「分散避難」で新型コロナウイルスなど感染症防ぐ
土砂災害や川の氾濫など、危険が差し迫っている場合は、“ためらわず”に安全な場所や避難所に早めに避難することが重要です。ただ、避難所などで人が密集すると新型コロナウイルスなど感染症の心配もあります。そこで重要になるのが、あらかじめ別の避難先を考えておく「分散避難」です。安全な場所に住んでいる親戚や知人など頼れる人がいればそこに避難することも考えてください。
2021年6月・7月にニュースや番組で紹介された内容です
目次
「分散避難」を心がけて
災害のおそれがあるときに、「避難所」に多くの人が密集すると、新型コロナウイルスなどの感染症が広がるリスクがあります。これからは、「避難所」への避難以外にも、「親戚・知人宅」「ホテル」「在宅避難」「車中泊」などさまざまな避難先に、地域の人たちが分散して避難することが大切です。
頼れる知人などいれば
避難場所を分散させるため、安全な場所に住んでいる親戚や知人など頼れる人がいれば、そこに避難することも考えてください。
在宅避難も
川の近くや低い土地、斜面といった危険な場所にはないマンションなど頑丈な建物で、高い階に住んでいる人は、自宅にとどまって避難生活する「在宅避難」も考えてください。
危険な場所でなければ車中泊も
浸水のリスクがある地域や、山の斜面、倒壊した建物の近くなどの危険な場所でなければ、一時的に車の中で過ごす「車中泊」も考えられます。ただ、長時間同じ姿勢でいると「エコノミークラス症候群」になり、体調を崩すおそれもあります。その場合は定期的な運動や換気などを心がけてください。
不安があればためらわず避難所へ
ただ、周囲に不安があれば、ためらわず避難所に移動して下さい。
避難所に行くことになったら 何に気をつける?
災害から命を守るために大事なのが「避難」です。でも、避難所に行くことになったら… 感染の不安もあると思います。避難所に行くことになった時、私たちはどんなことに気をつけたらいいのか。専門家の意見などをもとにポイントをまとめました。
避難所に持っていくもの
まず、避難所にいく際に、感染症を防ぐために持っていきたいものです。
✅「マスク」
✅「アルコール消毒液」
✅「体温計」
マスクを持っていない場合は、鼻と口を覆える大きさのタオルや手ぬぐいなども代わりに使えます。アルコール消毒液がない場合、ウエットティッシュも使えます。マスクは自治体で備蓄していないところも多く、できれば自分で用意しておきましょう。
避難所入る前に体調チェックを
感染拡大を未然に防ぐために一番大切なこと。
✅「避難所に入る前の体調チェック」
感染拡大を未然に防ぐ
発熱やせき、強いだるさといった症状が出ていないかチェックするとともに、体温もはかることで感染の疑いがあるかどうかを判断することが大切です。
隔離する部屋の用意を
感染の疑いがある人がいた場合を想定して、避難所を運営する人は「隔離する部屋」を用意することも大切です。例えば学校の体育館が避難所となっている場合、教室なども使えるようにして、発熱やせきなど症状がある人のための専用の居場所を確保します。
避難所に入ったら
では、避難所で生活を続けることになったら。
3つの密を避ける
大事なのは「密閉・密集・密接」の3つの密を避けることです。
✅「出来るだけ換気を心がける」
✅「他人と2メートルほど距離をとる」
✅「密接した状態での会話は避ける」
「密集」「密接」を防ぐためには、人と向かい合わせではなく背を向けて座るようにしたり、段ボールなどで間仕切りを作ったりすると効果があります。せきやくしゃみなどによる飛まつ感染の防止にもなります。
手洗い消毒の徹底
✅「手洗いや消毒の徹底」
食事の前や、トイレに行った後などは必ず手洗いやアルコール消毒をするようにしてください。ドアや手すりなど、多くの人が触るものに触れた後は、手洗いや消毒を徹底するようにしてください。
毎日の体調のチェック
✅「自分の体調を毎日チェック」
避難所での生活が続く場合、体温を測るなど体調の変化を継続的にチェックし、変化があったら無理をせず、避難所の運営者に知らせて対応を考えてもらってください。
過去の災害でも感染症発生
過去の災害でも、避難所で感染症の患者が相次いだことがあります。
