荒川にも“決壊”リスクが…2019年台風19号で検証
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2019年の台風19号(東日本台風)では、最悪の場合、首都圏を流れる「荒川」でも堤防が決壊する可能性があったことが専門家の解析で分かりました。当時、気象庁が出していた複数の雨の予想をもとに水位を計算した結果で、決壊すれば大きな被害が出るおそれがあります。専門家は「荒川の氾濫は十分に起こり得ると考えて備えを進めるべきだ」と指摘しています。
(社会部記者 藤島新也)
2019年台風19号関連ニュースで紹介された内容です
目次
「荒川」一時、氾濫の危険性高まる
各地で川の決壊や氾濫を引き起こし、大きな被害をもたらした去年の台風19号。首都圏を流れる「荒川」では、さいたま市西区にある観測所で観測史上最も高い13メートル8センチの水位を観測するなど、記録的な水位となりましたが、氾濫は起きませんでした。
あと少し雨が強かったら…
雨の降り方がさらに強かった場合、水位はどうなっていたのか。
河川工学が専門の東京理科大学の二瓶泰雄教授は、荒川のうち埼玉県熊谷市から埼玉県戸田市にかけてのおよそ40キロの区間でシミュレーションしました。
「雨の降り方」は、台風が上陸する10時間ほど前に気象庁が実際に発表していた21とおりの予測を使いました。
このうち、荒川本流の流域で2日半の間に降った雨の量が実際よりも80ミリ多い最悪のケースを検証したところ、川の水が堤防を越えることはありませんでしたが、河口から37.2キロさかのぼった場所にある埼玉県志木市の「羽根倉橋」付近の右岸では、住宅地に水が流れ込むまであと26センチに迫る水位でした。
「計画高水位」超の状態 12時間以上の場所も
さらに解析した区間のおよそ半分にあたる23キロで、設計上、堤防が耐えられる上限の水位とされる「計画高水位」を超えることが分かりました。
場所によっては、この水位を超えた状態が12時間以上続いた場所もあり、二瓶教授によりますと「計画高水位」を上回る水位が長時間続くと堤防への水の浸透が進み、決壊の可能性が高まるということです。
「羽根倉橋」付近でも6時間にわたって超え続け、仮にここで決壊が発生すると、国土交通省の想定では、最悪の場合、東京 板橋区や北区にかけての広い範囲が浸水する危険性があるとされています。
堤防が決壊したら…6メートルの浸水想定も
荒川が、仮に埼玉県志木市の「羽根倉橋」付近の右岸で堤防が決壊したらどうなるのか。
国土交通省のサイト「浸水ナビ」で見てみると、最悪の場合、あふれた水は、北は埼玉県川越市から南は東京 北区赤羽にかけてのおよそ50平方キロに広がるとされています。
決壊地点の近くでは、建物の2階も水没する6メートルの浸水が想定されています。
都内にも浸水が広がり、
▽板橋区の「高島平駅」の周辺では3メートル、
▽北区の「浮間舟渡駅」前でも4メートルと、
建物の1階が水没するほどの浸水が想定されています。
また決壊場所からおよそ15キロ離れた東京 北区の「赤羽岩淵駅」でも、およそ1メートルの浸水が想定されています。
最悪の場合 自治体外への「広域避難」必要に
荒川の氾濫について、国は最悪の場合、江戸川区と江東区、葛飾区、墨田区、足立区の「江東5区」で大規模な浸水が広がると試算しています。
それによりますと、浸水想定区域に住むのはおよそ250万人で、自治体の避難所などの収容人数は20万人分しかないとされています。
このため93万人はマンションの高層階などで生活を続ける必要があり、137万人は自治体の外への「広域避難」が必要だとしています。
専門家「いざという時の避難方法 今のうち考えて」
二瓶教授は、実際には予測より雨が少なかったために氾濫が起きなかったと指摘したうえで「荒川の氾濫は非現実的なものではなく、十分に起こる可能性があったことを認識してほしい。実際には氾濫が起きなかった場所が、次も大丈夫とは限らないので、いざという時にどう避難するのかを今のうちから考えておくことが大切だ」と指摘しています。
- 社会部記者
- 藤島新也
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