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能登半島地震から4か月 子育て支援の現場は 新潟

  • 2024年05月03日

2024年1月の能登半島地震では、住宅だけでなくさまざまな施設も被害を受けました。
そのうちの1つに、新潟市西区で子育て支援を続けてきた団体の拠点があります。拠点の施設が大きな被害を受けたことで、支援の場は一時失われました。再開にあたりネックとなったのが資金面。苦難を乗り越え3か月あまりで復活した団体を取材しました。(新潟局記者 髙尾果林)

放送の動画はこちら

地震で失われた「親子の憩いの場」

4月下旬、新潟市西区に親子の憩いの場が戻ってきました。

団体の活動再開後に開かれた催しの様子

運営するのは地元の子育て支援団体「うん・まんま」
能登半島地震で大きな被害をうけ、活動の休止を余儀なくされていました。

子育て支援団体「うん・まんま」五十嵐加代子代表

五十嵐加代子代表
被災したときには『本当にこれで再開できるのか』と不安がたくさんありましたので
再開できて、本当にほっとしています。

団体は、およそ15年にわたり親子向けの催しや保護者どうしの交流の場をつくってきました。

しかし能登半島地震で、活動拠点の施設に大きな被害が。

液状化で施設全体が傾き、地面には亀裂が

液状化で玄関扉が傾き、出入りも難しくなりました。応急危険度判定では「危険」の判定。
利用はできず、行政による解体の対象になります。

五十嵐さんは「地震の翌日、施設の前で『これからどうしよう』と何時間かへたりこんでいました」と話します。

移転を決めるも資金難に

活動をやめることも考えましたが、利用者から「続けてほしい」という声が多く寄せられたため、拠点を別の場所に移して再開することを決めました

しかし、この団体は法人格を持たない「任意団体」のため、地震の被害に対する公的な支援が受けられませんでした。また、非営利の組織として市の補助金と利用料で運営費をまかない、収入と支出がほぼ同額になるよう調整してきたため、ほとんど資金は残っていませんでした。

「地域の茶の間」と認められ新潟市から補助が出ている

なんとか活動を再開できないかー

以前の施設からほど近い空き家を一部改装

SNSで協力を呼びかけた結果、子育て支援の活動に賛同する人から空き家の提供の申し出が
一軒家を月6万円と、格安の家賃で借りられることになりました。

また、娘の子育てで支援を受けたことがある工事業者の男性も協力。
移転先の電気工事を無償で請け負いました。

工事したのは「松澤電気」の松澤泰史さん

さらに利用者や関係団体からの募金もあり、先月下旬、活動の再開にこぎつけたのです。

利用者からは・・・
「子どもたちの居場所がまたできてくれてやっぱりうれしい」。
「新潟出身でないため母親などが身近におらず、先輩ママみたいな存在がたくさんいてくれて心強いので本当にありがたいですね」。

活動を再開できた一方で、地震で壊れた備品の購入ネット環境の整備など、今後かかる費用もたくさんあります。団体は5月下旬からクラウドファンディングを開設して募金を募ることにしました。

五十嵐代表は「今回の地震で改めて『子育て支援の大切さ』に気づきました」と話します。

そして、今後の活動に向けて気持ちを新たにしています。

たくさんの人の力や見守る人たちがいてこそ、子育てが成り立つんです。
「地域で見守る子育て」のため、今後もこの「居場所」を大事にして、活動を続けていきたいと思います。


存続が難しい「任意団体」とは?

災害福祉に詳しい新潟大学の田村圭子教授に聞きました。

団体としての人格「法人格」を持たない、いわばサークルのようなもの
町内会や自治会も含まれます。行政との手続きも簡単で、比較的自由に、身軽に活動できます

しかし、その「身軽さ」ゆえに、行政や企業の支援や協力を受けにくいという特徴も。
今回の地震でも十分な支援制度は設けられていません。
行政側も、活動の実態を把握しにくいため、支援が難しいのです。

任意団体の重要性とは

任意団体による支援活動の中で比較的多いのが、子育て支援高齢者の見守りです。
これらは行政による社会サービスを補完する役割を持ちます。

田村圭子教授
任意団体による支援と行政による支援、これらがそろって、1人では暮らしづらい人や困りごとがある人へのシームレスな支援が実現するんです。

そして、災害時にも重要な役割が。

保育ニーズや介護ニーズは災害が起こるとますます大きく、複雑化する。
そこを柔軟に支えていくためには、身軽な任意団体の存在が大きいんじゃないでしょうか。

災害が起こると、支援活動が弱まったり休止せざるを得なくなったりします。
そうなると、地域の人たちのつながりが失われ、地域全体の力が弱まってくる。
それが、災害の怖さの1つでもあります。

「地域の人にとって重要な役割を持つ支援の場が、災害により突然失われることもある」。
私たちは、災害への日頃の備えに加え、そのことも知っておくべきかもしれません。

  • 髙尾果林

    新潟放送局 記者

    髙尾果林

    2021年入局。事件・事故や裁判の取材をへて、現在、新潟市政などを担当。

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