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立往生を防げ!新潟 記録的大雪から1年

遠赤外線照射や自動化で対策急ぐ
  • 2023年12月20日

 

2022年12月18日からの記録的な大雪では、新潟県長岡市や柏崎市などの国道で大規模な立往生が長時間発生。およそ1800台が動けなくなり、市民生活に大きな影響が出ました。立往生は防げなかったのか。その後の検証で除雪や情報共有に課題があったことがわかってきました。ことしも本格的な雪のシーズンとなる中、対策は進んでいるのか。現場を取材しました。
(新潟放送局 記者 阪本周悠)

浮かび上がった課題 「除雪」と「情報共有」

 

1年前の記録的な大雪で新潟県中越地方で起きた立往生。
このうち柏崎市では通行止めが最大38時間に及びました。
道路管理者などが立往生の対応や原因を検証し、浮かび上がった課題が2つあります。

ひとつ目は、想定以上の降雪量で除雪が追いつかなかったこと。ふたつ目は、関係機関の情報共有が不十分だったことです。現場では、こうした教訓をもとに対策が進められています。

除雪をどう進める? ソフトとハード両面で

設備面の新たな対策として、ことし11月、国道8号脇に設置されたのが、こちらの装置。遠赤外線を道路に照射して路面をあたため雪をとかします。県内での設置は2か所目です。さらに道路の下には、電気の力で熱を出すカーボンシートが埋め込まれています。

これらが設置されているのは、柏崎市米山台にある100メートルほどの区間。地形的に消雪パイプを設置できず、除雪が難しい場所です。坂道が続き、去年12月の大雪では除雪が追いつかず立往生の一因になりました。
国道事務所は新たな装置を試験導入。その効果を検証することにしています。
 

久保副所長
米山台は非常に登坂不能の起こりやすい場所。路面を暖めたり遠赤外線を照射することで路面の状態をウエットにする。大型車はチェーンなどがないとなかなか登り切れないので出来るだけ圧雪を厚く作らないようにしたい。

設備面のほかに、除雪のもうひとつの課題となるのが担い手不足です。

湯沢町の建設会社で除雪作業を指揮している峠義輝さんです。
この会社では毎年40人から50人ほどの作業員が除雪を担当しますが、仕事の厳しさに加え、除雪用の重機の操作など技術の習得に数年程度かかることなどから人繰りは厳しいといいます。

峠さん
毎年、もうギリギリな状態ですね。普通の雪だったら対応できるけど、大雪だったりすると(厳しい)。近年極端な降り方をしているので、ちょっと不足かな。

作業員の高齢化で将来的な担い手不足も懸念される除雪。
こうした課題をIT技術で乗り越えようという実証実験が進められています。

この重機はIT技術で雪を除雪する基本動作が自動化されています。コンピューター上の地図に除雪する場所や動作を事前に登録。登録された場所に到着したことをGPSで確認すると自動的に除雪します。
 

除雪の作業員は運転のみに集中でき、経験の浅い人でも作業できるといいます。

峠さん
自動化がどんどん進んでいけばオペレーターの不安と負担は減っていくと思う。別の業種の方が冬期間だけは除雪っていうのはありだと思うので建設業の方じゃなくてもできるっていう風に自動化がどんどん進んでいけば。

遠赤外線などの融雪装置について国道事務所では、この冬の効果や設置コストを踏まえて導入範囲を広げるか検討する方針です。また除雪の担い手不足は去年の立往生では直接の原因になりませんでしたが、除雪体制を維持する面で大きな課題とされています。

国は対策のひとつとしてIT技術を活用した重機の実証実験を令和7年度まで続け、実用化につなげたいとしています。

関係機関の情報共有は?

去年12月18日夕方、雪による事故が多発し、関越自動車などの高速道路が通行止めとなりました。
この時点で国道8号や17号は渋滞しておらず、国道を管理する国と高速道路の管理会社の間で協議は行われませんでした。

しかし、その後、高速道路が通行止めになった影響などで車が国道8号などに集中して19日朝から渋滞が発生。

道路の管理者などによる情報連絡本部が立ち上がり、国道も通行止めにしたのは午後3時半すぎからでした。このころにはすでに車の滞留が始まり立往生につながりました。

その後の検証で国や高速道路の管理会社は、18日夕方に高速道路が通行止めになった時点で情報を共有して国道と高速道路を同時に通行止めにするべきだったとしています。こうした教訓を踏まえ、国などは情報共有の会議を立ち上げる降雪量の基準を低くして、より早い段階で協議できるよう計画を見直したとしています。

ただ除雪の設備面の対策はまだ実証実験の段階で、関係機関の情報共有も一定の改善は図られていますが訓練を重ねて習熟を進めている面もあります。

ドライバーや荷主の意識も重要

立往生を防ぐには、私たちドライバーや荷主の側も意識を変えることも重要です。

早めの冬用タイヤへの交換はもちろん、気象情報や道路規制など交通情報に十分注意を払う必要があります。また、大雪の日は不要不急の外出を控えることが必要になる場合もあります。

北陸地方整備局などは立往生をふせぐため大雪の際は次のような対応を呼びかけています。▼不要不急の外出を控え、やむをえず出かける場合には必ず冬用タイヤに交換する▼車内には毛布や食料などを準備する▼大型車はチェーンを装着し運送事業者は運送日を調整する

▼さらに大雪となった場合には管内の国道や高速道路の区間を予防的に通行止めにする可能性があるため、最新の情報に注意が必要です。

  •  阪本周悠

    新潟放送局 記者

     阪本周悠

    2021年入局。
    主に上越地域を担当。農業や伝統文化などを取材。 

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