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2017年3月29日(水)

“不採算路線” 鉄道をどう維持する?

和久田
「JRが発足してから30年。
日本の鉄道が大きな転機を迎えています。」

昭和62年4月1日、国鉄が分割民営化。
JR各社が発足しました。

独自の経営戦略で、さまざまな列車が誕生。

JR九州は、豪華な観光列車で話題を呼びました。




 

JR東海は、東京・大阪を1時間で結ぶ、リニア中央新幹線を開発。
しかし、各地のローカル線では、存続を危ぶまれる路線が数多く、今、大きな議論を読んでいます。


 

JR担当者
「バスなどへの転換を相談したい。」



 

住民
「(鉄道を)簡単には、なくしてほしくない。」



 

岐路に立つ日本の鉄道、その行方は。

和久田
「こちらが、1日の平均利用者が2,000人未満、採算を取ることが極めて難しいとされる路線です。
実に、全国の3分の1にのぼっています。」

阿部
「中でも特に深刻なのが、北海道です。
去年(2016年)11月、JR北海道は全路線のおよそ半分をJRだけで維持するのは難しいと発表しました。」

和久田
「JR北海道は、こちらの青で示した路線で鉄道を廃止し、バスに転換する方針。


 

また、赤で示した路線では、鉄道を維持するための費用を自治体に求めたいとしています。
しかし、自治体の理解を得ることが出来ず、事態は深刻さを増しています。」

“鉄道を残したい” 地元自治体は

リポート:田隈佑紀(NHK札幌)

今月(3月)、北海道のオホーツク地方で開かれた自治体の会合です。
地元を通る2つの路線が見直し対象になっています。

北見市 辻直孝市長
「住民の暮らしや地域の産業・経済を守る意味でも大変大きな問題。」



 

地元の自治体は、鉄道の存続を強く求めています。
しかし、JRから多額の費用負担を求められることを警戒し、見直しのための協議に応じていません。

北見市 辻直孝市長
「いまのところ協議にはなっていない。
(協議入りは)慎重というか、そこは想定していない。」

大規模な“路線見直し” どうする鉄道会社

なぜJR北海道は、ここまでの路線見直しに追い込まれたのか。
鉄道事業の赤字は30年前、JR北海道が発足する時から見込まれていました。
このため国は、およそ6,800億円の基金を設け、それを運用することで赤字を埋め合わせる仕組みを作ったのです。

しかし当初、年7%という高い利回りでしたが、バブル崩壊後の長引く低金利で、運用益は大幅に減少しました。
さらに、予想を上回る人口減少にも見舞われ、このままでは、3年後に会社の資金が底をつく事態にいたったのです。
路線の見直しを加速させなければ、会社が持たない。
JR北海道で、鉄道の運行を司る部署の会議にカメラが初めて入りました。
話し合われていたのは、徹底したコスト削減です。

「圧縮して(自治体に)お示ししないと、ゼロベースだと話も聞いてもらえない。」



 

自治体に協議に応じてもらうためには、求める費用負担を少しでも減らす必要があると考えているのです。

「普通列車1本切ると、(削減額は)500万円くらい。
6本、減らして、3,000万円くらい。」

この日の議論は、北海道北部を走る宗谷線。
旭川と稚内を結び、北海道の背骨とも呼ばれています。
見直し区間は180キロ。
7つの自治体に及んでいます。
維持するためには、赤字の穴埋めや老朽化した施設の更新などに、毎年29億円が必要だといいます。
検討の対象は、あらゆる分野に及びます。
まず、あがったのは、およそ100か所ある踏切の維持費です。

「1か所でも百数十万円かかると思う、トータルすると。
そこをどう落とすか。」



 

踏切をなくすと、人や車が線路を横断できなくなります。
地域の人に不便をかけますが、コスト削減のためには、やむを得ないという案です。
しかし、全体で必要な29億円には遠く及びません。

「この線区では何をやる?
経費節減で、大きなところで。」

巨額のコストを減らすために、さらに踏み込んだ案も出ました。

定時運行に欠かせない除雪の費用です。
この路線だけで、ひと冬に2億円かかっています。

「(列車を)定時に走らせようと、かなりの頻度で、機械除雪やっている。
経費を縮減する方法として、初列車はなんとか確保しましょう。
それ以降はご迷惑をかけるかもしれません。」
 

「列車が遅れるかもしれないってことですか。」

「そう。」

鉄道会社として固く守ってきた定時運行の理念をどこまで犠牲に出来るのか。
ぎりぎりの検討が続きます。
 

JR北海道 鉄道事業本部 細田弘樹企画室長
「ここは我慢してもらいたいということは出てくる。
そこはどこまでやっていいのか。
(路線を)残さないといけないとなると、ここまでやらなきゃだめだよね、とか。
どうすれば残っていくのかということを、(地元と)相談していきたい。」

専門家は、こうした厳しい状況は今後、全国各地で起こると指摘しています。
背景にあるのは、急速に進む人口減少です。

流通経済大学 経済学部(交通政策) 板谷和也教授
「本州のJR東日本、東海、西日本の路線にも、赤字の路線はたくさんある。
都市部の山手線のような黒字路線の利益で維持しているが、人口減少が進むと、だんだん利用も減ってくる。
黒字額が減ってきたら、赤字路線を維持する余裕は無くなる。
地域の人に必要な移動手段はどのようなものか考えてほしい。」

苦境のJR北海道 今後どうなる?

阿部
「取材にあたった、札幌放送局の田隈記者です。
JR北海道の状況は深刻ですが、今後どうなるのでしょうか?」

田隈佑紀記者(NHK札幌)
「JR北海道は、このままでは3年後には資金が底をつくというほど差し迫った状態です。
赤字路線を廃止する場合に、沿線自治体の同意が必ず必要というわけではありませんが、JRとしては、地元の負担を得て、残したい路線があるとしています。
しかし、自治体側も財政に余裕はないため、事態がこう着してしまっています。
地域の鉄道網のあり方を検討してきた北海道庁は、『今のまま、全ての路線を残すのは難しい』という立場で、どの路線をどう残していくのか、今後、厳しい選択を迫られることになる見込みです。」

和久田
「これから全国的に赤字路線を維持する余裕がなくなっていくという専門家の話がありましたが、どういった対応が必要になるのでしょうか?」

田隈記者
「先ほどご覧頂いたように、全国で採算を取るのが難しい路線が数多くあります。
将来的に地域の人口減少が加速しますと、鉄道の維持がますます厳しい状態になると言えます。
一昨日(27日)四国でも、JRが有識者による懇談会をもうけて、利用客の減少が続く在来線をどうしていくのか、幅広く検討していく方針を明らかにしました。
仮に鉄道が残せない場合、バスなど、鉄道以外の交通を考える必要が出てきています。
また、鉄道を残す場合には、鉄道会社だけでなく、地元自治体などの費用負担が必要になってきます。

たとえば、鳥取県の山あいを走る若桜鉄道の場合です。
観光による経済効果が大きいとして、沿線2つの自治体が費用を負担して鉄道を残しています。
鉄道を残した結果、あるイベントでは年間1万人以上が訪れて、地域への経済効果が数千万円にのぼったこともありました。
しかし地元の自治体は、線路や駅舎などの維持費として年間およそ1億円を負担しています。
鉄道を維持しても利用客を大きく伸ばすのは難しく、設備は老朽化するため、今後、負担は増えることが見込まれています。
鉄道を残す場合、残さない場合でも相応の覚悟が必要で、地域にとってどのような交通がふさわしいか、考える時期にきています。」

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