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2017年10月6日(金)

“タワマン”建設ラッシュ 小学校はどうなる?

今、都心を中心にタワーマンションの建設が相次いでいます。
その結果、子育て世代の人口が急増。




こちらの小学校では、子どもの増加に伴い、教室が不足したり、校庭が手狭になったりするなどの事態が起きました。




「狭くて危険。」

「もっと広くなって、みんなが遊べるようになってほしい。」




このため、運動会にも影響が。

その会場は、プロ野球などが行われるドーム球場です。
校庭の代わりに使われました。

和久田
「このように今、東京や大阪の湾岸エリアなどでは、働く場所に近く、利便性が高いとして、住宅地としての人気が高まり、大規模なマンションの建設が相次いでいます。」

高瀬
「子育て世代を中心に人口が流入し、児童が急増しているのですが、土地が少ないため、新しく学校を建てるのは難しいのが現状です。
想定を超える児童の急増に対し、自治体はどのように教育環境を整備しようとしているのか、取材しました。」

敷地いっぱいに校舎 校庭は屋上に

リポート:飯田暁子(ネットワーク報道部)

東京・中央区にある小学校です。
周辺でマンションの建設が進み、児童数は10年で1.5倍に増えました。



中央小学校 小久保秀雄校長
「大きなマンションもなかったし、こちらのマンションもなかった。
大きなマンションが、まだそんなに多くなかった。
この数年でどんどん建った。」



こうした事態の中、この学校では教室を増やそうとある決断をしました。
思い切った学校の改築です。

工事前の学校の写真です。
敷地のおよそ半分が校舎。
中央に校庭、それに体育館やプールが配置されていました。
これを、5年前に改築。

敷地いっぱいを校舎にし、地上の校庭をなくしました。





その代わり、校庭を移したのは、屋上です。
全国でも珍しい開閉式の屋根も付けました。




「広くて使いやすい。」

「楽しい校庭だと思う。」



この結果、受け入れ可能な児童の数は2倍以上に増えました。

2020年 選手村の跡地にもマンション

しかし、こうした増改築を行っても、児童の増加には追いつかない事態が起きようとしています。

2020年の東京オリンピック・パラリンピック。
中央区に作られる選手村の跡地は、24棟ものマンション建設されることが決まっています。
およそ1万2,000人の増加が見込まれ、子どもの数もさらに増えることとなります。

「特認校」で児童数の少ない学校に分散

そこで、中央区が考えたのは、既存の施設をうまく活用することが出来ないかというものでした。

マンション建設が進む湾岸エリアは、他の地域より児童数が多く、全体の半数近くを占めています。
教室の確保が難しい学校が多い一方、そのほかの地域では余裕がありました。
このため、特に児童数が少ない4つの学校に分散させる取り組みを始めました。

特別な授業が受けられる「特認校」に指定。
湾岸エリアからも通うことができるようにしました。
科学の分野に力を入れる特認校では、早稲田大学と連携。
小学1年生から、大学生などと一緒に理科の実験に参加できます。
金融に力を入れる学校もあります。
東京証券取引所と連携して株の仕組みを学ぶなど、経済の最先端の現場を肌で感じることができます。
魅力ある授業内容を取り入れることで、児童が集中する湾岸エリアから通う児童を増やし、偏りを解消しようという狙いです。

湾岸地区のマンションのすぐそばには、毎朝、区が用意したスクールバスが児童を迎えに来ます。
20分かけてバスで向かうのは、英語教育に力を入れる学校です。

朝の5分間、英会話などのフレーズを反復します。
通常、他の公立学校では5年生からですが、この学校では1年生から外国人講師がつき、英語の授業を行っています。
この特認校制度、今、人気が年々高まっています。


