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新潟 知っておきたい原子力 原発事故と津波 その教訓は

  • 2023年03月06日

エネルギーをめぐる情勢が大きく変化するなか、政府はエネルギーの安定供給と脱炭素社会の実現を両立させるため、安全を最優先に原発を最大限活用する方針です。原子力やエネルギーにどう向き合っていけばいいのか。「知っておきたい原子力」と題して、原子力に関する話題をシリーズでお伝えしていきます。
今回は事故を悪化させる最大の要因となった津波とその教訓についてです。想定の3倍近くの高さに達した津波によって原子炉の冷却機能が失われました。事故のあと、東京電力が津波への対応を抜本的に見直すきっかけとなりうるタイミングがあったことが明らかになり、不確かさが大きい自然現象への向き合い方が適切だったのか、問われる結果となりました。

想定を超えた津波で事故が決定的に悪化

事故の前の福島第一原発

原発事故の前、福島第一原発で想定されていた津波の高さは6点1メートル。しかし、実際に押し寄せた津波は高さ約15メートル。想定を超えた津波への備えは無く、事故を決定的に悪化させました。

事故の前に津波対応を見直すタイミングも

完全に想定外と思われた巨大津波でしたが、事故の前、東京電力が津波への対応を抜本的に見直すきっかけとなりうるタイミングがいくつもあったことが事故のあと、分かりました。

その1つは政府の地震調査研究推進本部が事故の9年前の2002年に発表した「長期評価」です。長期評価は地震が起きる地域や発生確率を推計して公表するもので、太平洋の日本海溝沿いの福島県沖を含む三陸沖から房総沖のどこでも巨大な津波を引き起こす地震が起きる可能性を指摘していました。
一方、長期評価を巡っては、福島県沖で過去に巨大津波を引き起こす地震の発生が確認されていないことや海底の地質構造が異なることなどから、広い領域をまとめて扱うことを疑問視する専門家もいました。

長期評価に基づくシミュレーション 15.7mの試算結果 

もう1つのタイミングは、長期評価に基づいて東京電力の関連会社が津波のシミュレーションを行った時です。原発事故が起きる3年前、この会社は、福島第一原発に高さ15点7メートルの津波が押し寄せるという試算をまとめていました。主要な建物のある敷地の高さ10メートルを大きく超えるため、非常用の発電機など安全上重要な設備が浸水することになり、多くの対策が求められることを示していました。しかし、東京電力は長期評価の信頼性に疑問があるとして別の組織に研究を依頼し、具体的な対策に進みませんでした。

水素爆発後の福島第一原発

こうして結果的に巨大津波への備えが無いまま、2011年3月11日を迎えることになりました。東京電力は2013年にまとめた報告書で「自ら必要な対策を考え、予備の電源の準備などの対策が行われていれば、大量の放射性物質の放出という最悪の事態を防げた可能性がある。津波という不確かさが大きな自然災害に慎重に対処するという謙虚さが不足した」と総括しています。

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