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東電 柏崎刈羽原発 原子力規制委処分解除せず 3つの検証は

  • 2023年05月18日

2021年にテロ対策上の重大な問題が相次いで明らかになり、事実上運転を禁止する行政処分が出されている柏崎刈羽原子力発電所。
原子力規制委員会は東京電力の改善状況を確認する検査を行ってきましたが、5月17日に開かれた定例会合で「現時点では改善が不十分」として処分の解除を見送りました。柏崎刈羽原発は今後どうなるのでしょうか。(※動画は2023年5月17日放送)
(新潟放送局 記者 阿部智己)

放送した動画はこちら

テロ対策上の重大不備 その後の東京電力の改善状況は

柏崎刈羽原子力発電所

2021年、柏崎刈羽原子力発電所では外部からの侵入を検知する設備に長期間不備があったことや社員による中央制御室への不正入室などテロ対策上の重大な問題が相次いで見つかりました。原子力規制委員会は厳重な管理が求められる核物質防護の評価で最も深刻なレベルにあると認定。この年の4月、事実上運転を禁止する行政処分を出しました。

それから2年余。東京電力は改善措置計画を作って改善に取り組み、規制委員会は状況が改善されているか検査を行ってきました。

27項目のうち4項目で改善不十分 規制委は処分解除せず

2023年5月17日に開かれた原子力規制委員会の定例会合。検査の結果が報告され、侵入を検知する設備については一定の改善が見られたと評価されました。一方、強い風や雨の影響で誤って警報が出るなど監視が難しくなる悪天候の際に監視を行うための特別な体制が整備されていないことや、問題点を共有する会議での議論が低調なことなど確認した27項目のうち4つの項目で「改善が不十分」と指摘されました。このため規制委員会は検査を継続する必要があり、現時点では行政処分を解除しないことを確認しました。

柏崎刈羽原発 遠のく再稼働

これにより柏崎刈羽原発は当面、再稼働できない状況が続くことになりました。行政処分は核燃料の移動を禁止しているため、処分が解除されないかぎり東京電力は原子炉に燃料を入れることができず、再稼働はできないのです。

東京電力は電気料金値上げの申請にあたって運転計画に柏崎刈羽原発2基の再稼働を織り込み、7号機は2023年10月の再稼働を想定していますが、見通しは依然不透明なままです。

原子力規制委員長「自律的に改善できるか見ていく」

今後の見通しはどうなのか。原子力規制委員会の山中伸介委員長は今回の決定について次のように述べました。

原子力規制委員会 山中伸介委員長

検査を行うなかで一定の改善は見られたものの、東京電力が自律的に核物質防護の問題を改善できる状態になっていない。組織的な要因や現場の意識もまだ改善されていないので、今後の取り組みに期待したい。

山中委員長は処分を解除する時期の見通しについて明言を避け、東京電力の取り組みしだいと強調。鍵を握るのは東京電力が自律的に改善できるようになるかどうかだと指摘しました。

ものすごく時間がかかるかもしれないし短時間で済むかもしれないが、東京電力の努力しだいだ。1か月か2か月で改善するとは期待しておらず、私自身としては厳しい状況に変わりないという認識だが、少なくとも27項目のうち4項目まで改善したということは東京電力には改善する力があると考えている。処分を解除できるかどうかは東京電力が自ら改善する力を見せてくれるかどうかに尽きる。

また、できるだけ早い時期に東京電力の社長ら幹部と面談を行い、今回の検査結果の受け止めや今後の対応などついて聞き取りを行う考えを示しました。

東京電力「4項目の是正を図りたい」

現時点で行政処分を解除せず検査を続けるという規制委員会の方針を受けて、東京電力は「引き続き改善措置計画を進め、指摘いただいた4項目についてしっかりと是正を図ってまいります」とするコメントを出しました。

新潟県 「3つの検証」の行方は

柏崎刈羽原発が当面、再稼働できない状況が続く一方で、新潟県が再稼働の議論の前提としている、いわゆる「3つの検証」の先行きも見通せない状況になっています。
その背景には、ここにきて「3つの検証」のとりまとめのしかたが変わったことがあります。もともとは有識者の委員会が取りまとめを担うことになっていましたが、当時の委員長と県が運営方針などをめぐって折り合いがつかず、県がみずから取りまとめる方針に転換したからです。

「3つの検証」とは

そもそも「3つの検証」とは何か。「3つの検証」はいずれも福島第一原発事故の検証を主なテーマにしています。「技術委員会」「避難委員会」「健康・生活委員会」の3つの委員会があり、合わせて4つの報告書を知事に提出しました。「技術委員会」は福島第一原発事故の原因を検証。「避難委員会」は原発で事故が起きた場合の避難の課題。「健康・生活委員会」は原発事故による健康と生活への影響を検証しました。
技術的な問題だけでなく、住民の避難、被ばくの問題、避難したあとの生活への影響など多様な観点から検証が行われ、多くの重要な課題を指摘しています。ただ、これらの報告書では福島第一原発の事故を踏まえて柏崎刈羽原発の安全対策や防災対策がどう進んだかなどの検証は十分に行われていません。

再稼働の議論の材料は

それでは県はいつどうやって再稼働の是非を判断するのか。県は議論の材料は「3つの検証」のほかに3つあるとしています。

1つはまさに今進められている原子力規制委員会の検査結果。2つめは柏崎刈羽原発の安全対策や不祥事が相次ぐ東京電力の適格性の確認です。これについては技術委員会が議論を続けています。3つめは原発事故が起きた場合の避難の課題への取り組み、対応力の向上です。県はこれらを判断材料にするとしています。

今後の議論の流れは

県は今後「3つの検証」の取りまとめなどを行った上で、公聴会やシンポジウムなどを開いて県民の意見を聞くとしています。そして花角知事が原発の取り扱いについて判断し、県民の意思を確認するという手順を踏むとしています。
原子力規制委員会の処分が解除されるのかどうかとともに、県がどのように議論を進めていくかが注目されます。

  • 阿部智己

    新潟放送局 記者

    阿部智己

    2008年入局 福井局 札幌局 報道局科学文化部を経て新潟局に赴任。原子力取材などを担当

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