ページの本文へ

にいがたWEBリポート

  1. NHK新潟
  2. にいがたWEBリポート
  3. 妙高 赤倉温泉 コロナ乗り越え インバウンド回復への期待は

妙高 赤倉温泉 コロナ乗り越え インバウンド回復への期待は

「ことしにかける」新潟県ゆかりの人たちへのインタビュー
  • 2023年01月12日

「ことしにかける」の第2回は、妙高市・赤倉温泉で外国人観光客向けのスノースポーツスクールを営むラングトリー望さん。オーストラリアでスキーインストラクターとして活動した人脈を生かし、10年以上にわたって外国人観光客を赤倉温泉に呼び込む活動を行ってきました。
 しかし新型コロナウイルスの影響で昨シーズンまで2年間、外国人観光客はほぼゼロに。入国制限が緩和されてはじめてのシーズンを迎えた今、コロナを乗り越えた今後への思いを聞きました。(新潟放送局 阪本周悠)

放送動画はこちら

赤倉温泉でスキースクールを設立した経緯は

ラングトリー望さん

こちらは2009年12月に始めた事業です。

元々私は東京生まれの雪国育ちで、大学の時にスキーインストラクターの資格を取りました。2000年代の初め、オーストラリアでインストラクターとして活動していた中で、現地の人から「日本のスキー場はどういう感じなのか」と聞かれることがあり、そのときに、もしかするとオーストラリアの方たちを日本にお連れできるかもしれないと思ったのがはじまりです。

2003年には北海道のニセコで、インバウンドの取り組みをお手伝いさせていただいていました。6年ほど携わっていましたが、北海道は初心者の方やお子様にとっては雪がしんしんとしていて気温が低い場所なので、本州の中でどこか海外の方にご紹介できるスキー場がないか、と探していました。そのときに赤倉温泉地区のスキー場の取り組みと、私の思い描くビジョンがマッチングしたので、この赤倉に来てスクールを始めました。

どのくらいの方がスクールを利用されている?

ラングトリー望さん

2009年の一番初めのシーズンは私も含めて従業員13人という小さなグループでした。ことし14年目となり、いまでは所属するインストラクターが130人の体制です。
新型コロナの感染拡大前には年間およそ8500人のお客様が訪れていて、それぞれの方が7泊など長期で滞在するので、シーズン通してかなりのお客様がいらっしゃいます。

このスクールの特色は

ラングトリー望さん

スノースポーツスクールと聞くと、どうしても「学ぶところ」というイメージが強いと思いますが、私たちのスクールはエンターテイメント性が強い。学ぶのはもちろん、それに加えてカスタマーサービスにしっかり力を入れています。

インストラクターとお客様が過ごす時間は、1日少なくとも3時間から7時間ほどあります。この時間が楽しくなくては、日本を訪れた時の思い出がなかなか楽しいものにならないと思っているので、滞在中いかにお客様に楽しんでいただけるかを考えています。1人1人来た理由や求めるものが違うので、そこをまず知って、それに合ったものを提供することに力を入れています。

また、長い付き合いのお客様がすごく多いことも特徴です。3歳からお付き合いがあるお子さんが、もう大学生を卒業して社会人になっているという例も。まさに世代を乗り越えたような形でお付き合いがあります。

年の恒例の行事として、おじいちゃんおばあちゃんの家に帰ってくるような形で、お客様が来てくださる。スタッフ一同すごくやりがいを感じています。

私たちスタッフのところにめがけて、人にめがけて、つながりを求めてくるというお客様がすごく多い。1回で終わるのではなく、リピーターという形で毎回同じ先生の所に来るお客様が多いですね。

新型コロナウイルスによる影響は

ラングトリー望さん

新型コロナの影響が出ていた昨シーズンまでの2年間は、一言で言うと頑張って耐えた期間でした。お客様の方からインターネットを通し、「早く行きたいから待っててね」とお話いただけるのをすごく励みにしていました。

海外の方向けに事業を行う私たちのスクールにとって、入国制限でお客様も移動ができない2年間はいわば「鎖国状態」でした。経営としても、大丈夫だとは言えない状況でした。しかし私も従業員を抱えてやっている身ですので、仕事をなくしてはいけないという気持ちがあり、何ができるだろうと考えていました。

その中では夏に地元の子どもたちなどが参加するキャンプも始めました。英会話学習に加え、色々なアクティビティを通して子どもたちがすごく楽しんでくれました。私たちはこの赤倉の土地で英語もできる、日本語もできるスタッフを抱えていて、地元の子どもたちに何ができるだろうかなと思って始めたことでもあります。

また、用具のレンタルをするときの受付についてIT化を行うなど、コロナの感染対策として接触を減らせる部分について減らしていくことにも取り組みました。

レンタル用具にバーコードを貼り付け、IT化を行った

今シーズンの様子は

ラングトリー望さん

ことしは例年に比べ、シーズン初めにかなり雪の量が少なかったです。スキー場によってはオープンが予定通りにできなかったところもあり、出だしは大変でした。

しかし2019年の12月と先月(2022年12月)で、お客様の数やレッスンの稼働状況、売り上げを比べてみたところ、98%ぐらいまで戻ってきていました。雪の状況が通常通りであったなら、コロナ前と全く同じ、もしかするとそれ以上の観光客が戻ってきていると思います。

お客様からは、第一声に「待ってました」という声を頂きます。「本当に行きたくて待ってたんだよ」と皆さん笑顔でいらっしゃるので、すごく嬉しいですね。

今後への期待は

ラングトリー望さん

実は日本の入国制限が解除された時期がちょっと遅かった。今シーズン、待ち切れなかったお客様が、北米のリゾートに行き先を変更されている状況があります。

そういった方も含めて、来年からは妙高のうちのスクールにお戻りいただけると思うので、来年以降は今年の状況よりも上向きにいくのではないかなと思っています。

お客様の伸びしろはあると思いますが、いきなり急拡大してしまうとサービスの質を保てなくなってしまう。なので、急激に大きくしようという気はないです。ですが、なるべく多くの人たちに、質を下げずにサービスの提供ができるよう取り組んでいきたいです。

また、地元のコミュニティから外国人向けのサービスについて意見を聞かれることもあります。私たちの一番の強みはお客様との距離がかなり近いこと。じかに聞いたことをすぐにコミュニティに戻すことができます。

地元のコミュニティとインバウンド、お互いにとってコミュニケーションが取りやすい場所になると、赤倉が受け入れ先としてもっと明るい場所になるのかなと思っています。できることをお手伝いしたいです。

ページトップに戻る