ページの本文へ

にいがたWEBリポート

  1. NHK新潟
  2. にいがたWEBリポート
  3. ゼロゼロ融資 返済開始へ 新潟の保証協会 無料で経営改善支援

ゼロゼロ融資 返済開始へ 新潟の保証協会 無料で経営改善支援

中小企業診断士の34歳職員に密着
  • 2023年01月24日

新型コロナウイルスで影響を受けた中小企業に対して、実質無利子・無担保で融資するいわゆる「ゼロゼロ融資」。県内でも総額4000億円以上が中小企業に融資されました。
一方、これはあくまで「借金」で、返済の開始はこの夏以降本格化する見通しです。
新型コロナで事業の環境が大きく変わる中、中小企業は経営改善を進め「稼ぐ力」を高めていく必要があります。こうした中、支援を進める新潟県信用保証協会の取り組みを取材しました。
(新潟放送局 野口恭平 記者)

放送した内容はこちら

7月がピーク!返済開始本格化する「ゼロゼロ」融資

新型コロナ対策で国が始めた「ゼロゼロ融資」。
民間の金融機関を通じて実質無利子・無担保で融資するというものです。

制度が終了した令和3年5月末の時点で、新潟県内の融資は2万7928件、融資残高は4440億円余りに上ります。

融資は企業の状況によって最大5年間据え置き=借金を返さないでよいという条件つきでしたが、徐々に返済が始まっています。

県信用保証協会のまとめでは返済が始まる「ゼロゼロ融資」の件数はこの夏に向けて増えていき、7月がピークになります。

信用保証協会は全国にある公的機関ですが、業務の柱は、中小企業が金融機関からお金を借りる際に「公的な保証人」になって、融資を受けやすくするものです。
「ゼロゼロ融資」でも協会が保証人になることがセットになっています。

県信用保証協会のHP

中小企業が倒産した場合などは「代位弁済」といって協会が借金を返済することになりますが、あくまで原則は借りた企業自身が返済することです。

そこで、中小企業が健全な経営を行い、借金も返せるようにしていこうと伴走型の支援を行っています。

コロナ以降赤字に 来年返済開始の婦人服店は

どのように支援を行っているのか。「中小企業診断士」の資格を持ち協会で支援業務にあたる小川奏(34)さんの活動に密着させてもらいました。

県信用保証協会 小川奏さん

小川さんが支援を行っている会社の1つ、新潟市中央区にある婦人服店「a.noble」。

社長の残間美保子さん。

残間美保子 社長

娘の畠山久美子さんと店を運営しています。

社長の娘 畠山久美子さん

平成3年に開業し、大人の女性向けのセレクトショップとしてさまざまなスタイルを提案し客の支持を得てきました。

一方、顧客の高齢化に加えて、新型コロナで客足が鈍り売り上げは減少。

令和元年度は黒字だったのが感染拡大以降、赤字に陥ってしまいます。

そうした中、「ゼロゼロ融資」のことを知り令和2年12月に500万円の融資を受けました。

返済開始が令和6年1月に迫る中、小川さんのアドバイスを受けて経営改善に取り組んでいます。

婦人服店 残間美保子 社長
小さい店としては生き残っていけないですね、どう考えていいかは。自分の考えが正しいとは限らない、失敗したくない時期なので、失敗しないでいいようにするには支援が欲しいですね。

無料で支援 ウェブや会計の専門家も派遣

信用保証協会の支援、仕組みはこうです。

対象となるのは協会の保証を受けて融資を受けている中小企業。

中でも、地銀や信用金庫など金融機関の支援が及びにくい、小規模な小売店などが対象として多くなっています。

企業からの要請を受けて支援を開始するケースもあれば、企業の状況を分析し協会側から打診するケースもあると言います。

支援が決まった場合、中小企業診断士の資格をもった協会の担当者がまず状況をヒアリング。

協会には、税理士やデザイナー、広告プランナーや管理栄養士など46人の専門家が登録されています。

企業の状況や社長の人柄なども踏まえて専門家を人選し、協会の担当者と一緒に支援にあたります。

協会の担当者による助言は無料、専門家による支援は3回まで無料です。

経営改善で「お掃除」?

