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清水がおじゃまします!地域の茶の間

  • 2024年02月06日

    コーナー「清水がおじゃまします!」。 
    地域密着リポーターの清水まどかが、県内のみなさんのもとに直接おじゃまして 
    地域で地道に頑張る人や魅力的な取り組みなどをお伝えします。

    放送した動画はこちら

    「地域の茶の間」を知っていますか?
    地域住民が気軽に集まることのできる交流の場所で、人と人・人と社会のつながりを作ることを目的としています。この仕組みづくりは補助金を出すなど自治体としても推し進めており、県内2500か所以上、全国にも広がっています。
    「地域の茶の間」を27年前初めて立ち上げた女性が新潟市にいると聞いて、おじゃましました!

    ”誰もがここにいていい”と感じる居場所に

    おじゃましたのは新潟市東区にある「実家の茶の間・紫竹」。
    広さ87坪の2階建ての民家を借り上げ、10年前から開いています。

    席は自由、利用料は300円。月曜日と水曜日の週2回、開催されています。
    誰でも来ることができますが、一人暮らしの高齢者も少なくありません。

    利用者
    「夫も娘も亡くなってまるっきり1人だった。近所の人が誘ってくれて本当によかった」

    10年前からこの施設を運営する、河田珪子さんです。
    居心地のよさに妥協しない、というのが河田さんのモットーです。

    「実家の茶の間・紫竹」代表 河田珪子さん
    「みんな百人いれば百様ですから。
     その人が居心地よいと思っていられる、居心地よいと思ったことができる。
     みんなと一緒に緩やかに『ここにいてもいいんだよ』というメッセージが伝わるような
     居心地のよさ。それが次に『なにかあったら言ってね』『困ったことあったら言ってよね』
     のことばにつながったらいいですよね」

    ”誰にとっても居心地がいい”とはどういうことなのかー。
    それを知りたくて、実家の茶の間・紫竹に2日間、おじゃましました。

    キッチンにも利用者がいると聞いて覗いてみると、お昼ご飯の準備をしていました!

    食事作りや配膳は、利用者の中で手伝いたい人が自ら担当しています。

    今年で90歳になるという男性は…

    配膳を担当する男性
    「いつ倒れても悔いはないです。みんないい方ばかりで、生きがいでやっているようなもの」

    年齢を重ねても、自分の”居場所”と”役割”があるという「実家の茶の間・紫竹」。

    この日は小学5年生の男の子も来ていました。
    去年から学校を休みがちになり、知り合いの紹介でここに通うようになったといいます。

    なかなかドミノを上手く倒すことができなかった男の子に、近くに座っていた男性からアドバイスが。

    母親
    「何度も挑戦して、挑戦してできたときに、周りの方が見ててくれてるという安心がある」

    小学5年生
    「初めての人ともすぐにわかりあえるし、来てて楽しい場所」

    この男の子は、一緒に遊んでくれた人や、お昼ご飯の準備・片付けをしてくれた人、さらに取材する
    私たちにまで、「ありがとうございます」と飴やチョコレートを手渡ししてくれました。
    見守ってくれている周りの人たちの”優しさ”を感じ、自分がもらったその”優しさ”をまた次の人へー。
    ”優しさの連鎖”が繋がっていると感じました。


    居心地のよさを作り出すための工夫は、放送では紹介しきれなかったものが、実はたくさんあります。
    ・当番はエプロンをつけて部屋に入らない その日「一番手助けが必要な人」に声をかける
     「お世話する人・される人」の境界線をなくして、誰もがくつろぐことができる場所にしたいという
     理由から、当番がエプロンを着けるのは台所のみ。そして、当番はその日一番困っている人を見つけ
     声をかけるようにしています。その声かけが周りの信頼感を生むと同時に「お互いに助け合おう」と
     いう気持ちを作り上げることに繋がるといいます。

    私が初めて訪れたときも 当番の方が「いらっしゃい」と声をかけてくれました

    ・一日のスケジュールは立てない 来る時間も帰る時間も自由
     「実家の茶の間・紫竹」では、一日のプログラムはありません。
     本を読んでも、ボードゲームをしても、誰かと話しても、話さなくてもいいー。
     好きな時に来て、自分のやりたいことが思い思いにできる、自由な雰囲気を大切にしています。

    オセロをする人や、一人でのんびり場の雰囲気を味わう人も

    ・3つの決まりごと
     利用者には3つだけ、決まりごとがあります。
     ①その場にいない人の話をしない  ②誰が来ても「あの人だれ」という目をしない 
     ③プライバシーを聞き出さない
     その地域に暮らす人が安心して過ごせるようにうわさ話の井戸端会議にならないようにすること、
     初めて訪れる人も”いらっしゃい”と受け入れること。長く地域に愛される居場所にするために大切な
     ことだといいます。

    この決まりごとは、部屋の中にも張り出されています

    ・雨の日も雪の日も、玄関の扉はあけておく
     初めて来る人にとって、知らない場所の扉を開けることが、一番最初のハードルです。
     なるべくバリアをなくし、”いかに入りやすくするか”ということが、誰でも来ることができる場所に
     するための工夫です。

