これまでの放送

2017年9月9日(土)

かつお節をヨーロッパへ EUの基準を乗り越えろ

小郷
「けさのクローズアップは、和食のだしに欠かせない、かつお節です。」

二宮
「いい香りがしていますけれども、日本の食卓には欠かせませんよね。」 

小郷
「今、海外で広がる和食ブームの中、ヨーロッパでも注目が高まっています。」

日本のかつお節がヨーロッパの高級料理店のシェフにも高い評価を受けています。
帆立のマリネに添えられていたり、かつお節の粉末を揚げ物に使ったりするなど、さまざまな料理に使われるようになっています。

 

「変わった味だけど、私は好き。おいしい。」

「いろいろな感覚を呼び覚ますからおもしろい。」



 

しかし、ヨーロッパで出回っているかつお節の多くは、日本語のラベルで売られていますが、韓国産や中国産がほとんど。
実は、これまで日本産のかつお節がヨーロッパに輸出できなかったからなんです。

二宮
「EU=ヨーロッパ連合への輸出に立ちはだかっている規制の1つが、こちらです。

国際的な衛生管理の基準「HACCP」です。
製造工程で異物の混入や食中毒などを防ぐため、厳しい基準を設けています。」

小郷
「一方で、今年(2017年)7月、日本とEUとの間でEPA=経済連携協定が大枠で合意し、貿易品目の90%で関税を撤廃することが決まるなど、自由貿易への動きが加速しています。
5億人市場と言われるEUに期待が高まっているのです。」

二宮
「かつお節も国内消費が落ち込む中、EUの基準を乗り越えようと挑戦を始めた老舗メーカーが現れました。」

かつお節をヨーロッパへ 衛生基準を乗り越えろ

リポート:三ツ橋雅行(NHK名古屋)

かつおの水揚げ量日本一を誇る静岡県焼津市。
今年3月、フランス人のバイヤーがやってきました。

オリビエ・ドゥレンヌさん。
これまで日本からヨーロッパに600を超える食材の輸出を実現させました。


 

オリビエさんを招いたのは、老舗のかつお節メーカー。
3代目社長の久野徳也(くの・とくや)さんです。
ヨーロッパへの初輸出を目指し、本場のかつお節の良さをアピールします。

オリビエ・ドゥレンヌさん
「かつおのさばき方は伝統的な方法ですか?
見てみたい。」

オリビエさんは、老舗ならではの伝統の技について説明を受けました。

フランス 輸入業者 オリビエ・ドゥレンヌさん
「いい香りだ。」



 

オリビエさんは、本場日本のかつお節はヨーロッパ市場で必ず売れると確信しています。

フランス 輸入業者 オリビエ・ドゥレンヌさん
「デリシャス!
ほのかな酸味だけど、好みです。
すばらしい。
ヨーロッパでかつお節をつくっている会社はいくつかあるが、全くの別物だ。
唯一の・ほかにない・本物の・日本のかつお節に、(ヨーロッパ)市場でなっていくだろう。」

新丸正 久野徳也社長
「EUには日本以外から“かつお節”という形で輸入されている。
そこに満足していない層が確実にいると、何度も現地に足を運んで確認している。
彼らに“日本のかつお節”だとわかってもらえるように、ファンができるように、いいかつお節をつくっていきたい。」 

しかし、ヨーロッパへの輸出は簡単ではありません。
製造過程の衛生管理を徹底する国際的な基準「HACCP(ハサップ)」の認定を得なければならないのです。
そのため、製造ラインを組み替えるなど、工場の改修に追われました。
かつおをさばくまな板は、雑菌が繁殖しやすい木製のものから、洗いやすいプラスチック製に。
かつおを並べるトレーも同様の理由で、ステンレス製のものを特別につくりました。
さらに、いぶすための設備は新たにつくり替えました。

これまで、かつおをいぶす部屋の壁は煙のすすがつきやすいコンクリート製でした。
しかも、いぶしたかつおの表面にも、すすがわずかながらついていました。
日本では問題ないとされるわずかな量でも、EUの基準では許されないのです。

そこで、久野さんは壁を洗い落としやすいステンレス製にしました。
工場の改修や製法の改良にかかった費用は総額で、およそ1億円に上りました。
オリビエさんも工場の設備に安心感を持ちました。

 

「疑問点は?」

フランス 輸入業者 オリビエ・ドゥレンヌさん
「ないよ。
おなかがすいてくるね。」

 

対応を迫られたのは、自社の製造工場だけではありません。
漁をする船の保冷設備から漁港の水揚げ施設まですべての工程で、県や漁協の協力を得てEUの厳しい衛生基準を満たすよう管理を徹底しました。
かかった歳月は4年。
久野さんは今年、かつお節をヨーロッパへ輸出する認定を得ることができました。
久野さんは焼津産というブランドにこだわってヨーロッパ市場で勝負したいとオリビエさんに訴えました。

新丸正 久野徳也社長
「かつお節の産地としての焼津をアピールしたい。
焼津という場所をブランディングしたい。」

フランス 輸入業者 オリビエ・ドゥレンヌさん
「私を信頼してください。
驚かせてみせますよ。」

今、来月(10月)からの本格的な輸出に向けて、着々と準備を進めています。

新丸正 久野徳也社長
「どういう評価をもらえるのか、非常に楽しみにしている。
いろいろと試行錯誤してきたが、第1弾として自信のある(かつお)節が出荷できると思っている。」


 

小郷
「本当に厳しい基準ですけれども、このチャンスを何とか逃さないようにしたいところですよね。
この老舗かつお節メーカーでは、ヨーロッパ市場だけではなく、多様化する国内の外食産業向けに、新しい風味が出るかつお節にも挑戦しています。」

二宮
「新たな市場を目指して海外に打って出る姿勢が、地域に活力をもたらして、伝統の産業に新しい風を吹き込むということなんですね。」

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