東京都の感染者数
「高い水準のまま増加している」

2020年10月15日

東京都内の新型コロナウイルスの感染状況などを分析・評価する「モニタリング会議」が開かれ、専門家は、警戒のレベルについて上から2番目の表現を維持したものの、新たな感染の確認などが「高い水準のまま増加している」と指摘し、警戒が必要だと呼びかけました。

会議の中で国立国際医療研究センターの大曲貴夫国際感染症センター長は、都内の感染状況について、「感染の再拡大に警戒が必要であると思われる」と評価しました。

4段階ある警戒のレベルのうち上から2番目の表現で、この表現を維持するのは6週連続です。

ただ、新たな感染の確認は、10月14日までの7日間平均で181人ちょうどと前の週のおよそ162人から増加しています。

大曲センター長は、新たな感染の確認と感染経路が分からない人の数が「高い水準のまま増加している」と指摘し、経済活動の活発化や新たなクラスターが複数発生することによるさらなる増加に警戒が必要だと呼びかけました。

さらに、年末に向けて、大人数で会食する機会の増加が想定されるとして、「対策をしないとリスクが高まり同時に多くの人が感染することもある」として、予防策を改めて徹底する必要があると指摘しました。

このほか、会議では、医療提供体制について「入院患者や重症患者の人数の推移に引き続き警戒が必要だ」と評価し、「体制強化が必要であると思われる」という上から2番目の表現を15週連続で維持しました。

専門家「対策しなければ感染者増加も」

国立国際医療研究センターの大曲貴夫国際感染症センター長は、モニタリング会議のあと、記者団に対して、「新たな陽性者数がまた上がったという状況だ。もともと、陽性者が多いので、ここで数が増えるということを非常に気にしている」と述ベました。

そのうえで、「リスクが高い場所は3密だと分かっている。マスクや手洗いに効果があることも明確に分かっている。特に対策をしなければ陽性者が増えていく要素はあると思うが、社会全体で対策を効率よくできれば下がっていく要素は十分あるのではないか」と述べました。

また、医療提供体制について、東京都医師会の猪口正孝副会長は「入院患者が1000人くらいの状態がずっと続いている。医療機関にとってはボディーブローのように効いている。クラスターも発生しており、医療機関はものすごくプレッシャーとなっている」と述べました。

専門家の分析結果の詳細

10月15日のモニタリング会議の中で示された都内の感染状況と医療提供体制についての分析結果です。

●感染状況

まず、感染状況についてです。

新たな感染の確認は10月14日までの7日間の平均で181人ちょうどとなり、前の週からおよそ19人増えました。

週当たりだと1200人を超えていて、専門家は「非常に高い水準で推移している」と指摘しています。

10月12日までの1週間で年代別の割合をみると、20代が最も多く24.4%でした。

次いで、
▽30代が21.4%、
▽40代が15.6%、
▽50代が14.1%、
▽70代が6.3%、
▽10代が6.0%、
▽60代が5.8%、
▽80代が3.8%、
▽10歳未満が2.0%、
▽90代以上が0.6%です。

年代別では、前の週と大きな変化はありませんでした。

また、65歳以上の高齢者の割合は12.7%で、前の週より1.7ポイント減りましたが、専門家は「高い割合が続いている」と指摘しています。

また、感染経路が分かっている人のうち、家庭内での感染が31.8%で少なくとも11週連続で最も多くなったほか、次に多い施設内は21.7%で前の週より5ポイント増えました。

複数の病院や大学の運動部などでクラスターの発生が報告されたということです。

このほか、職場内は9.7%、会食は9.1%、夜間営業する接待を伴う飲食店は7.4%でした。

専門家は「いったん、職場や施設、外出先などで感染が広がると、複数の家庭内にウイルスが持ち込まれ、感染が拡大する可能性が高くなる」と指摘しています。

また、会食による感染について、「マスクを外して長時間、飲酒や飲食を行う、または大声で会話をするなどのリスクに留意して基本的な感染予防策を改めて徹底することが重要だ」と呼びかけました。

さらに、「特別養護老人ホームや介護老人保健施設など重症化リスクの高い施設で無症状や症状の乏しい職員を発端とした感染が見られる」と指摘し、施設内感染への厳重な警戒と高齢者の感染予防を目的とした検査体制の拡充の必要性を訴えました。

●医療提供体制

続いて、医療提供体制です。

入院患者は、前の週は1000人を下回ることもありましたが、10月14日時点では1008人で、1週間前・10月7日の時点より32人増えています。

専門家は「病院でクラスターが発生すると感染した患者は重症化しやすく死亡率も高くなるため病院は感染対策にものすごく気をつかっている。この状況が続いていることをぜひご理解いただきたい」と説明しました。

また、都の基準で集計した重症患者は10月14日時点で25人で、1週間前から1人増えました。

25人を年代別にみると、50代が8人、60代が6人、70代以上が11人で、
性別では、男性が20人、女性が5人でした。

また、10月12日までの1週間で都に報告された亡くなった人は8人で、このうち6人が70代以上でした。

小池知事 改めて感染防止対策の徹底呼びかけ

モニタリング会議のあと、小池知事は、記者団に対し、「集団感染が発生した施設には10月1日からスタートした『東京iCDC』の対策チームを派遣して対応を進めている。防ごう重症化、守ろう高齢者ということで、しっかり対応したい」と述べました。

また、新たな感染の確認が高い水準で推移している状況について、「感染防止と経済活動を両立させるウィズコロナの時代はこのような状況が続くだろうと思う。自分だけかからないとか、きょうぐらいいいだろうと思ったときにこそ、感染することもあるかもしれない」と述べ、感染防止対策の徹底を改めて呼びかけました。