清水がおじゃまします!「能の島」佐渡・新メンバー続々!
- 2023年07月12日
コーナー「清水がおじゃまします!」。
地域密着リポーターの清水が、県内のみなさんのもとに直接おじゃまして
地域で頑張る人や魅力的な取り組みなどをお伝えします!
佐渡の人たちが舞う「島の能」
佐渡は国内の3分の1にあたる能舞台がある、能が盛んな島。
特に初夏の佐渡は、「能月間」として盛り上がる時期です。 佐渡の能は、プロではなく、島の人たちが舞うことが特徴。人々の生活に根差した伝統芸能です。県や市の職員や、農家として働く傍らで、練習を重ねています。
400年近く歴史がある佐渡の能。 1年で一番盛り上がるこの時期に、佐渡の人たちはどんな思いで能と向き合っているのか。佐渡でも能が盛んな地域のひとつである、真野地区におじゃましました!
誰でも気軽に!佐渡の能
「真野能楽会」の皆さんです。59年前、旧真野町の住民が集まって結成されました。
副会長の金子美恵さん、79歳です。演じながら指導者としても会を引っ張っています。
金子さんは、町の職員として働きながら、プロの師匠に習ってきました。能にかける情熱は、プロにも負けません。能には「舞う人の人間性が現れる」と話す金子さん。普段の生活の中でも、常に謙虚に、人のことを思いながら過ごすことがなにより大事で、上手下手は関係ないと言います。
金子さんは、初心者でも能を身近に感じられるような工夫を行っています。
教えてもらうために、金子さんのご自宅におじゃますると…。
能の衣装を、知り合いから譲り受けたり古着屋さんで安く買ってきたりすることで、初心者でも参加しやすいように出費を抑えているんです。能面も、職人から好意で譲り受けたものだそう。
佐渡では「舞い倒す」ということわざがあります。能を舞うには、衣装やお面を揃えたり借りたりすることなどに金銭がかかり、財産を費やして身上をつぶしてしまう様を表した言葉とされています。「能にはお金がかかる」そんなイメージを払しょくしたい。金子さんはなるべく手ごろな値段で能と触れ合える工夫を行っているのです。
「興味のある人がいない」金子さんの苦悩
「誰でも参加できる能」を目指す金子さん。しかし長年抱えてきた課題があると言います。
能に興味をもつ人が少なくなり、後継者が少なくなっているのです。
金子さん
「興味のある人がいない。それで困る。お能っていうのは、難しいっていうのが一番感じるのかな。寂しいし、切ないし、どうしてこれから後継者を育てればいいか、それが一番難問。」
どうしたら興味のある人を増やせるのか。
金子さんはいま、初心者向けの教室を毎週末に開いています。能の楽しさだけでなく、技術・心構えまで、惜しみなく伝えています。
金子さんは昨年、体の不調で、舞台中に座った状態から立てなくなったことがあるそう。体の痛みで思うように舞うことができない状態が続きました。しかし、シテ方(主役)を舞うことのできる人は、金子さん以外いません。そのとき、師匠から習ってきたことを、早く、若い人たちに伝えたい。そう決心したと言います。
後世に残すため門戸を開く!新メンバー続々
金子さんたち「真野能楽会」はこんな決断もしました。
これまで真野地区の住民中心だったメンバー構成を見直し、能に興味を持つ外国人や佐渡に移り住んできた人などにも門戸を広げたのです。
イギリス出身のブラック・ジャスミンさん。
大学研究員として去年から佐渡に滞在していますが、能楽会に参加しています。きっかけは、金子さんの地唄を聞いて、その声に圧倒されたからだそう。能の奥深さや、能によって地域のコミュニティが作られていることに魅力を感じていると言います。
そして、取材した日、新たな参加者も!
転勤で佐渡にやってきた若者が、職場の先輩に誘われて見学に訪れたのです。
金子さんも、この笑顔!
以前、佐渡の能舞台を見にきたことがあるという二人。
初めて練習の場を見学し、能を舞う人たちの思いを感じ取ります。
金子千夏さん
「すごく、これが佐渡で脈々と受け継がれているものなんだというか、踊りとか歌とか全てから感じて、これは受け継いでいくべきものだなと思いました。」
金子美恵さん
「来年転勤される方もいますけれど、それはそれで、また向こうの方へ帰ってからいくらでも伸ばしていけることがありますので、広く深く、見守ってやりたい。そうすれば日本の伝統芸能は絶えなくなる。そういう気持ちで接しております。」
佐渡の能を守ることが、日本の伝統芸能を守ることに繋がる。金子さんの能にかける思いは、佐渡にとどまることなく広がっています。
今回おじゃまさせていただいた、金子美恵さん・真野能楽会のみなさん、ありがとうございました!