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大雪の新潟 国道で起きた立往生を検証 関越の教訓は?

  • 2022年12月28日

12月18日からの記録的な大雪で長岡市や柏崎市などの国道17号や8号では激しい渋滞や立往生が、断続的に起きていました。県内では2020年にも関越自動車道で大規模な立往生が起き対策が講じられてきたはずでした。なぜまた繰り返されたのか、改めて検証しました。
(取材班 記者:豊田光司 野尻陽菜 草野大貴 藤井凱大 PD:井口泰介)

放送した特集はこちら

立往生の時系列は

こちらが取材でまとめた主な動きです。

①18日午後4時45分ごろから東日本高速道路が雪による事故のため関越自動車道などで通行止めを始めます。

②雪が降り続いた翌19日の午後10時ごろ北陸地方整備局が長岡市内での車の滞留を確認しました。

③20日午前5時すぎ、渋滞や立往生に巻き込まれたドライバーの安全確保が必要だとして県が自衛隊に災害派遣を要請。

④20日午前6時、北陸地方整備局が国道17号と8号を全面通行止めにします。

⑤20日午後、自衛隊が長岡市で活動本格化。

⑥21日午前8時、国道17号と8号の通行止めが全面的に解除されました。

このうち柏崎市の国道8号の現場については一時、800台あまりの車が巻き込まれたことが分かっています。一方、17号についてはその規模や実態は明らかになっていないのです。

国道17号では何が 

国道17号では何が起きたのか。私たちは現場で支援にあたった人や立往生に巻き込まれた人たちを徹底取材しました。

長岡市にあるアウトドアショップ。ここに設置された防犯カメラが国道17号の立往生の様子を捉えていました。

こちらは20日朝の映像です。画面右上に映っている国道17号の南向きの車線に注目してみると、このトラックは動き出すまでに1時間半ほどかかりました。

20日の午前10時すぎ、店の近くでタイヤが空回りし、動けなくなったトラックを助けにいったというアウトドアショップの店員、青木洸さんです。

青木洸さん
前日から上り(南向き)が全く動いていなくて、下り(北向き)はちょっとずつ動いていたが(店に)来て除雪しようとした時に“あれトラックが動いていない” というので、店長と助けに行きますと。

雪かきに使うシャベルやタイヤに敷くはしごを持ち腰ほどの高さの雪を進みながら国道に入りました。

そのときほぼ同じ場所で立往生に巻き込まれていた店員の矢澤雄太朗さんです。

矢澤雄太朗さん
小千谷方面(南向き)向かっている時、店の真横で自分も立往生にあってしまって目の前の交差点で大型車が立往生してしまっている状態でした

矢澤さんが撮影した写真では国道に入ってきた大型トラックが、曲がりきれずに交差点をふさいでいる様子が分かります。

また道路は雪が降り積もり、いたる所にわだちやくぼみができていました。

20日午前6時ごろ、SNS上にはドライバーの悲痛な声が投稿されていました。

そもそも立往生はなぜ起きたのか。この店の防犯カメラには前日、19日の映像も残っていました。

午後5時すぎ、国道17号では速度は遅いものの車は流れています。

しかし、およそ40分後。南に向かうこちらのトラックが止まります。1時間25分ほどこのトラックはほぼ進まずにこの場に止まっていました。

このころから相次いで立往生している様子をカメラは捉えていて、最長で4時間半止まっている車もありました。

並行するように走る関越自動車道では雪の影響で前日の18日から通行止めが行われていたため、
トラックなどが国道に集中したとみられています。

急速に雪が降り積もるなか19日の午後6時ごろからはアウトドアショップの10キロほど南にある「越の大橋」付近で、集中的な除雪のため通行止めを開始。

北陸地方整備局ではこれも立往生の原因になった可能性があるとしています。

さらに小千谷市では北向きの車線で立往生が起きていました。

「越の大橋」から南に6キロほど離れた小千谷市の石材店です。店主の横井順一さん。

19日の夜からトラックを中心に車が渋滞し、同じ車が長時間止まっていたといいます。

横井さんは15人ほどのドライバーに菓子を差し入れました。

自宅のトイレも開放し看板を設置しました。

横井順一さん
だいたい7時間くらいは車にいるっていうドライバーさんがいて、なかなか進んでいなかったのかなと

小千谷市内の17号でも立往生は複数の地点で起きていました。

ラーメン店 店主
そこの交差点がまるっきり詰まって、向こうにもいけないし向こうにもいけない、どっちにもいけない。右側(北向き)も4~5時間に3~4mとか

国道17号の通行止めが解除されたのは21日の午前8時。
通行止めの開始から実に26時間がたっていました。

関係機関の連携不足や情報発信に課題

今回、何が事態を悪化させたのか。

浮かび上がったのが、
▽急速に降り積もる雪に対応が追いつかず広報など情報提供も不足したこと
▽そして対応にあたる関係機関の連携不足です。

北陸地方整備局では19日正午ごろに国道17号で故障車が発生し、車を立ち退かせようとしているうちに
道路に雪が積もり、除雪のために通行止めにせざるを 得なくなったということです。

この通行止め開始の情報については、ドライバーやメディアへの広報をしていませんでした。

また最初に長岡市内での渋滞の発生を確認してから、全面的な通行止めにするまでに8時間かかりました。

これについて北陸地方整備局は理由について検証しているとしたうえで
「最初の段階では、完全に立往生していたわけではなく、断続的に動いている状況だった。結果として車を流しきれなくなり通行止めにした」と説明しています。

2020年関越自動車道の立往生の教訓は

2020年の立往生を契機に北陸地方整備局と東日本高速道路は、大雪で長時間の渋滞などが予想される場合には、並行する国道と高速道路を同時に止めることも含めちゅうちょない通行止めを実施するという方針に2021年、転換していました。

しかし今回、北陸地方整備局と東日本高速道路は、国道と高速道路の同時通行止めについては協議しなかったということです。

その結果、国道に大型車両が集中し、立往生につながったとみられています。

今後、北陸地方整備局と東日本高速道路には今回の対応の検証にとどまらず、着実に実行することが
求められていると思います。

一方で運転する私たちにもできることがあります。大雪が予想される場合は不要不急の外出を控えること、そして荷主の企業は配送の日程を調整するなど、立往生を防ぐために私たちの行動も変えていく必要があります。

  • 豊田光司

    新潟放送局 記者

    豊田光司

    2017年入局。大阪局を経て2020年11月から新潟局に、2021年11月から長岡支局で中越地方などの取材を担当。除雪が日々の運動です。

  • 野尻陽菜

    放送部 記者

    野尻陽菜

    2020年入局。警察・司法担当。大学では社会学を専攻。

  • 草野大貴

    新潟放送局 記者

    草野大貴

    徳島局から2022年8月に新潟に赴任。今月、4年ぶりにスタッドレスタイヤを購入した。

  • 藤井凱大

    新潟放送局 記者

    藤井凱大

    2017年入局。函館放送局、札幌放送局を経て、この夏に新潟放送局に赴任。
    現在、県政キャップとして行政の取材などを担当。

  • 井口泰介

    新潟放送局 PD

    井口泰介

    井口泰介 2020年入局 ラジオセンターから新潟放送局へ。新潟ではJR只見線に関する番組などを担当。

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