    「地域の茶の間」誕生のきっかけとは

    長年居場所づくりをしてきた河田さんが、「実家の茶の間・紫竹」を立ち上げたのには、
    ある理由がありました。

    32年前、有償ボランティアで高齢者の見守りをしていたころ。
    河田さんがおばあさんの家を訪ねると、同居していた子どもは仕事で留守中。
    おばあさんは家族に迷惑をかけたくないと、暖房をつけることを断ったというのです。

    「実家の茶の間・紫竹」代表 河田珪子さん
    「自分は何もできなくなった。家族が帰ってきても、おつゆひとつ煮ておくことができない。
     庭の草むしりひとつできなくなって。何も役に立たなくなったのに、『油使わないでくんな
     さいね。灯油を使わないでください。ふとんにいればあったけえから』」

    誰もが“自分は役に立っている”と実感できる居場所が必要ではないかー。
    こうして27年前、地域の人たちが集う「地域の茶の間」を立ち上げた河田さん。
    10年前からは、新潟市と協働で「実家の茶の間・紫竹」を設立し運営してきました。

    しかし、10年計画で進めてきたこの事業は期限を迎え、ことしの10月に閉めることになっています。

    「実家の茶の間・紫竹」代表 河田珪子さん
    「一番つらいのは、やっぱり来る方たちが行く場所がなくなって布団に入っちゃったら嫌だな。
     行く場所がある、いられるところがある、明日はどこに行こう誰と会おうと、その先のことの
     楽しみがない人生になっていくと、どんどん体も壊していく」

    茶の間の”思い” つなぎたい

    居場所を求める人が多い中、新しい場所で「地域の茶の間」を立ち上げようとしている女性がいます。久保洋子さん、29歳です。

    心身のバランスを崩し、東京から地元・新潟に戻ってきた洋子さん。
    去年の秋「実家の茶の間・紫竹」で河田さんと出会い、人との接し方や寄り添う姿勢を
    学んできました。

    そんな洋子さんが、ある女性の話に耳を傾けていました。

    入院している母の容態が良くないと、報告をうけたばかりの女性。
    抱えきれない思いを、洋子さんに打ち明けていました。

    悩みを打ち明けた女性
    「本当に人生の中でこんなに落ち込んだことはないなってときに、ここに来て助けられました」

    河田さんの志に共感したという洋子さん。将来の夢を聞くと…。

    久保洋子さん
    「悩んでる人とか苦しんでる人のためになにかできないかなって思ったら、
     自分も居場所を作りたい。茶の間をいつか立ち上げたいと思っています」


    取材をしていて、「実家の茶の間・紫竹」に通う人たちはもちろん、訪れない人たちもこの場所を
    支えていると感じることがありました。
    雪が降ったときは近所の人が駐車場を除雪したり、自分の畑で採れた野菜を持ってきてくれたり。
    地域に応援される場所だからこそ、誰もが安心できる居場所になっていると感じました。

    「実家の茶の間・紫竹は“俺の実家”だ!」と力強く教えてくれました

    そして印象的だったのは、河田さんが、昼ご飯の副菜およそ40人分を、毎回家で作ってくるということです。かぼちゃの煮つけや、シソの実の味噌漬け。誰かが日常の会話の中で「これが好きだ」と話していたことを忘れず作ってくるといいます。
    実は、私が取材の中で「サーターアンダーギーが食べたい」と言ったことばを覚えていてくださり、次に訪れたときにはサーターアンダーギーが50個も!何気ないやりとりを大切にされることで「受け入れてもらえている」という気持ちになり、心がとても温かくなりました。

    おじゃまさせていただいた「実家の茶の間・紫竹」のみなさん、ありがとうございました!

    ディレクター(牧陽子)のひとりごと
    2024年。年が明けるとともに能登半島地震が発生し、新潟にも液状化などの被害が。
    心がざわざわ・・・こんな時、視聴者のみなさんは、どんな番組を観たいのだろうー
    清水と2人で真剣に考え、西区の社会福祉協議会に向かった。
    「被害にあった方たちが心休まる場所はあるのでしょうか?」
    「“地域の茶の間”があります」

    東区に、その原点を築いた女性がいると知り、すぐに連絡。早々にロケをさせて頂いた。
    子どもが、男性と楽しそうにお手玉を作る笑顔に魅かれてカメラを回していると・・・
    河田さん)「すぐに撮影しないで、まずは話を聞いてみて」
    確かに。
    取材・ロケでは、「さんま(間)」を大切にしている・・・つもりだった。
    「人間」 「時間」 「空間」
    “その瞬間”を撮りたくてついつい焦ってしまったが、
    「相手を好きになり、尊敬し、心に寄り添う」という何よりも大事なことを忘れていた。
    こんな私にも、優しく注意して下さる河田さん。
    誰でも平等に、あたたかく、絶妙な距離感で接する姿に感銘を受けた。
    ロケが終わると、「また来てね、ここはあなたたちの実家だから」と。

    「にこにこ聞いて下さるので話やすかったです」と、清水に話す洋子さん。
    そうだ!こんな時だからこそ、笑顔・明るさを大切に、元気になる番組を作っていこう。

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