最初に提案したのが「掃除」です。

経営改善で掃除?と思われる方もいるかもしれませんが、実は大事な取り組みなんです。

「整理」 必要なものと不要なものを分けて不要なものを処分
「整頓」 必要なものを整理して配置すること
「清掃」 職場を掃除してきれいにすること
「清潔」 整理~清掃を繰り返して環境を保つこと
「しつけ」これらを従業員に徹底させること

この5つの頭文字「S」をとって、「5S」と呼ばれ、業務の効率化や職場の安全確保などに必要な考え方として知られています。

この婦人服店では店舗2階に在庫置き場となっているスペースがありました。

「掃除」前の在庫置き場 ※小川さん写真提供

商品の品質に問題があるようなことはありませんでしたが、古い在庫がそのままになっていたり、どこに何があるのかなどが分かりにくい状態だったのです。

このため、小川さんの提案で整理・整頓・清掃を実施。打ち合わせをするスペースも確保しました。

「掃除」後の在庫置き場 ※小川さん写真提供

あわせてこのスペースを活用して「経営会議」を開催することを提案。

母と娘で運営しているこの会社、これまで会議は行っておらず「言った言わない」で混乱が起きることもたびたびあったと言います。家族経営の企業の場合、こうしたケース、結構多いそうです。

小川さんは「直近の売り上げ」「資金繰り」「今後のスケジュール」など確認するべき項目を一覧にして示し、会議の運営方法を指南しました。

在庫の管理には新たなシステムも導入しました。

導入した在庫管理のシステム
上級ウェブ解析士 本間大輔さん

提案したのは協会から派遣され「上級ウェブ解析士」の資格を保有する本間大輔さん。

大手のサービスを活用し商品在庫、顧客などを残間さんたちが手軽に管理できる仕組みを作ったのです。

これで「売れ筋」が可視化されその情報を仕入れに生かすなど、収益力の強化につながっています。

また、年明けには在庫置き場を「新春セール特設会場」にしてスペースを有効活用。

さらに、白い壁を使ってSNSに投稿する写真の撮影も始めました。

県信用保証協会 小川奏さん
当たり前のことでも5Sを徹底することで改善の基礎になりますし、形式的かもしれませんが経営会議を行うことで頭が整理されたりうやむやになっていた点を確認したりすることができます。

婦人服店 残間美保子社長
金融機関ともつきあいはありますが、経営改善を相談できるという関係ではなかったんです。直感で経営してきたところもありましたし、娘とは「言った言わない」でケンカすることも多々ありました笑。こうしていろいろ提案してくれてとっても助かっています。

娘さんの目標「オリジナルブランド」で収益アップを

そして、収益力の拡大に向けた最大のチャレンジが新ブランドの立ち上げです。

コンセプトは育児や仕事に忙しい女性に向けたオシャレなふだん着。

ひとりひとりの個性が輝いて欲しいと「ナナイロトイロ」というブランド名をつけました。

商品の開発はオリジナルブランドを出すのが夢だったという娘の畠山さんが担当。

ウィズコロナ・ポストコロナに向けた新規事業を支援する新潟市の「新事業展開サポート補助金」の申請を本間さんが手伝い、約200万円の補助金を得られることになりました。

インスタの広告も発売にあわせてやるつもりなのでいろいろな人に届けられるかなと思います。対象は絞りますか?ターゲットを40代とか50代とかまずは新潟の人とかにするんですかね。1月は多めに出して2月以降も継続的にしましょう。

