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スケボー迷惑行為減らせるか 新潟市 新パークへの期待

  • 2022年06月20日

「オリンピック以降、新潟駅でスケボーをする少年が増えて毎日通報が来るので非常に困っている…」。2021年夏以降、警察官からたびたびこのような話を聞いた。新潟県村上市出身の平野歩夢選手の二刀流でも話題になったスケートボード。 多くの若者が魅力を感じている一方で、 禁止された場所で滑る行為が問題となっている。競技をする若者の思いは…。そして関係者はどのように若者のマナー向上を図ろうとしているのか。現場を取材した。 
(新潟放送局 記者 阪本周悠)

夜の新潟駅  スケボー少年たちの姿

この取材を始めたのは2021年11月。冒頭の警察の話を聞いて関心をもったからだ。 

徐々に冬の足音が聞こえてきた11月中旬。夜7時すぎ。 
実際に現場を見てみようと新潟駅前を数度にわたって訪れた。 

少しどきどきしながらベンチに座っていると、ガラガラと大きな音をたててスケートボードに乗った少年たちが現れる。

人の近くで滑る若者(撮影は令和4年6月)

人数は5、6人だろうか。歩く人を縫うように、スケートボードで走行を始めた。 

人が座っているベンチに飛び乗って技を決めることも。 
滑っているのはベンチに座る人から1メートルと離れていない場所。危険だ。

新潟警察署では2021年夏以降、管内でスケートボードに関係した通報が増えてきたという。 
場所は多くの人が行き交う新潟駅の南口や繁華街の万代地区周辺。 通報はその危険性や騒音などに関するものだ。

通報件数をみると東京オリンピックのころから急激に増加。 
10月にはひと月で100回を超えた。 

新潟は雨や雪が多いため冬の間、通報件数が減っていたものの、最近はまた増加しているという。

警察官

警察が駆けつけるとやめるけど、場所を変えるだけ。 雨の降っていないときには毎日のように通報が入り交番の業務にも影響しかねない。

傷の残る壁やベンチ 実害も

通報だけでなく実際にスケートボードによって被害が出ている場所もある。 
新潟市中央区の万代シテイバスセンターだ。

敷地内はスケートボードの滑走が禁止されているが、壁やベンチが傷ついたり汚れたりする被害が出ているというのだ。 

直接注意を繰り返したが行為は収まらず、11月には滑走を注意した施設の社員が少年に暴行を受ける事件も起きた。

新潟交通 髙井俊幸 事業部長 

新潟交通 髙井俊幸 事業部長 
「バスセンターのリニューアルのタイミングで全て白く塗り直した場所ですが、 スケートボードによる黒い傷や角の削れ、へこみが出来ています。 小さなお子様のわきを走り抜けたり、ひやっとするような場面も多々ありました。楽しみ方が様々あるのはわからないこともないですが、人が迷惑を感じてしまうようなところでスケートボードを利用することはやっぱり間違いだと思います」

なぜ若者たちは禁止された場所で滑るのか、記者が本人たちに聞いてみると。

駅の南口で滑る若者

駅の南口で滑る若者
「路面がいい。それに自由にやりたい」

街中にある段差などの地形を利用して滑る「ストリート」が原点とされるスケートボード。 
自由」という言葉はスケートボードの文化を語る上で重要なキーワードだ。 

しかし物的な損害や危険性は管理者や利用者にとって看過できるものではない。 
「ストリート」と迷惑行為のバランスとは…。難しさを感じた。

新潟市にスケボーパーク建設へ

そんななか、新潟県は今年度中に新潟市中央区にスケートボードパークを新たに建設すると発表した。

県はオリンピックなどによる人気の高まりや 競技団体からの長年にわたる要望を背景として挙げる。 
新しいパークが出来ることで問題となっている迷惑行為はどうなるのだろうか。 

