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2016年9月28日(水)

どう実現? 長時間労働の是正

阿部
「これから仕事に向かう方も、気になる動きです。」

安倍首相
「働き方改革は第3の矢。
構造改革の柱となる改革。
もはや先送りは許されない。」

昨日(27日)開かれた、「働き方改革実現会議」の初会合。
長時間労働の是正などの実現に向け、具体的な方策の検討が始まりました。




ドイツやフランスなどと比べ、労働時間が長い日本。
改革は、待ったなしですが…。

「たぶん出来ないと思います。
社会を回そうとすると。」

「現場はそう簡単にはうまくいかない。
現実離れしている。」

 

働く時間は、どうすれば短くできるのでしょうか。
 

和久田
「日本の企業に長年染みついていた長時間労働の体質。
しかし今、女性や高齢者が働きやすい環境を整えなければ、働き手が減り続け、日本経済が立ちゆかなくなるという危機感が強まっています。」

阿部
「難しい課題に向き合い始めた、企業の取り組みを取材しました。」

“7時以降は残業禁止” 大企業の模索

リポート:影圭太記者(報道局遊軍プロジェクト)

午後6時すぎ。
一斉に帰り始める社員たち。
社員1万人を抱えるこの大手鉄鋼メーカーでは、今年度から午後7時以降の残業を原則禁止にしました。


 

社員
「家族との時間と自己啓発と飲み会と、バランスよく配分しています。」



 

社員
「早く帰る方も女性だと多いと思うので、残る方に気をつかうことも多いと思うんですけど、今のこの環境であれば(仕事を)続けやすいと思っている。」


 

企業の体質を改めようと導入したこの制度。
ひとつきあたりの残業時間を、4割程度削減することに成功しています。
一方で、課題も浮き彫りになってきました。

残業禁止を、どう受け止めているのか。
会社では社員5,000人にアンケートを実施しました。

すると、3割以上の社員が「業務に支障がある」と回答しました。
「業務量が減らない中で、ただ残業を禁止されても困る」というのです。
そこで会社では、事務系の社員がどの業務にどれくらい時間を割いているのか、データをもとに分析しました。

会議やメール、資料作成。
この3つで働く時間の半分以上を占めていました。
ここに時間がかかる原因として、ある特徴を見いだしたのです。
例えば、既に決まっている内容の報告に終始する会議。
必要以上に体裁を整える、社内用の資料。
失礼のないように、気をつかいすぎるメール。

社内向けに必要以上に労力を割く、“社内おもてなし”の意識をなくさない限り、これ以上残業は減らせないと考えたのです。




 

神戸製鋼所 人事労政部 今田堅太郎担当部長
「いろんな慣行とかしきたりが、会社のなかに蓄積されてきた。
上の人に何度も事前に根回しをして、理解を得たうえで本番の会議に臨む。
こういったことがこれまでかなり過度に行われてきた。
(社内に対する)“おもてなし”を整理できるのではないかと思う。」
 

「社内おもてなしをなくす」。
まず、会議の参加人数を絞り込みました。
この日の会議には、6人が参加。
これまで、情報共有のためとして、直接的な関わりの薄い人が参加することもありましたが、今回は責任者だけ。
必要最低限の人数です。

そして、社内向けの資料づくりも見直します。
以前は発言内容を詳細に記録することもあった議事録。
議論のポイントだけを会議中にまとめて簡略化し、作成にかかっていた時間を大幅に削減しました。

さらに、社内に向けたメールの書き方も改めることにしました。
所属部署や役職まで丁寧に書かれた宛名。
失礼のないように、調べる時間がかかってしまう、こうした慣習もやめることにしました。

神戸製鋼所 人事労政部 今田堅太郎担当部長
「“さん付け運動”を全社的にやっている。
メールを“さん付け”にしますと、この人役職がわからないというときに、“○○さん”で済むので効率化できる。」

