『上中下越に佐渡(さぁ~ど~)ぞ!』新潟県出雲崎町
- 2023年02月20日
出雲崎町
出雲崎町は新潟県のほぼ中央に位置する海沿いの町です。日本海に沈むきれいな夕日を眺めようと、多くの観光客が訪れます。また、歴史ある地としても知られています。江戸時代の僧侶 良寛の出身地であり、生家跡に建立された良寛堂は2022年100周年を迎えました。大正時代から続く紙風船の生産量は日本一です。
町に残る蔵 本と出会える場所
そんな出雲崎で紹介したのは築100年以上の町屋の中にある蔵を活用した本と出会えるスポット「蔵と書」。外から見ると、木造の大きな建物。さらに、古民家風の空間を抜けた蔵の中には… 本がいっぱい! 古本を交え1000冊近くの本が並んでいます。
一角には、お米に夕日に海…「どこか、何かが新潟や出雲崎につながる本」も集められています。
こうした本が並ぶ本棚は、元々蔵にあったものを利用するなど昔ながらの蔵の味わいを感じることができる空間です。
蔵と言えば家の外にあるものをイメージする方も多いかもしれませんが、家と蔵が一体となっているのは出雲崎の独特の家のつくりなんだそうです。さらにこの蔵は2階建て。元々は町の薬屋の蔵として使われていたそうで、残されていた看板なども展示されています。
訪れる人は「外界と隔絶されていて没頭感がある」「本に夢中になれる」などと、ここでしか味わえない雰囲気も魅力に感じているようでした。
本屋のない町 本との出会いを
約2年前にこの場所を作ったのは、出雲崎町地域おこし協力隊の石坂優さん。石坂さんは「ふだん本を読まない人が本と出会える場所になってほしい」と話していました。
というのも実は現在、出雲崎町には本屋が一軒もなく、町や周辺地域の人たちが本を求めて集う場所になっています。石坂さんはこの場所をオープンするために、蔵を掃除し、本を集め、空間をいちからを作っていきました。その過程には苦労も多かったそうです。それでも、蔵の中にある椅子や机は寄付によるものを活用するなど様々な人たちの協力も得ながら「本でいっぱいの蔵」という珍しい空間が出来上がっていったそうです。
本との出会い 楽しんで
ここでは、ブックディレクターの経歴を持つ石坂さんならではのアイディアもたくさん感じることができます。例えば1階にあるのは「ホント(本と)の出会い」というコーナー。
並んでいる本は表紙が見えなくなっています。代わりに付けられた石坂さんが心に残った本の一節と写真で本を選びます。小説や実用書、絵本など様々なジャンルの本が混ざっていて、新しい本との出会いを楽しめます。
2階には「もう1冊買ってでもオススメしたい本」というコーナーがあります。
利用者の方にオススメしたい本を寄付してもらい、理由とともに展示しています。どんな人に読んでほしいかが一目でわかるようになっていて、本を開くと、読んだときのエピソードが書かれています。本を通して、本を読んでいる「人」とも出会える工夫だと感じました。
石坂さんは「来る人にとって、心の中に灯りが灯るような場所になってくれたらうれしい」と話していました。
制作後記
この「蔵と書」では2022年から一部の本の貸し出しを行っています。使うのは貸し出しカード。かつて学校で使った方は懐かしいと思う方もいるのではないでしょうか? こうしたところからも手作りの温かみを感じることができました。
この場所に通う人同士で、会話や新しい交流も生まれているそうです。
インターネットや電子書籍が普及し、書店が減ったり本を手に取る機会が少なくなったりしている昨今… この場所では思わず本を手に取り、読んだ本のことを誰かに話したくなる気持ちになりました。そんな、本を通して新しい出会いができる出雲崎町。みなさんも「さあど~ぞ!」