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2016年10月4日(火)

全国820万戸 空き家対策の課題は

深刻化する待機児童問題。
その解消に向けて、東京都の小池知事が打ち出したのは…。

東京都 小池知事
「空き家などの活用をですね、一層図っていく。」

空き家を保育所にしようという計画です。
 

全国で急増する空き家。
今、その活用に向けた動きが本格化しています。
しかし、立ちはだかる大きな壁が…。


 

船橋市 担当者
「所有者を探しきれていない状態です。」



 

「対処手段は?」

船橋市 担当者
「今のところ見つかっていないです。」

空き家対策、その課題は?

阿部
「現在、全国におよそ820万戸ある空き家。
このまま増え続けると、17年後には2,000万戸を超え、全国の3軒に1軒が空き家になるという試算もあります。」

和久田
「国は去年(2015年)5月、空き家対策を進めるための特別措置法を全面的に施行し、本格的に対策に乗り出しました。
新しい法律によって、自治体は、倒壊の恐れがある危険な空き家を強制的に撤去したり、所有者を探す際に固定資産税の情報を利用したりできるようになりました。」

阿部
「法律の施行から1年あまり。
空き家対策は進んでいるのでしょうか。」

増える空き家 高齢者の住まいに

リポート:佐々木学継(NHK大分)

同じ屋根の下で暮らす、70代の2人。
住まいは、6畳の部屋が3つある3DK。
部屋探しに苦労していたところ、市の紹介で、一昨年(2014年)11月に入居しました。

 

安高一義さん(79)
「狭いどころか、ゆったりしているよ。」



 

実は、この家「元空き家」。
国のモデル事業として、社会福祉法人が補助金を受けて、高齢者向けに貸し出しています。
家賃は1人あたり、月に1万5,000円。
食事代と光熱費を合わせても5万7,000円で、お年寄りが年金で賄える金額です。

安高一義さん(79)
「(以前の家賃より)はるかに安いよ。
家賃を払って、電気水道ガスを払って、食事代を出しても、そんな金額ではすまない。」

歩いて10分のところには、いざという時に頼れる養護老人ホーム。




 

毎日ここで、健康状態をチェックしています。
高齢者に住まいを提供し、さらに、生活全般を支えています。
高齢化が進む地域で、空き家を活用する新たな試みとして注目されています。

 

社会福祉法人 浅倉旬子施設長
「自分の家に住めなくても自分の家と似たような、手ごろな空き家があって、そこに住めるというのは大変いいことだし、幸せなことだと思う。」

空き家の所有者はどこに 自治体の苦悩

空き家を活用する機運が高まる一方、各地の自治体は、大きな問題に直面しています。
岡山県高梁市では、法律の施行を受けて、より一層、空き家対策に力を入れています。
現在、800軒の空き家の調査を進めています。

いつから放置されているのか、所有者は誰なのか、1軒1軒調べます。
最も頭を悩ませているのが、所有者が誰か分からないケースです。


 

この日、足を運んだのは、20年以上放置されているという空き家。
住民からは、家が崩れると通行人に危険が及ぶと苦情が寄せられています。

 

「この垂木(たるき)が腐っているから。」




 

登記簿を取り寄せたところ、所有者はすでに亡くなっていることが分かりました。
現在の事実上の所有者は誰なのか、次に調べたのは、去年から利用が出来るようになった固定資産税の情報です。
すると、所有者の長男が納税の対象者になっていたことがわかりました。

しかし、その長男も13年前に亡くなっていたのです。
市では、4か月かけて、東京にいる長男の妻と娘を探し出し、空き家をどうするのか、手紙で問いかけました。

しかし、返ってきたのは「このまま放置する」という答えでした。
残る親族はどこにいるのか。



 

この日、改めて近所に聞き取りをしました。
手がかりは得られず、八方ふさがりです。



 

高梁市 環境課 長船祥司課長補佐
「やはり限界なとこもあるんですけど、これといって特効薬はないから、地道にやっていくしかないです。」


 

所有者が誰か分からず難航する、空き家対策。
調べれば調べるほど、相続の対象者が増え、自治体を悩ませるケースもあります。

茨城県笠間市では、空き家を登録して、使いたい人に仲介する「空き家バンク」に力を入れています。
移住の促進など、地域の活性化につなげたい考えです。

笠間市 担当者
「空き家バンクの利用は可能。」



 

この日、調査に訪れたのは、8年以上、人が住んでいないという住宅。
傷みも少ないため、空き家バンクに登録して、活用を促したいと考えています。
土地の登記を手がかりに調べたところ、所有者はすでに死亡。
その親戚をたどると…。

笠間市 担当者
「約40名の相続可能性がある方が発覚しました。
最終的に12名の方が、相続権がある対象者となりました。」

亡くなった所有者には、分かっているだけで、7人の子ども、15人の孫、4人のひ孫、2人のやしゃごがいることが分かりました。
このうち、現在も生存していて、相続の可能性がある人は12人にのぼることが分かったのです。
市は、その全員に連絡をとりましたが、相続すると答えた人は1人もいませんでした。
管理の手間などから、相続を拒否する人も多く、空き家を活用できないケースが少なくありません。
笠間市では、調査中の空き家の2割で、所有者が誰か分かっていません。
さらなる情報提供など、国の支援が欠かせないと言います。

笠間市 空家政策推進室 礒山浩行室長
「空き家対策を担当部局の中だけで、実態調査を継続的に行っていくというのは、人的にも予算的にも厳しいものがあります。
国のほうで横断的に、情報が利用できるような制度を作ってもらえれば、空き家の所有者調査も飛躍的に進むと思います。」

全国に820万戸 空き家対策の課題は

阿部
「取材した、社会部の野田記者に聞きます。
この空き家対策ですが、なかなか進んでいないようですね。」

野田綾記者(社会部)
「そうですね。
現場の担当者の負担がとても大きいと、改めて感じました。
ご覧いただいた茨城県笠間市のケースでは、相続の権利がある人を探し出すのに、およそ1年かかっていました。
1軒の空き家の所有者を調べるのに、これだけの時間がかかっているんです。
担当者の1人は、『今後、空き家がさらに増えれば、所有者捜しだけで手一杯になり、ほかの仕事に手が回らなくなる』と話していました。」

和久田
「どうして、ここまで所有者が見つかりにくいんでしょうか?」

野田記者
「大きな原因は、土地や建物の相続の登記が『義務』ではなく、『任意』になっていることなんです。
子どもや孫は、自分が住むつもりがない場合は、お金と手間をかけてまで、相続の登記をしようという気にならない人が多いんです。
新しい法律で、自治体は危険な空き家を強制的に撤去できるようになったんですが、撤去には1軒あたり、およそ200万円の費用がかかってしまうため、そう簡単には踏み切れないのが実情なんです。
専門家は一定の条件のもと、自治体の判断で空き家を利用できるようにする方法も検討すべきだと指摘しています。」

富士通総研 米山秀隆 主席研究員
「農地は所有者がわからなくても、
利用したい場合は強制的に利用権を設定できる制度も設けられている。
場合によっては宅地でも所有権は置いておいても、利用権はもっと柔軟に活用できるよう、制度の変更は検討していく必要性もある。」 
 

野田記者
「増え続ける空き家の対策は、まさに待ったなしの状況にあります。
自治体や国が連携して、抜本的な対策を進める必要があると強く感じました。」