。」

二宮
「メダルを目指すと言っても、オリンピックまでにやることはまだまだ沢山あると。」

河村カメラマン
「逆に、このヨットを完璧に乗りこなしている国は恐らくまだないので、だからこそチャンスがあるとも言えるんです。
川田選手の母校、東京大学の船舶工学やスポーツ科学の専門家たちも、効果的なヨットの操り方を解析することにしていて、こうしたサポートを受けながら東京オリンピックを目指します。」

小郷
「期待したいですね。」

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