今回、パークの建設に向けた活動を行ってきた中心人物を取材してみることにした。

新潟市中央区でスケートボードショップの店長を務める富永快さん。 
出身は魚沼市。6歳の時にスケートボードに出会い競技歴20年を超える大ベテランだ。

新潟市に移り住んだ時に競技環境が整っていないと感じ 「新潟市スケートボード普及協会」を立ち上げて建設に向けた活動を行ってきた。

富永快さん

新潟駅南口で撮影した動画を見てもらうと。

富永さん 
「あれだけ近いところに人がいるのでもし板があたってしまったらけがをしてしまう。 わきまえてやるべきだという気がします。ストリートの文化というのはスケートボードが生まれた大事な場所なので大切にしなきゃいけないと思いますけれども、迷惑をかけたり被害を与えてしまったりするようなタイミングでは避けたほうがいいと思います。そこは人間として、モラルを持ってほしいです

新しいパークが出来ることにより迷惑行為が今よりも減るのではないかと富永さんは考えている。

富永さん
「パークができてもまだそういう行為が続くようであれば世間一般の方からの非難は増えてしまう。そういう意味で彼らは浮いてくると思う。パークの建設はそれを考え直すいいきっかけになるんじゃないかと思ってます。イケてるヤツだったら見せるところだけ見せてあとはパークでみんなで楽しく滑るでしょというのがなんとなく理解できると思う。こうした行為が減ることを期待します」

学びの拠点になれるか  先輩 南魚沼市のパーク

富永さんは新しいパークが競技者たちの「学びの拠点」となることを期待している。 
参考となるパークとして挙げるのは南魚沼市にあるスケートパークだ。

長年の要望によって建設された南魚沼市スケートパーク。 
路面が全面コンクリートなので滑っているだけで気持ちがいいという。 

初心者から上級者まで誰もが楽しめるパークだといい、取材に行った日も小学生をはじめ幅広い年代が訪れていた。

競技者

「年代関係なく楽しめるって感じです。ここにくればみんながいて楽しめる。人を引き寄せるいいパークです」

競技者

「地元の人が集まって。顔知れた感じで、みんなでわちゃわちゃ楽しんでる感じです。 また、土日になると県外から人も来るので県を超えての交流もありますね」

富永さんも完成当初から通ってきたこのパーク。 
幅広い世代と交流することで得られたものがあったと振り返る。

富永さん
「上下関係とか、ちゃんとあいさつしたりとか、順番守って滑ったりとか、 仲間が技を決めたら喜ぶとか。パークに来ることで技術を磨くだけじゃなくコミュニケーションの能力も身についた。スケートボードを通していろいろなことを学び、人間性が上がると思う」

新潟市のパークもこうした「学びの拠点」となり、 迷惑行為が問題となっている競技者たちにも訪れてもらうことで彼らのマナーやモラルの育成につなげたいと富永さんは考えている。

富永さんは新しいパークへの期待を語った。

富永さん 
「パークが新しく出来ることによって小さな子もスケートボードを始めてくれるかもしれないし、 俺たちみたいな若い世代や上の世代もパークに来ると思います。 いろんな世代が交流することによってスケートボードを軸にした、いいカルチャーが新潟でも生まれると思うので、そこにすごく期待してます」

新潟にスケートボード文化根付くか

スケートボード文化が育つことへの期待と、迷惑行為という課題。新潟ではいま両面からスケートボードへの注目が高まっている。 

迷惑行為、危険行為を行う人は一部で、スケートボード全体の問題ではない。 富永さんが話すように、個人のマナーやモラルが問われる問題だ。 

「ストリート」で滑る楽しさを理解しているからこそ、 禁止区域で滑る迷惑行為について 富永さんをはじめとする競技者は複雑な思いを抱えていた。 

オリンピックは「スポーツ」としてのスケートボードが受け入れられるきっかけとなった。 

さらにスケートボードが「文化」としても受け入れられるためには、環境の整備とともに競技者の意識向上が求められる。平野選手の出身地 新潟だからこそ、この課題を乗り越えていってもらいたいと感じた。

  •  阪本周悠

    新潟放送局 記者

     阪本周悠

    令和3年入局。警察・司法取材を担当 公共交通や都市計画などに関心 日本酒が好き。

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