2019年1月30日(水)

命を奪う用水路 狭くて浅くても 危ない!

桑子
「こちら、幅1メートルほどの用水路の模型です。
4日前、富山市でこれとほぼ同じ大きさの用水路の中で、86歳の女性が亡くなっているのが見つかりました。」

有馬
「注目していただきたいのが、当時の水深。
こんな感じ、13センチほどしかなかったんです。」

桑子
「一見すると危険には見えないような場所で、なぜ、重大な事故が起きてしまったのか。
実は、全国各地にあるこうした狭くて浅い用水路、大きなリスクを抱えているんです。」

水深13センチでも…

今井翔馬リポーター
「事故が起きたのは、住宅地沿いを流れる道路のすぐそばにある、こちらの用水路です。
この用水路は、網があったり塀があったりするわけでもありません。」

亡くなったのは、近所に住む谷川喜美さん。
警察は、谷川さんが転ぶなどして転落した可能性があるとみています。

最初に見つけた人
「このへん(で見つかった)。
水深は深くない。」

現場の当日の映像です。
雪が積もり、用水路と道路の境がわかりにくくなっていました。

用水路の水深を測ってみると。

今井リポーター
「だいたい今、13センチです。
当日の朝もだいたい13センチの水深だったということです。
今、水の量が事故が起きた時と同じような水深になっています。」

最初に見つけた人
「こんな川で人が死ぬとは、思いもしなかった。」

全国各地で事故が

こうした用水路で命を落とす事故が、各地で相次いでいます。
去年(2018年)5月、香川県三木町で生後2か月の男の子が、ベビーカーごと用水路に落ちて流され死亡。
警察の統計では、一昨年(2017年)までの3年間で、溺れて死亡したのは200人以上に上っています。

そして、多くの事故が、狭く、水深も浅い用水路で起きていることがわかってきました。
NHKが富山県内で去年1年間に死亡事故があった13か所のすべての現場を確認したところ、幅が1メートル以下と推定される場所は7カ所。
水深が40センチ以下とみられるのは、9か所に上っていたのです。

家族3人が犠牲に

リポート:中谷圭佑・佐伯麻里 (NHK富山)

用水路の事故で、家族3人を亡くした遺族が取材に応じてくれました。
米原淳子さん。
去年8月、夫が用水路に落ち、亡くなりました。

かつて、NHKが取材した、夫・光伸さんの映像です。

農薬を使わず、水田にアイガモを放す有機農業に取り組んでいました。
事故の前、用水路から田んぼに水を引くと話をしていた光伸さん。
その後、用水路でうつぶせの状態で倒れているのが見つかりました。
自宅の近く、幅わずか60センチ、水の深さ20センチの用水路でした。

家族を用水路事故で亡くす 米原淳子さん
「初めは信じられなかった。
こんな狭い小さい川でなんでと思う。」

夫を奪った用水路の事故。
夫だけでなく、米倉さんの父親と姉も、現場近くの用水路に落ち、亡くなっています。

家族を用水路事故で亡くす 米原淳子さん
「まっすぐ道路が続いていると思って、そのまま進んだと思う。
バイクもろとも川に落ちた。」

父親は、40年以上前、バイクを運転していて用水路に突っ込み死亡しました。
姉も、幼いときに親が目を離した隙に、用水路で溺れて亡くなりました。

家族を用水路事故で亡くす 米原淳子さん
「家族が亡くなると、人生が予想と違っていたところにいく。
ふだんから気をつけるしかないのかなと思う。
川の事故のこわさ、けがだけじゃすまない。」

狭くて浅いのになぜ

広くて深い用水路ではなく、なぜ幅が狭く浅い用水路でも転落して人が死亡するのか。
専門家は。

長岡技術科学大学大学院 斎藤秀俊教授
「60センチくらいの幅だと、ちょうど肩幅と同じくらいになる。
あるところでつっかえてしまうと、水をせき止める形になる。」

自分の体が水の流れをせき止める形になると。
仮に意識があっても、瞬く間に水位が上昇、起き上がることすらできなくなります。
転落してパニックになって大量の水を飲み込んでしまい、溺れることもあるといいます。

さらに溺れなくても亡くなるケースも。
今月(1月)26日に、富山市の用水路で死亡した女性の遺体を詳しく調べた結果、死因は低体温症でした。

今日(30日)、用水路の水温を測ると。

今井リポーター
「だいたい5度くらいですね。
感覚がマヒしてくるような、それぐらいの冷たさがあります。」

長岡技術科学大学大学院 斎藤秀俊教授
「(水温が)15度、10度、5度となると、低体温症にいたる時間が極端に短くなる。
5度を割ると、人間がその中にいると10分も命が持たない。
それくらい危険な温度。」

事故なくすには

用水路での事故をなくすには、どうすればいいのか。
生後2か月の男の子がベビーカーごと転落して死亡した香川県の用水路では、今月、転落を防ぐための新たなフェンスが設置されました。

しかし、全国にある用水路の総延長は40万キロ。
地球10周分にも及ぶ、その全てに対策を講じることは難しいのが現状です。
専門家は、ハード面の整備だけでなく、住民一人一人の事故経験を収集し、共有することが大切だと指摘します。

災害リスク評価研究所 松島康生代表
「事故を経験したことのある高齢者、経験者からヒアリングをしてほしい。
“ヒヤっと”した“ハッと”した事故例を集め、このような状況下で発生していると調べることが大切。」

命を奪う用水路

桑子
「総延長が地球10周分の用水路に一気に柵を作るというのは、とてもできないですからね。」

有馬
「ということで、危ない場所はどこなのか、かつて事故があったのはどこなのか、そんな具体的な情報を地域の皆さんで共有することが、大事になってくるということなんですね。」

Page Top