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2017年2月10日(金)

高校生のアルバイト 働く目的は…

阿部
「高校生のアルバイトというと、好きな洋服を買ったり、友だちと出かけたりするためのお小遣いを稼ぐというイメージがあると思います。」

和久田
「しかし今、貧困や格差の問題が指摘される中で、もっと切実な目的でアルバイトをする高校生もいます。」

アルバイト代5万円を家計に…

リポート:小林竜夫(社会番組部)

首都圏に暮らす、優子さん(仮名)。
高校3年生です。
昼ご飯は学校の購買部で買った、パンの耳。


 

優子さん
「たぶん70円ですね、一袋。
前まではお弁当だったんですけど、お弁当を作る材料でお金がかかるから。」


 

学校が終わると、すぐさまアルバイトへ。
週4日、平日は5時間近く、休日は10時間働いています。
優子さんの両親は2年前に離婚。
母親は小学生の妹と弟を養うため、スーパーのアルバイトや飲食店の仕事を掛け持ちし、早朝から深夜まで働きづめです。


少しでも母親の負担を減らしたい。
優子さんは毎朝、仕事に出かけた母親の代わりに家事をしています。

優子さん
「お母さんに任せちゃうと申し訳ない。
朝から夜まで働いてくれているのに、自分は何かできないかなってずっと思っていた。」
 

小学生の妹や弟を起こし、朝ご飯を食べさせ、学校に送り出します。
優子さんの家では、母親の収入と児童扶養手当などを合わせると、月20万円前後になります。
しかし、家賃や光熱費を引くと、ぎりぎりの生活です。
そのため、優子さんのアルバイト代が欠かせません。

 

優子さん
「(買ったのは)私です。
米も高いので、いろんなお店を回っていました。」


 

弟の靴も、優子さんが買いました。

優子さん
「これとか、ぼろぼろです。
弟の靴です、これぐらい使っちゃって。
この前、新しいのを買いました。
すごく喜んでいたのでよかったです。」
 

優子さんのアルバイト代は月8万円。
そのうち2万円は、高校卒業後の進学費用に積み立てています。
アルバイト代の大半、5万円は家計に。
妹と弟のためだといいます。

優子さん
「あまり2人には母子家庭だからって苦労させない。
みんなと同じような生活をさせたいし、2人にはつらい思いをさせたくないので、家庭のためにはと思ってやっています。」

アルバイトで帰りが遅い優子さんに変わって、家で夕食を作るのは小学6年生の妹です。
家族のために働く優子さんを、ずっと間近で見てきました。


「少しでも私たち家族の生活の支えになるようにと言っていたのを聞いて、『すごい、いいお姉ちゃんだな』って。
お姉ちゃんらしいことしているな、見習わなきゃなって。
日々感謝しながら生きています。」

優子さんがアルバイトを終えて帰宅するのは、夜10時過ぎ。
食事をすませ、勉強にとりかかります。




優子さんは英語が得意で、スピーチの全国大会でも毎回入賞してきました。
高校の先生からも大学への進学を勧められましたが、妹や弟の将来を考え、早く就職して家にお金を入れることができるよう、専門学校への道を選択しました。

優子さん
「本当は大学に行きたかったんですけど、4年生大学。
やっぱり早く就職して、頑張って、母が今まで頑張ってきた分を自分が返せたらいいなと思っています。」

アルバイトで保つ“普通のくらし”

阿部
「家の中の様子など、一見普通の暮らしに見えますが、それが優子さんのアルバイトでかろうじて保たれているんですね。」

和久田
「もしも優子さんやお母さんが病気になったり何かあれば、すぐに壊れてしまうもろさもありますよね。」

阿部
「かつてから『勤労学生』という言葉はありましたが、今こうした高校生たちがどのくらいいるのか、その全体像は把握できていませんでした。」

阿部
「そうした中、先月(1月)千葉県内の16の高校で行われたアンケートでは、回答した生徒のうち、アルバイトをしていたのはおよそ3割。
そのアルバイトの目的をたずねたところ、『生活費のため』と答えた生徒が半数に上りました。」

和久田
「また、ひとり親家庭に関して、厚生労働省が去年(2016年)行った調査では、アルバイトをしている高校生の3割以上が『一部もしくは全額を家のお金』、つまり家計に組み入れていることがわかりました。」

阿部
「もちろん経済的に、より厳しい家庭への対策も必要ですが、専門家は、こうした高校生の家庭の状況が悪化しないように支援が必要だと指摘します。」

首都大学東京 都市教養学部 阿部彩教授
「子ども自身が自分のポテンシャル(可能性)をフルに発揮できないような状況にあるというのは、その子どもだけではなくて、社会全体、経済全体への大きな損失。
これは貧困の再生産につながるので、支援はもっと拡充していかなければいけない。」

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