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2017年9月1日(金)

直下型地震の新たな脅威 長周期パルス

高瀬
「『防災の日』の今日(1日)、最新の研究で明らかになってきた、地震の新たなリスクに迫ります。」

和久田
「去年(2016年)4月に発生した熊本地震。
ここで、極めて特殊な揺れが、活断層による直下型地震では国内で初めて観測されました。
それが、『長周期パルス』です。
この揺れは、これまで地震に強いとされてきた大都市の超高層ビルやマンションを、一撃で破壊するおそれがあることが明らかになってきました。」

熊本地震で観測された 特殊な揺れ

リポート:金森誠(社会番組部)

熊本地震では、地表に30キロにわたって断層が現れました。
その断層に近い、西原村役場です。
ここに設置された地震計が、特殊な揺れ「長周期パルス」を国内の直下型地震で初めて観測しました。
震度7を記録した西原村の揺れのデータです。

地震発生後、1発の非常に大きな揺れが襲っていたことがわかります。
揺れが一往復するのにかかった時間、「周期」はおよそ3秒。
脈打つようなこの揺れが「長周期パルス」です。
最新の研究から、この「長周期パルス」に恐ろしい破壊力が秘められていることがわかってきました。
京都大学・岩田知孝(いわた・ともたか)教授。
注目しているのは、揺れの周期の長さです。

京都大学 岩田知孝教授
「日本の強震記録の中でとられたものでは、ほとんど初めてだと思う。」

超高層ビルが一撃で大きく揺れる「長周期パルス」

これまで、直下型地震では、短い周期の揺れによる被害が相次いできました。

1995年の阪神・淡路大震災。
被害が集中したのは、木造などの低い住宅です。
阪神・淡路大震災と、熊本地震の揺れを比較します。

画面下、神戸市内で観測された揺れは、周期が1秒から2秒程度。
熊本地震よりも短いものでした。
揺れの周期によって、被害を受ける建物は異なります。

まず、短い周期のガタガタとした小刻みな揺れを加えると、超高層ビルは揺れを吸収。
大きく揺れて被害を受けるのは、低い建物です。
一方、今回観測された「長周期パルス」を加えると…。

超高層ビルは、一撃で大きく揺れます。
過去の直下型地震では、これほど大きな長周期パルスは観測されていませんでした。

京都大学 岩田知孝教授
「改めて強い揺れの多様性、危険性を我々は新たに認識する必要がある。」

熊本地震のデータを使ったシミュレーション

もし、長周期パルスが実際に超高層ビル襲ったら、どうなるのか。
工学院大学の久田嘉章(ひさだ・よしあき)教授です。
新宿にある大学のビルで、西原村のデータを使ってシミュレーションを行いました。

29階建て、高さ133メートルの鉄骨の超高層ビル。
地震発生から10秒後に襲う、「長周期パルス」。
その一撃で、骨組み全体が大きく揺れます。
揺れ幅は、最上階で、最大2メートル70センチになりました。
赤くなっているところは、柱などが変形して損傷した場所を示しています。
損傷は、負荷がかかりやすい下の階層を中心に広がります。
揺れが収まっても、ビルは傾いて変形したままになってしまうことがわかりました。

工学院大学 久田嘉章教授
「相当深刻な被害を受けた可能性はあると思います。
地面がこう揺れることによって、大きな変形が出てしまう。
本当に条件が悪いと、倒壊する可能性はゼロではなかった。
非常に注意が必要だと改めて確認された。」

「長周期パルス」の発生しやすい場所

「長周期パルス」が発生しやすい場所もわかってきました。
地震計のデータから明らかになった、西原村の地面の動きです。

地震発生の10秒後、地面は一気に2メートル動いていました。
そこから数百メートルの地表に断層が現れたことが、長周期パルスの発生につながったと見られます。

その発生メカニズムを模型で再現します。
地震で地表に断層が現れると、建物が激しく揺れます。
地面が大きく動いたことで、長周期パルスが発生したと考えられるのです。

一方、断層が地表に現れない場合。
建物はあまり揺れません。
地面の動きが少なく、長周期パルスが発生しにくいからと考えられるのです。

専門家の間では、マグニチュード7クラスの活断層地震が起きると、地表に断層が現れるとされています。
日本でマグニチュード7クラスの大地震が発生すると国が想定している活断層は113。
中には、人口が集中する、福岡市の真下を横切る警固(けご)断層帯。
関西から中部にかけては、大阪の中心部を貫く上町断層帯など、数多くの活断層。
そして、東京西部の立川断層帯。
仙台市内を縦断する長町・利府線断層帯。
各地に存在する活断層で、地表に断層が現れた場合、その周辺数キロの範囲で、長周期パルスが発生する可能性があるのです。

高層化が進む現代の日本。
専門家は、大都市の新たな地震のリスクを常に想定して備えることが重要だといいます。

筑波大学 境有紀教授
「もし(高層ビルのなかった)100年前なら、長期間の揺れがきても何事もなかった。
ある意味最悪の巡り合わせというか。
そういうものが起こったときに何が起こるか。
それが想定を超えるのであれば、想定外ではなく想定内にして対策をしておくべき。」

 

「長周期パルス」対策は

和久田
「この『長周期パルス』に、どう対策すればいいのでしょうか。

専門家は、まずは自分でできることとして、『家具の固定を行うこと』、国や研究機関のホームページで『自分たちが住む場所の活断層の場所や地盤などを調べる』などして、そのリスクを把握することをあげています。」

高瀬
「その上で、これまで超高層ビルなどで行われてきた、揺れを抑制する『ダンパー』と呼ばれる装置や、振り子のようなおもりを付ける取り組みにも、ある程度の効果があると考えられています。」