先月(9月)開かれた学校説明会。
湾岸エリアなどから、募集枠の4倍にあたる200組以上の親子が集まりました。

湾岸エリアの保護者
「学区内の学校もいいが、特色のある教育を受けさせたい。」





湾岸エリアの保護者
「(湾岸エリアに比べて)一人一人に目が届き、先生が全児童の名前などを把握しているのは、安心感につながると思う。」

中央区教育委員会 島田勝敏教育長
「若い世代が増えると活気が増える。
それに伴ういろんな行政課題は出てくるし、インフラ整備も含めて出てくるが、行政ニーズをしっかり受けとめながらやっていくことが大事。」

保護者などの負担も

和久田
「取材した飯田記者とお伝えします。
校庭をすべて屋上に移したり、スクールバスを走らせたり、ここまでしないと追いつけないほど増えているんですね。」

飯田暁子記者(ネットワーク報道部)
「そうですね。
東京でも少子化は進んでいて、過去13年間で130校あまりが廃校になっているんですけれど、この中央区などのマンション建設が急速に進んでいる自治体では、およそ20年後まで人口が増え続けると予想されています。
このため、こうした特定のエリアでは、児童の増加への対応策というのが必要になっています。」

高瀬
「自治体としては悩ましい状況とも言えるんでしょうけれど、知恵を絞って児童を分散させる取り組みが効果を上げているんですね。」

飯田記者
「ただ、子どもたちが登下校に使うスクールバスですが、これは行事などで時間割りが変更になった時などは運行されません。
この場合、湾岸エリアから通う子どもたちは、原則1人で電車などを使って登下校しなければなりません。
保護者などは、こうした負担が伴うということも十分理解することが欠かせないと思います。
一方、児童が急増したエリアの課題は、学校の問題だけではありません。
放課後の子どもの居場所にも影響が出ています。」

学童保育に入れない児童も増加

港区に住む、松尾香里さん。
小学3年生の男の子のお母さんです。
放課後、子どもを学童保育に通わせながらIT企業で仕事を続けてきました。
しかし…。

松尾香里さん
「あなたは入所できませんでした。」

松尾さんが住むエリアもマンションが増えて、学童保育を申し込む子どもが急増。
定員を超えた結果、この春から学童に入れなくなってしまいました。
港区では、学童保育に入れない児童は60人。
去年(2016年)の3倍以上に上っています。
松尾さんは、子どもを1人で留守番させるのは不安だと、仕事をやめざるを得ませんでした。

松尾香里さん
「保育園で2年ぐらい待機した経験があって、シビアな世界だと、その時は思った。
今度は学童の待機に直面して、1年間の自分の見通しをどうしていくか、不安や心配はかなりあった。」

子育て世代の意見 政策に反映を

和久田
「仕事を続けられるかどうかに関わってくるとなると、これは切実な問題ですよね。」

飯田記者
「そうですね。
都心部では子どもが遊べる公園も少ないですし、学校によっては放課後、校庭で遊べないところもあります。
マンションができてから移り住んだ人も多いですし、周囲に知り合いが少ないという環境の中で、子どもを1人で過ごさせるのは心配だと考える人も多いと思います。
私も小学校低学年の子どもを学童保育に預けながら働いているんですが、取材した松尾さんは、その後、新しいお仕事が見つかったということなんですが、子どもを心配して長く続けていた仕事を辞める決断をしたというのは、身につまされる思いがしました。

日本総合研究所の池本美香主任研究員は『都心部の自治体が、子育て世代を呼び込もうという政策を行っているわりには、学童保育の問題など、住民の切実な意見を政策に十分反映させていない』と指摘しています。」

高瀬
「取材してみて、どういう対策というのが求められると感じますか?」

飯田記者
「東京や大阪の都心部のエリアでは、タワーマンションなどの大規模開発が相次いで計画され、今後も人口がさらに増えることは間違いありません。
行政の対応が後手後手になりますと、しわ寄せが行くのは子どもたちです。
子どもたちが充実した教育を受けて、放課後も安心して過ごせるような環境を、自治体や学校、それに保護者も一体となって作っていくことが求められると感じました。」

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