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2020年4月26日

コラム オラファー・エリアソン

4/26放送の日曜美術館「オラファー・エリアソン ひとりが気づく、世界が変わる」と関連したアートコラムをお届けします。放送の内容と合わせて、より深く知るきっかけとしていただければ幸いです。

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参考図版:スタジオ・オラファー・エリアソンのランチ風景(2016年)
Photo: María del Pilar García Ayensa
© Olafur Eliasson

さまざまな分野の人が集うオラファー・エリアソンのスタジオ

「ぼくのスタジオにはそれぞれ違う部分があって、おたがいに撚り合わさっている」。スタジオの日常を記録した書籍『Studio Olafur Eliasson The Kitchen』の中でオラファー・エリアソンはそう語っています。アイスランド系デンマーク人のオラファーは王立デンマーク芸術アカデミーで学んだ後、ニューヨークで作家のアシスタント経験を経て、ドイツへ。ベルリンを拠点とし、2008年からは元醸造所だった建物を改装し、100名を超すスタジオメンバーとともに日々を送っています。

そこにはアーティストだけでなく建築家、デザイナー、出版関係者、職人、料理人などもいて互いに影響を及ぼし合っています。お昼になるとスタジオで活動する人々が一人残らずキッチンに集まって、地元の食材でつくられた美味しい料理を、一緒のテーブルで家族のように囲んで食べるそうです。またスタッフのみならず、スタジオを訪れたゲストたちがそのテーブルに加わるのも日常茶飯事です。ランチタイムは出会いと対話の場でもあり、その前後でスピーチが始まることもあれば討議になることもあります。こうした環境の中で、多様なプロジェクトは生まれ、影響を及ぼし合い変容していきます。
ちなみに毎日100名以上の料理がこしらえられ、スタジオメンバーたちをつなぎあわせる磁力をもったこのキッチンを最初に整備したシェフは岩間朝子さんという日本人のアーティスト兼シェフでした。

魅力的な共同作業

このように、オラファー・エリアソンを取り囲む環境は横断的なコミュニケーションに満ち、魅力的な共同作業へと発展していきます。たとえばカリフォルニアのレストラン「シェ・パニース」オーナーのアリス・ウォータースもよくオラファーのスタジオにも立ち寄るひとりですが、このキッチンやオラファーの展覧会の会場で料理をふるまったこともあります。デンマーク人シェフでレストラン「ノーマ」を切り盛りするレネ・レゼピも、キッチンに来てスタジオメンバーにインスピレーションを与えている一人です。

建築家とのコラボレーション事例は多く、北京の美術館では中国人建築家マ・ヤンソンと、赤青緑に染まった霧を使った作品「Feelings are Facts」を共同制作しました。マ・ヤンソンは、大地の芸術祭2018で清津峡渓谷を舞台にTunnel of Lightという作品を披露した建築家としても知られています。

2012年にはエンジニアのフレデリック・オッテセンと共に、電気の通っていない生活を送るアフリカの人々にクリーンな電力を届けるプロジェクト「Little Sun」を立ち上げました。自然エネルギー事業に取り組む日本のベンチャー企業などとも提携しています。

オラファー・エリアソンはスタジオのことを「複雑な生命体」とも形容しています。彼のプロジェクトは分野を超えてさまざまな専門家と結びつきあうことで、より魅力的なものとなっているのではないでしょうか。