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2017年12月6日(水)

人を貸し出す図書館 “ヒューマンライブラリー”とは?

和久田
「今日(6日)は、ちょっと変わった図書館についてです。」

私たちの好奇心や知識への欲求に応えてくれる図書館の本。
今、人間そのものが「本」となって自身の人生や経験を語る、「ヒューマンライブラリー」というイベントが注目を集めています。

「障害者プロレスの鶴園誠です。」






「ホームレスで、路上で雑誌販売を行っている上野誠です。」






「ステージ4のがんを患っている、西口洋平と申します。」






ここでは、障害者やLGBT=性的マイノリティーなど、ふだんなかなか話が聞けない人たちと自由に対話ができるのです。

読者
「彼氏と彼女ってあるんですか?
それともどっちも彼女って意識なんですか?」

レズビアンの人
「そうです、そうです。」

読者
「どっちが男役みたいなのはないんですか?」

レズビアンの人
「全然ないですね。」

一体、どんな魅力に満ちた図書館なのでしょうか?

高瀬
「15年ほど前にデンマークで始まった『ヒューマンライブラリー』。
日本語で『人を貸し出す図書館』と言われています。」

和久田
「社会的マイノリティへの差別や偏見を乗り越える手法として注目され、今ではヨーロッパやアフリカ、アジアなど世界70か国以上に広がっています。
日本でもここ数年、大学や公共図書館などが主催して開催されるようになりました。」

高瀬
「一体どんな物語に出会えるのでしょうか。
先月(11月)下旬行われた、国内でも最大級の『ヒューマンライブラリー』を取材しました。」

人間が“生きた本”に

リポート:川上雄三(おはよう日本)

会場にやってきた人がまず目にするのは、本のリストです。
そこには、語り手の顔とともに「タイトル」や「あらすじ」がつけられ、興味のある「本」を探せるようになっています。

“心に性別なんてありません!”

“うつで悪いか”

この日、会場を訪れたのは300人以上。
決められた30分の貸し出し時間は、あっという間に予約でいっぱいになりました。
「読者」は「本」となる人に対し、相手を傷つけないというルールの下、原則1対1で自由に質問できます。

読者
「いじめとかって、あるんですか?」

レズビアンの人
「いじめまですごい深刻なのはなかったけど、ちょっとうわさになって、『レズってうわさになってるよ』みたいな感じで友だちから言われた。」

高次脳機能障害の人
「『もう目が見えることは一生ありません』と言われたんですね。
退院して帰ってくると、(視野が狭まり)人によくぶつかる。
見えてる範囲のバランスからすると、体感と一致しない。」

読者
「日常のトイレとか、そういう話から聞きたい。」

性同一性障害の人
「トイレは、いますごく苦労してます。
この格好で女子トイレに入ったとしても、理解してくれる人はそんなに多くない。
我慢するか、障害者用トイレとか、多目的トイレがあればそっちを使う。」

読者
「楽しかった。
知らない知識が増えたというのもそうだけれど、自分の世界が広がった。」

読者
「理解が及ばなそうなジャンルでも、話を聞くことで自分も意見が生まれるし、よかった。」

「障害のある子を持つ父親」の本

この日、障害のある子を持つ父親の本を借りた人がいます。
片桐しなのさんです。
ふだん、病院にある店舗でパートをしています。
仕事中によく見かける、障害児を持つ家族の気持ちに触れてみたかったのです。

片桐しなのさん
「どういう形でお子さんといつも生活されているのか、聞きたいなと思いました。」

本になった、玉村公樹さんです。
1歳の息子に重度の脳性まひがあります。

片桐しなのさん
「私自身も、大変だなっていうイメージが強い。
本とか読んで、すごいなって感動はするけれど、いざそうなったら大変だろうなって。」

玉村公樹さん
「でも、やっぱり僕も同じでしたよ。
今でこそ隠すことなく話すことができるけれど、やっぱり出産直後はいろいろな葛藤があった。」

仮死状態で生まれてきた修司くん。
一命は取り留めましたが、脳に障害が残りました。
たんがつまると呼吸ができなくなるため、24時間の医療的なケアが欠かせません。
それでも玉村さんは、苦労もある反面、修司くんが日々成長していくことに喜びを感じています。

玉村公樹さん
「周りの人の印象と、僕が修司と生活している上で感じている感覚と、すごく違いがあるんじゃないかなというふうに感じた。
同じような気持ち、接点みたいなのがあるんだと気付いてもらいたい。」

片桐さんは、ずっと気になっていた「障害のある子どもとの意思疎通」について聞きました。

片桐しなのさん
「まだお子さん小さいと思うんですけれども、コミュニケーションとれますか?」

玉村公樹さん
「こういう子って、感情とか、どこまで感じてるか起きてるかわからないなんてよく言われるんですけど、よくわかってて、実は。
例えば呼吸が苦しくなると、要は緊張すると分泌物が多くなる。
それが、親がだっこしてあげると落ち着いてくる。
その辺の感覚って普通の赤ちゃんと一緒。
泣いたらあやしてあげると、落ち着いて眠ったりするじゃないですか。
その辺はこの子も一緒です。」

玉村公樹さん
「修司のちょうど1歳の誕生日で。」

片桐しなのさん
「これチョコレートですか。」

玉村公樹さん
「そう、チョコレートです。
なめさせると、すごい勢いで『んんん』ってやったり、やっぱりおいしいってあるんじゃないかな。」

片桐しなのさん
「普通と変わらないってことですよね、普通のお子さんとね。」

玉村さん家族の何気ない日常について、片桐さんは30分間、じっくり耳を傾けました。
最後に玉村さんは、自分たちのような家族を見かけた時、気軽に声をかけてほしいと伝えました。

玉村公樹さん
「(障害のある子に)病院とかで今後会う機会があると思う。
意外に普通に声をかけて『赤ちゃんかわいいですね』とかって、めちゃくちゃご家族喜ぶと思いますよ。
機会があれば声をかけて。」

片桐しなのさん
「障害のあるお子さんの親御さんも、本当に普通の家族と変わらない。
納得というか、すごく自分の中で変わりました。」

玉村公樹さん
「(本になることは)社会と自分との接点を探る行為だったんじゃないかなと思う。
息子の人生、家族の物語みたいなものに熱心に耳を傾けてくれる、ただそれだけで僕らの人生が肯定されていく感じがしていました。」


和久田
「このヒューマンライブラリー、今、全国的な学会もできていて、そのホームページで開催情報についても知らせていくということです。」

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