神戸製鋼所 森地高文専務
「これを続けていって、会社の仕事の風土が変わっていくことが大事だ。
今ある仕事が本当に必要かどうか、全員がひとつずつ見直していくことだと思う。」

独自の給与制度で“残業ゼロ”実現

さらに一歩踏み込み、独自の制度を取り入れて“残業ゼロ”を実現している会社もあります。

ホームページ製作やデータ入力を行う、社員50人の会社です。
女性社員が多く、子育てや親の介護などで、働く時間に制約のある人も少なくありません。




短い勤務時間で社員に収入を確保してもらい、さらに業績もあげる。
社長の今本さんは、独自の給与制度を導入しました。



 

まず、1時間あたりに社員がどれだけの仕事を行ったのか、点数にして「見える化」します。

例えば、データ入力の仕事。
1文字1ポイントとし、仕事量を算出します。
このポイントを働いた時間で割り、効率が良いほど評価が高くなります。


 

同じ仕事をするのに6時間かかった場合と3時間で終えた場合では、3時間のほうが高く評価され、給与に反映される仕組みです。
この会社では、1日5時間程度の勤務でも、フルタイムの人と変わらない給与を得ている社員もいます。

「短い時間のなかで頑張って仕上げていくので、頑張らなくてはいけない意識はある。」




 

田村尚子さんです。
この会社に魅力を感じ、転職してきました。



 

この日は4時間で仕事を終わらせ、午後3時前に会社を出ました。




 

シングルマザーの田村さん。
小学1年生の娘が、学校から早く帰ってくる日でした。
効率よく働くことで、子どもとの時間を確保しています。


 


「ママ大好きー。」



 

田村尚子さん
「子育てや介護と無理なく両立できる仕事。
それができるのはこの会社しかないと思って。」


 

会社では、昨年度、人件費が4%増えたものの、売り上げは16%アップしました。
社長の今本さんは、短時間で成果を出す仕組みを整えたことが業績にもつながっていると考えています。



エス・アイ 今本茂男社長
「一分刻みで仕事をしてもらい、早く終われば早く帰ってもらう。
本人が納得出来る状況なら、仕事にも力を出してくれると思う。」

長時間労働の是正 現状は

阿部
「取材した影記者です。
長時間労働の見直しというのは以前から叫ばれてきたわけですが、ようやく本格化してきたといえるんでしょうか?」

影圭太記者(報道局遊軍プロジェクト)
「スタートラインに立ったというところだと思います。
多くの企業が必要性を感じていて、紹介した以外にも独自の取り組みは始まっているんですが、まだ大企業を中心とした一部にとどまっているのが現状です。
『働ける人が長時間働くことが企業の成長にはプラスだ』という意識が、なかなか抜けないという指摘もあります。
一方で働き手の側も、『残業が減るのは歓迎だが残業代が減れば生活が苦しくなるのではないか』という懸念が根強くあります。
お互いの思惑が交錯して、長時間労働の見直しにブレーキがかかっている面もあるのではないでしょうか。」

長時間労働 改善するには

和久田
「長時間労働の見直しに向けたカギは、どこにあるんでしょうか?」

影記者
「さまざまな業種や職種がある中、完全な答えをすぐに見つけるのは難しいと思いますが、まずは経営側、そして働き手側ともに意識改革が必要なのは間違いありません。
最新の研究では、長時間労働の見直しなど働き方改革の進んだ企業は、競争力が落ちることはなく、むしろ利益率が高まる可能性があるという研究結果も出ています。

リポートにも近い例がありましたが、短時間に集中して働いた人が、待遇でも報われ、その結果として企業の好収益につながる、そうした新しい働き方のモデルを模索することが重要になっています。
さらに国には、残業の上限規制のあり方や、その規制を企業にどう守らせるかなどの仕組みづくりの検討も求められることになります。
少子高齢化で働き手が減り続ける中で、長時間労働の是正は、国民全体で考えるべき、まさに待ったなしの課題といえます。」

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