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村上 胎内 洋上風力 地元の動きは?サケ漁への影響は?

  • 2023年04月11日

NHK新潟放送局では「注目高まるエネルギー 新潟の未来は」と題して、エネルギーにまつわる新たな動きや今後の課題などについて考えています。3回目は「村上市・胎内市沖で進む洋上風力発電の導入計画」についてです。政府が脱炭素の「切り札」と位置づける洋上風力発電。地元からは地域経済の起爆剤になるという期待の声とともに、特産のサケ漁に与える影響がないか慎重に調査するよう求める声もあります。関係者の動きを取材しました。(新潟放送局記者 米田亘)

脱炭素に向けた「切り札」

政府が目指す「脱炭素」。経済産業省によれば2021年の時点で日本は電源の7割あまりを石油や石炭、LNGといった化石燃料に依存しています。

政府は太陽光発電や風力発電など「再生可能エネルギー」の割合を高める計画で、電源に占める再生可能エネルギーの割合を現在のおよそ20%から、2030年には40%近くにする方針です。なかでも洋上風力発電は風車の大型化で発電コストを下げることも可能とされ、政府はいわば「切り札」として注目しています。

いま国内では24か所が風力発電の「促進区域」や「有望な区域」などに指定され、「促進区域」の1つが村上市・胎内市沖です。

国などによりますと、洋上風力の設備は部品数が数万点、事業規模が数千億円に上る場合もあることから関連産業への波及効果が大きく地域の活性化にも寄与できるということです。

一方、地元からは地域経済の起爆剤になるという期待の声とともに、特産のサケ漁に与える影響がないか慎重に調査するよう求める声もあります。

計画されている発電の出力は最大70万キロワット。これは現在、公募の対象になっている海域の中では最大規模で、少なくとも7つの事業体などが参入を目指しています。国は令和5年度中にも事業者を決定し着工に向けた環境調査を進めていく計画です。

2022年から、国や県、地元の市長や漁協幹部、それに魚の生態調査に詳しい専門家などが集まり洋上風力発電の導入について本格的な議論を続けてきました。

洋上風力で “衰退するまちに活力を”

村上商工会議所の川崎久会頭です。

少子化や県外への人口流出で地域が活力を失っていると感じています。

村上商工会議所 川崎久 会頭
商店街そのものがなくなりつつありますし、午後5時、6時になって店が閉まると誰もいなくなってしまう。さみしいですね、やっぱりね。

村上市の人口は年々減少し、平成12年(2000年)からの20年で1万5000人あまり、率にして2割以上減少しています。

2022年10月、川崎会頭は市内の経済団体などと地域の活性化につなげるための協議会を結成。2023年3月には協議会のメンバーで県庁を訪れ、地元の声を国に届けてもらうよう知事に要請しました。

川崎会頭は洋上風力発電の建設や運転によって雇用が生まれ、活力を取り戻すきっかけになると期待を寄せています。

あの間に風車がならぶということですので。その風車の日常のメンテナンスでこの港から出港していくと。どのあたりか分かりませんけども対岸の方に基地港ができて、関連する会社が出てくるのではないかな。

能代港・洋上風力の作業にあたる海外の作業員

しかし風力発電のシェアが低かった日本では技術力の面などから部品や作業員の多くを海外に依存していて、地元企業の参入は容易ではありません。

それでも川崎会頭は作業員向けの宿泊施設の建設など間接的な経済効果に加え、飲食・観光施設の整備などを通じ、まち全体のにぎわいの創出にもつながることに期待しています。

どんどん過疎化が進んでいますし、高齢化が進んでいますし、若い人がいなくなっている。日本全国の市町村でも同じような問題がたくさんあるわけでしょうから、ここが1つのモデル地域になっていければ。

特産サケ漁 関係者からは心配の声も

一方、洋上風力の建設による漁業への影響を心配する人もいます。

地元でサケ漁を行う漁協の佐藤克雄組合長です。深刻な不漁が続くサケの資源を保護するため稚魚の放流も行っています。

三面川鮭産漁業協同組合 佐藤克雄 組合長
サケの稚魚は元気よく育ちましたよ。例年(稚魚を)安定的に放流して戻ってくるサケがいることを願っています。

これまでの国などによる協議会では風力発電の建設や運転によって海中で音が発生したり、ケーブルから「磁界」が発生したりすることが説明された一方、サケに与える影響については十分わかっていないとしています。

佐藤組合長は、国などとの議論のなかで風力発電の建設に一定の理解を示していますが、建設によってサケの遡上ルートが妨げられたり、遡上する数が減ったりしないよう慎重な調査を求めています。

一番の心配はサケの帰ってくる時期と(放流した稚魚が)北へ向かう時期ですよね。そこがどのように影響されるのか心配といえば心配。もっともっと多くのより詳細なデータをとるために調査を綿密にやらないと。

村上市は伝統的にサケ漁が盛んで、町なかには専門店が並んでいます。

何百年というサケの歴史のある、文化のまちですのでね。サケの食文化を絶やすことがないように切にお願いしたいですね。

今後に向けて

こうした地元からの不安に対応していくため、今後選定された事業者は環境調査を入念に行うことが求められます。事業者は漁業や景観などに与える影響を調べ、地元に報告します。

事業者が行う正式な調査の前段階として県はおととしから北海道大学と連携し、村上市内の川を遡上するサケにセンサーをとりつける調査を独自に実施しています。

「バイオロギング」と呼ばれるこの手法では、水温センサーや圧力センサーを通じて、サケがどんなルートを泳いでいるかがわかります。こうした調査が行われるのは新潟県沖では初めてで、サケの生態や遡上ルートの解明はまだこれからです。

調査を行っている北海道大学の宮下和士教授は正確な調査には時間をかける必要があるとしています。

北海道大学北方生物圏フィールド科学センター 宮下和士 教授
事前にそこの環境がどうなっているのかしっかりと調べる必要がある。欲を言えば10年程度。その間に環境が大きく変わることもありますので。(洋上風力発電を)作っている最中に同じ調査をする。そしてまた稼働している最中に同じ調査をする。何か調べるという話になったときに、サケの行動の変化がきちんと分かることがいちばん重要になってきます。

事業者の公募を担当している資源エネルギー庁はNHKの取材に対し「洋上風力発電の建設にあたり、地元の漁業者などの理解を得ることは必要不可欠なものと考えている。今後、決定される事業者とともに丁寧な説明を続けていく」としています。

  • 米田亘

    新潟放送局 記者

    米田亘

    平成28年入局。札幌放送局、釧路放送局を経て、新潟放送局3年目。新型コロナウイルスや災害、一次産業を中心とした経済取材を担当。

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