「医療現場は限界に近い」
「適切な治療受けられる保証ない」

2021年8月28日

東京で新型コロナウイルスの重症患者の治療に当たってきた医師は、この数週間で入院する重症患者や亡くなる人が増えており、病床やスタッフ、人工呼吸器なども足りなくなってきているとしています。医療現場は限界に近づいていて、適切な治療が受けられる保証がないとして、感染を防ぐ行動を取るよう訴えています。

新型コロナ患者の治療の中核を担ってきた国立国際医療研究センターの森岡慎一郎医師によりますと、センターでは患者が退院してもすぐに入院する人で病床が埋まる状態で、この2週間は1日に10人から15人が新たに入院し、8月26日の時点で入院患者はおよそ50人に上るということです。

全体の3人に1人が重症で、感染の第5波の当初はいなかった亡くなる人が、8月に入って連日のように出てきているということです。

森岡医師は「20代、30代、40代の人が入院してきて酸素投与や人工呼吸器が必要になってきている。若い人が重症化するのは感染の第1波から第4波と大きく異なる。比較的若い人でも亡くなる人がいる」と話しています。

さらに、国や東京都から病床をさらに増やすよう要請を受けているものの、医師などのスタッフのほか、人工呼吸器などの医療機器も足りず、入院の依頼を連日、数十件断らざるを得なくなっているということです。

森岡医師は「患者全体の重症度が上がっていて、1人の患者にかかるケアの量が以前にも増して増えている。最近では重症化しやすい高齢者の入院も増えてきていて、医療者がより多く必要になっている。他の一般医療を縮小してぎりぎり回っている状況で長続きはしないと思う。人工呼吸器もレンタルもできない状況で今後、気管挿管をしたくてもできない状況が発生することが容易に想像できる。医療現場はもう限界に近い」と話しています。

そのうえで、森岡医師は「これだけひっ迫した状況が、世の中と共有できていないことが最も大きな懸念だ。救急車を呼んでも来ない、来たとしても入院できる病院が見つからない、入院できたとしても適切な治療が受けられる保証がない。基礎疾患のある人は本当に亡くなる可能性がそれなりにあると思う。そういう状況だということを一人一人が自分のこととしてとらえて、感染を防ぐ行動につなげてほしい」と訴えています。