ネット広告の出し方やプレスリリースについても小川さんや本間さんがアドバイスします。

作成中のプレスリリース

商品モニター役は小川さんが買って出ました。

そして、1月下旬。開発していた商品が届きました。

常連さんの反応も上々で今後、店やネットで販売を進める方針です。

社長の娘 畠山久美子さん
店頭のお客様もちろんですけどワンマイルウエアで上質なのがあんまりなかったのでインターネットでも売っていきたいです。新しいことができて楽しい。経営状況も変わるかなと期待しています。

婦人服店 残間美保子 社長
これからいろいろな色を増やすなどブランドを展開していきたい。スタート台に立った感じなのでこれからはじまるので身を引き締めてやっていきたいです。

小川さんも、売れ行きなどを確認しながら伴走支援を続けていきたいとしています。

県信用保証協会 小川奏さん
自社製品なので利幅もとれるところがあると思いますし、実際にどれくらい売れていくかというところも教えてもらいながら次の手を一緒に考えていくことができたらなと思います。

「あんまり知られていないんです…」

こうした支援、頼るところがない企業にとっては効果がありそうですが、現在協会の支援先は36社。今後80社まで対象を拡大することを目標にしています。

課題は認知度不足です。

県信用保証協会の品川哲也 企業支援課長に話を聞きました。

県信用保証協会 品川哲也 企業支援課長

Q「ゼロゼロ融資」の状況をどう見るか?

返済開始するお客様がこれからかなり増えてくる時期にかかっています。保証協会としてもコロナ禍がここまで長びくこと予想していなかったので、据え置き期間を3年間設けたものの、まだ経営環境厳しいところ多いと思う。このままでは据え置き期間が終わっても借入金の返済が厳しく、最悪のケース経営破綻につながってしまうケースも懸念しています。保証協会としては据え置き期間が終了する前に経営改善支援というお手伝いをしなければいけないと思っている。

Qなぜ保証協会が?

取引している金融機関と常時相談できる、あるいは商工会とか商工会議所とお付き合いがあればいいんですけど、経営上困ったことがあってもどこに相談していいか分からないという会社も多いです。金融機関などの支援の手が届かないところをケアしていく必要があります。

Q課題や今後の対応は?

保証協会が経営支援の取り組みをしている認知度はまだまだ。このため、『プッシュ型』と言っていますが保証協会の方から直接事業者に電話をしたり、金融機関などと調整したりする形で、こちらの方から積極的に提案していく形で動いています。また、融資を受けてる企業の全体状況を把握して、集中的に支援していく必要がある企業の精査も進めたいと考えています。

相談窓口はこちら 県信用保証協会本店営業部 025-210ー5150

県は「借り換え制度」も

このほか、県は「ゼロゼロ融資」の返済が本格化するのを前に、1億円を上限に融資の借り換えなどを支援する「新型感染症・物価高騰等対策伴走支援型資金」という制度を始めました。

▼直近1か月の売上や売上高営業利益率が前年同月より5%以上減少するなど影響が出ているほか、▼収益力の強化に向けた計画書を作成した企業が対象です。

今をしのぐためにこうした制度を活用することも有効ですが、それでも借金は借金。
いつかは返さなければいけません。

新型コロナが県内で確認されてからまもなく3年がたちます。

岸田総理大臣は新型コロナの感染症法上の位置づけについて、原則として2023年の春に、季節性インフルエンザなどと同じ「5類」に移行する方向で検討を進めるよう、加藤厚生労働大臣らに指示しましたが、社会・経済の状況がどのように変わるのか見通せません。

環境に応じて、ビジネスモデルを見直し、稼ぐ力をどのように維持し高めていくか。

中小企業の努力とともに、支援をいかに充実させるかも問われそうです。

  • 野口恭平

    新潟放送局 記者

    野口恭平

    2008年入局 徳島放送局、報道局経済部を経て新潟放送局へ。幼いころから南魚沼市で年末年始を過ごす。現在は経済を担当。取材にいかすため、私も中小企業診断士の勉強中。。

ページトップに戻る