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新潟 知っておきたい原子力 運用面の安全対策

  • 2023年03月14日

シリーズでお伝えしている「知っておきたい原子力」。今回は東京電力・柏崎刈羽原子力発電所の運用面での安全対策についてです。
東京電力は福島第一原発事故を教訓に設備面での対策を進めてきましたが、事故を二度と起こさないためには設備面の対策とともに運用面での能力の向上が求められています。

現場責任者に負担集中 事故深刻化

事故時の対応を記録した東京電力のテレビ会議

福島第一原発事故の対応では現場の責任者に負担が集中し、情報の共有や判断が的確に行われず、事故を深刻化させる要因のひとつになったと指摘されています。
現地の緊急時対策本部にいた当時の吉田昌郎所長のもとにはバッテリーやトランシーバーなど機材の調達から原子炉の冷却に関わるものまであらゆる情報が集まり、判断を迫られる形になりました。結果として現場は混乱し、重要な情報が埋もれるケースもありました。

事故当時の体制 本部長にあらゆる情報が集中していた

原発事故の際の対応を記録した東京電力のテレビ会議の映像では、吉田所長が「なに言ってるかわからないんだよ」「ここでいきなり言うからさ、話、混乱するんだよ、いま重要な会議なんだからさ、調整したやつで言ってくれよ」などと声を荒げる場面もありました。

本社からの指示や問い合わせも 混乱に拍車

さらに、本社からの指示や問い合わせも相次ぎました。

ドライウェルベントできるんだったら、もうすぐやれ、早く!

小弁開いても、もう1弁あるからさあ、そっちは開いているのかい

現場の状況を十分把握しないまま、指示や問い合わせを繰り返す本社側に対して、吉田所長が「もういろいろ聞かないでください。ディスターブ(邪魔)しないでください」と叫ぶ場面もありました。

政府の事故調査・検証委員会の聞き取りに対し、吉田所長は事故対応を振り返り、次のような趣旨の証言を残しています。

吉田昌郎所長(当時)

これまで考えたことのなかった事態に遭遇し、次から次に入ってくる情報に追われ、重要情報を総合的に判断する余裕がなくなっていた。

事故の教訓踏まえ、緊急時の体制見直し

東京電力は事故の教訓を踏まえ、緊急時の体制を見直しました。事故対応や広報の担当など役割ごとのグループを作り、それぞれの権限を明確化。可能なものはグループに判断を委ね、所長が重要な判断に集中できるようにしています。

その上で緊急時の対応力を向上させるため参加者に事故のシナリオを知らせずに行う「ブラインド訓練」を繰り返しています。

また、柏崎刈羽原発では稼働中の発電所の運転経験のない運転員が3分の1以上に上っていることから、運転の中枢にあたる「中央制御室」と同じ操作を体験できるシミュレーターを使って訓練を行っています。事故を二度と起こさないために設備面の対策とともに運用面での能力の向上が求められています。

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