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十日町「地域おこし協力隊」先進地 カギ握る里山プロジェクト

  • 2022年04月25日

    田舎で自分の夢を追いながら生活したい!
    そんな人の地方移住を促し、地方の活性化につなげようと国が始めた「地域おこし協力隊」。
    新潟県内で活動する隊員は令和2年度の時点で213人と全国で4番目、実は「受け入れ大県」なんです。
    特に十日町市は定住者が増えるなどモデルケースとして全国の注目を集めています。
    その秘けつは地域のニーズと隊員の思いをマッチさせること。
    協力隊の活動の様子や支援団体の里山プロジェクトを取材しました。

    (新潟放送局 記者 野口恭平)

    【豪雪地 山あいの集落で】

    県内有数の豪雪地・十日町市の山あいにあり、約60人が暮らす田野倉地区。

    3月、地区にある集落センターを訪れました。

    施設では地域のお年寄りが集まり、健康増進のため、体を動かしたり、ゲームをしたりする交流会が行われました。

    南雲歩さん

    盛り上げに一役買っていたのは、地域おこし協力隊の南雲歩さん。

    3年前の8月、県内の別の地域から移り住みました。

    隊員たちは自治体から委嘱を受け、最長で3年間、生活費などの支援を得ながら地域の活性化に取り組みます。

    国が1人あたり年間480万円(今年度)を自治体に支援します。

    南雲さんも、月16万円を受け取りながら、有効活用されていない棚田でコメ作りをしたり、地域の草刈りや祭りを支えたりしてきました。

    【酒造りの夢を追う】

    麹づくりの様子

    もともと酒蔵で働いていたことから、自身で作ったコメを使った酒造りをしたいと協力隊に応募した南雲さん。

    すでに自分で造った麹の販売にも挑戦しています。

    隊員に採用され、十日町市で過ごすなか、自分の夢をかなえるだけでなく、いかに地域と向き合っていくかが大事だと気付いたといいます。

    南雲歩さん
    「お米作りを教えて頂きたいなということで地域おこし協力隊を選び、棚田でお米を作っています。皆さん親身になって世話して頂く中で、事業を始めることで恩返ししていきたいと思うようになりました」

    【地域のニーズとのマッチがカギ】

    制度が始まった当初から協力隊を受け入れていた十日町市は、協力隊の活動をきっかけに
    移住者が増えたとして池谷という集落が「奇跡の集落」と全国から注目を集めました。

    その後、協力隊を85人受け入れていますが、定住したのは46人(約70%)で、先進地として知られています。

    ここで協力隊の経験者が中心となって立ち上げた法人が「里山プロジェクト」。

    里山プロジェクトの事務所 元隊員が中心メンバー

    隊員にどのような活動を行ってほしいか集落ごとに聞き取るだけでなく、事前に選考を兼ねた体験プログラムも開催しています。

    また、隊員に対しては、活動が地域のニーズに合っているかどうかなど、採用後も毎月、アドバイスを送っています。

    研修の様子

    法人代表の小山友誉さんも元協力隊。

    隊員は夢を追って地方に来るケースが多い。

    一方で、自分のことばかりでは地域のためにはなりません。

    小山さんは「一番の主役は地域だ」としつつ隊員と地域のニーズをいかにかみ合わせていくかが、
    成功の鍵を握ると力を込めます。

    小山友誉さん

    小山友誉さん
    「協力隊になってから『こんなはずじゃなかった』となったり、地域の方も『あの人はちょっと帰ってほしいな』と思ったりすることもあるがそう簡単にはできない。協力隊は『お客様』から『地域の人間』にどれだけ早くなるかがカギになってくる

    【「卒業後」の支援まで!】

    さらに、「期間限定」の隊員たちに、卒業後のなりわいを作る試みも行われています

    キッチンカーを使ったこのカレー店、運営しているのは元隊員の女性2人です。

    他県でキッチンカーを使って起業した人や、地元で起業した人を紹介してもらうなど法人のサポートを受けてオープンにこぎつけました。

     

    カレー店チャドカン経営 藤村真美子さん

    藤村真美子さん
    「商売向いているよということを言われ『えーっ』と思ったんですけど、いろいろアドバイスを頂く中で起業を決心しました。協力隊の時からよき相談相手みたいな感じだったので背中を押してくれた感じです」

    法人では仕事を生み出すことで、十日町市に住み続けるきっかけにしてもらいたいと考えています。

    そして、新潟県はこの法人をモデルに同様の組織を他の地域にも広げることにしています。

    小山さんはコーディネーターとして県の事業に協力することで、人口減少が進む地域に少しでも活力を生み出したいと考えています。

    小山友誉さん
    「人口減少は避けようがなくても、たった1人が移住してくるだけ、それはほんの小さな光かもしれないですが、めちゃくちゃ集落の雰囲気は変わるんです。わたしたちがほかの自治体をちょっとずつお手伝いして、それが広がっていくことで、新潟全体に明かりが広がってくれたらいいなと思います」

     

    NHKの職員も全国転勤です。「どうせあなたも転勤していくんでしょ」と言われて、寂しい思いをしたことも正直、あります。「お客様」ではなく「地域の人間」として、いかに地域のニーズに応えるか。地域おこし協力隊も私たちの仕事も一緒だなと、思いを新たにしました。

      • 野口恭平

        放送部 記者

        野口恭平

        2008年入局 徳島放送局、報道局経済部を経て新潟放送局へ。幼いころから南魚沼市で年末年始を過ごす。現在は行政や経済を担当。

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