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需要落ち込むコメ 生産法人にアンケート調査

  • 2022年11月25日

「高齢化による人手不足」「コスト削減も限界あり」。
コメを生産する農業法人の切実な声です。実情と課題を考えようとNHK新潟放送局は上越市と南魚沼市の農業法人にアンケートを行いました。コメの需要が落ち込む一方、ロシアによるウクライナ侵攻の影響などで世界的に小麦の供給が安定せず、国産の小麦に注目が集まっていますが、アンケートの結果、小麦などコメ以外の作物を作付けする意向がある法人は全体のおよそ1割でした。(新潟放送局記者 米田亘)

注目の「国産小麦」 コメ生産者は転作に慎重姿勢 

アンケート調査はコメの需要が落ち込むなかで農業法人の実情と課題を考えようと、NHK新潟放送局が
実施。県内で最も農業法人の数が多い上越市とコメづくりがとくに盛んな南魚沼市のあわせて237の法人を対象におこない、144社から回答がありました。

このなかで「来年、麦や大豆などを新たに作付けする意向」をたずねたところ、「検討している」と回答したのは15社で、回答全体の10.4%、およそ1割でした。「検討していない」は93社で64.6%、「すでに作付けしている」が34社で、23.6%でした。

多くを輸入に頼る小麦や大豆などはロシアによるウクライナ侵攻などの影響で世界的に供給が安定せず、そうした状況をふまえて国内産の小麦は取引価格が上昇しています。

作付けを検討している法人はその理由について「国内産への期待が高まっているから」とか「日本の食料自給率を上げたい」とする一方で、「検討していない」とした法人は「作業員の高齢化が進み、コメ以外の作物を生産するための人手が足りない」、「新たな設備投資が必要になり、費用に対する効果が見込めない」などと回答し、多くの法人が新たにコメ以外の作付けに踏みきれないとしています。

<アンケートで寄せられた声(一部)>
【作付けを検討】
・米価の先行きが不透明なため
・国内産への期待が高まっているから
・日本の食料自給率を上げたいから
【検討していない】
・作付けするための設備がない
・米の生産が主力のため、他の作物に手が回らない
・湿田が多く、適地でない
・大豆・麦等の穀物類の作付け経験が少ない
・高齢者が主体であり作業面に無理がある
・以前に大豆、麦を作付したが労力に対する収量が合わない

肥料価格の高騰 79%が「影響受けた」

また肥料の価格の高騰について「影響を受けた」とする法人は「大きく影響を受けた」「影響をやや受けた」をあわせて114社、回答全体の79.2%にのぼり、アンケートでは「ことしの分は去年確保しているため、影響を受けるのは来年以降になる」との声も寄せられました。

<アンケートで寄せられた声(一部)>
・仕入れ先の検討や資材の変更等で対策をしているが、効果が少ないと感じる
・経費増加により、経営を圧迫
・販売価格も少し値上げした
・肥料を減らさざるを得なかった
・昨年購入した肥料を使用しているが、来年が心配

雇用や資金繰りなどの悩みも

アンケートでは「経営面での悩み」についても複数回答でたずねたところ、「肥料代・燃料費などの高騰」「コメの価格が低い」などが多く寄せられました。

一方で、「雇用・求人・働き手の確保」や「資金調達・資金繰り」、「会社の仕組み・組織作り」など経営面での中長期的な課題や、収益性を高めるための「コメの売り先」についても、悩みの声が寄せられました。

コメの売り先 JA通さず直売したい意向が反映

この「コメの売り先」について「5年後に販売先をどう配分していきたいか」をたずねたところ「変化なし」が59件と最も多かった一方で「個人への直売を増やす」と回答したのが47件、それに伴い40件が「JA の割合を減らす」と回答しました。

全国の生産者の約4割が売り先としているのがJAです。 JAは毎年、その年の収穫量や需要の見通しなどに基づいて“仮渡し金”という基本価格を決めていて、契約している農家に売り上げとして支払っています。私たちの生活の根幹・食を支えるため、生産者の収入を保証するためのしくみでもあります。

 ただし、近年はコメの消費量の減少などで仮渡し金は低調に推移しているため、経営が厳しくなっている生産者が増えています。 こうした中、近年増えているのが生産者の「直売」です。 生産者はJAなどを経由せず、インターネットや直売店などで コメを直接販売。価格も自由に決めることができます。 一方で、販売の手間がかかったり、売れなかった場合などのリスクも負うことになります。

JAを通じた販売、直接販売にはそれぞれメリットとデメリットがありますが、新潟のコメ生産者が少しでも高い収益を得るために直売に挑戦したい意向がみてとれました。アンケートでも、多くの悩みの声が寄せられました。

<直売に関しての悩み>
・直売をしたいが販売のノウハウがない 
・ホームページなどでは集客力がなく、注文が少ない
<売り先に関しての悩み >
・コメの価格が上がらないと法人経営が成り立たない 
・JA以外の販売先を探す余力がない

気になるニュース 価格やコストなど幅広い関心

私が日ごろから伝えているコメのニュースについて、生産者がどんなテーマに関心を持っているのかもたずねました。

その結果、ここでも「肥料・燃料費の高騰」や「米価・仮渡し金」、「コメの需要減少」「担い手の減少や高齢化」といった経営面の悩みに直結したニュースに高い関心が寄せられました。

これらのテーマを中心に、少しでも消費者・生産者のみなさんに速くて深い情報を届けられるよう、取材を尽くしたいと思います。

専門家「状況応じ コメ以外への大胆な転作も」

新潟食料農業大学 武本俊彦 教授

アンケートの結果について、農業政策などに詳しい専門家は農地の集約化や法人化が進むなかで、生産者はコメどころ新潟であっても、「コメだけに頼らない」柔軟な経営が求められると指摘しています。

新潟食料農業大学 武本俊彦 教授
小麦などに転作しないのは新潟のコシヒカリなどが他の銘柄と比べても価格などの面でまだ優位な存在ということもあるのではないか。「ウクライナ情勢や円安がそこまで長続きしないのではないか」という見立てのもと、コストの高い小麦用の農業機械の導入に慎重になっている面もあるだろう。
ただ、これだけコメをめぐる環境が大きく変わるなかで、別の作物の転作に向けた検討や準備は重要だ。コメだけに頼って危機感を持たなければ、転作への大事な移行期間を無駄にしてしまう。コメどころとして、コシヒカリなどの優良ブランドを磨き上げていく努力は今後も必要だが、場合によっては大胆に転作をしていくことは、経営という観点からはあり得る。

  • 米田亘

    新潟放送局 記者

    米田亘

    平成28年入局。札幌放送局、釧路放送局を経て、新潟放送局3年目。新型コロナウイルスや災害、一次産業を中心とした経済取材を担当。

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