東日本大震災では、岩手県内の避難所で数十人規模のインフルエンザ患者がでたほか、2016年の熊本地震でも、南阿蘇村の避難所を中心にノロウイルスやインフルエンザの患者が相次いで確認されました。
避難所は床付近にも感染リスク
災害時の避難所 床付近でも感染リスク
再生時間 1:14
災害時の避難所では床の付近でも新型コロナウイルスの感染リスクが高まるおそれがあり注意が必要です。NHKと専門家が実験した結果、くしゃみなどの「飛まつ」は床付近に残りやすいことがわかり、専門家は「床に“雑魚寝”する避難所の環境を変えるなど対策をとる必要がある」と指摘しています。
NHKは室内環境学が専門の東海大学の関根嘉香教授の監修で災害時の避難所に見立てた室内に風が入らない空間で起きるくしゃみなどによる「飛まつ」の影響を実験しました。
特殊な装置を使い、人のくしゃみと同じ量の飛まつを発生させ、高感度カメラで撮影すると、1.5メートルほど先の床の付近に集中して落下することがわかりました。
さらに、そのうえを人が歩くと、ほこりなどに付着した飛まつが床の上に舞い上がる様子が見られました。
また、近くでくしゃみやせきをして空気が動くだけでも、ほこりは床から20センチほどの高さまで舞い上がりました。
関根教授は「特に体育館のような堅く摩擦の少ない床ではウイルスが長く生き続けるという報告もある。床に落ちた飛まつの対策も重要になる」と話していました。
避難所の感染症対策に詳しい高知県立大学の神原咲子教授は、避難所の床に直接寝る“雑魚寝”の環境では感染のリスクが高まるとして、「段ボールなどの簡易ベッドで床からの距離を確保する対策が有効だ」と指摘しています。
気をつけるポイントは?
避難所で新型コロナウイルスの感染リスクを抑えるためには、どのようなことに気をつけたらいいのか。避難所の環境改善に詳しい専門家にポイントを教えてもらいました。
1・まず避難所に入る前に…
高知県立大学の神原咲子教授がまず強調するのは避難所に感染源を持ち込まないようにするための体調チェックです。
避難所に入る前に体温を測ったうえで、「発熱」や「せき」、「強いだるさ」といった症状が出ていないか聞き取ります。
そして、感染のおそれがある場合は、ほかの避難者とは別の部屋、例えば避難所が小学校の体育館の場合、教室なども使えるようにして、症状がある人専用の場所を確保する必要があるとしています。
2・段ボールで飛沫感染を防ぐ
それでは避難所に入った後、どのようなことに気をつけたらいいのか。
神原教授が指摘するのが、せきやくしゃみなどによる飛まつ感染のリスクを抑えるための工夫です。
<段ボールの間仕切り>
ほかの避難者と十分な距離が保てない場合、段ボールで間仕切りをすれば、飛まつをシャットアウトしてくれます。ただ、間仕切りをむやみに触ると、接触感染が起きかねないので、なるべく触らないことも大切だということです。
<段ボールベッド>
段ボールベッドも有効です。床に落ちた飛まつは残りやすいこともあり、床に雑魚寝をしていると、感染するリスクが高まります。段ボールベッドは、床から30センチほどの高さが保たれるため、リスクを抑えることができるといいます。
※段ボールベッドの作り方はこちら。
3・共用部分を触る前後に手指の消毒を
神原教授がさらに気をつけてほしいと指摘するのが、こまめな消毒や手洗いです。
避難所の共用部分、例えばトイレであれば、ドアノブや電気のスイッチ、手すりなどは多くの人が触るため接触感染が起きやすい場所です。
こうした共用部分を触る「前」と「後」で手指の消毒や手洗いをすることが重要です。特に触る「前」の消毒については、自分がウイルスを持っている可能性もあるので、ほかの人にうつさないという意識を持つことが大切になります。
このため、アルコール消毒は避難所の入り口にだけでなく、トイレの入り口にも置いて、こまめに消毒するのが効果的だと言います。
また、避難所では支援物資や備蓄品などを避難者どうしが共有して使うことも多くなります。ものに触る前後の消毒が必須です。
4・避難所でどう過ごすか考えて
神原教授は「新型コロナウイルスの影響で地域で避難所の訓練ができなくなっている。感染リスクを減らすためにどんな対策ができるか、家族で話し合ったり、必要なものを備えたりして、イメージトレーニングをしておくことが大切だ」と話しています。
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