北朝鮮制裁の専門家パネル 任期延長を否決 ロシアが拒否権行使

国連の安全保障理事会では、北朝鮮に対する制裁の実施状況を調査する専門家パネルの任期を延長する決議案がロシアの拒否権によって否決されました。専門家パネルの活動が打ち切られれば、国連の北朝鮮に対する監視が弱まることが懸念されます。

安保理ではこれまで、核・ミサイル開発を続ける北朝鮮に対する制裁の実施状況について、各国の専門家からなるパネルが調査を行い、毎年、報告書をまとめてきました。

28日、この専門家パネルの任期を延長する決議案が採決にかけられ、日本やアメリカなど13か国が賛成しましたが、中国は棄権し、ロシアが拒否権を行使して否決されました。

採決にあたり、ロシアのネベンジャ国連大使は「制裁は北朝鮮を締め上げるためのアメリカと西側諸国による前例のない政策だ」と述べ、制裁そのものを見直すべきだと主張しました。

各国からは拒否権を行使したロシアを非難する意見が相次ぎ、このうち、日本の山崎国連大使は「ロシア自身が北朝鮮から軍事装備を調達してウクライナで使用し、安保理決議に違反しており、無責任で恥ずべきことだ」と非難しました。

2009年に設置された専門家パネルは15年にわたって、北朝鮮がどのように制裁を逃れ、核・ミサイル開発を続けてきたかを調査し、3月に公表した報告書では北朝鮮が違法なサイバー攻撃で外貨を獲得していると指摘し、武器や弾薬をロシアに供与している疑いも調査しているとしていました。

専門家パネルの任期は4月30日までで、このまま活動が打ち切られれば、国連の北朝鮮に対する監視が弱まることが懸念されます。

米 ホワイトハウス「重要な制裁をさらに弱める」ロシアを非難

アメリカ・ホワイトハウスのカービー大統領補佐官は28日、記者団に対し、ロシアが拒否権を行使したことについて、「彼らの無謀な行動は北朝鮮の核実験と弾道ミサイルの発射に対して科している重要な制裁をさらに弱めるものだ」と述べ、ロシアを非難しました。

林官房長官「国連および多国間主義の軽視」

林官房長官は閣議のあとの記者会見で、「決議案がロシアの拒否権行使で否決されたことは遺憾だ。国連および多国間主義の軽視であり、グローバルな核不拡散体制を維持する安保理理事国の重責に反する行為で残念だ」と指摘しました。

その上で、「政府としては関連する安保理決議の完全な履行に向けて同志国とこれまで以上に緊密に連携しながら、さらなる対応を検討していく。同時に理事国として安保理が本来の役割を果たすよう尽力していく」と述べました。

中国 採決棄権 “強行された” と非難

国連の安全保障理事会での決議案の採決で中国は棄権しました。

これについて中国外務省の林剣報道官は29日の記者会見で採決が強行されたと主張し「安保理の権威の維持にとってプラスにならない」と非難しました。

その上で「今の半島情勢は緊張が続いており、制裁や圧力だけでは問題を解決できず、政治的解決が唯一の道である。安保理や関係者の建設的な努力を望む」と述べました。

ロシア報道官 “拒否権行使 利益に合致”

ロシア大統領府のペスコフ報道官は29日、ロシアが拒否権を行使した理由について記者団からの質問に「この立場の方がわれわれの利益に合致しているからだ」と答え、ロシアの国益にも資することになると説明しました。

ロシアと北朝鮮は、おととし、ロシアがウクライナへの軍事侵攻を始めてから急速に接近し、去年9月にはロシア極東でプーチン大統領とキム・ジョンウン総書記が首脳会談を行い、今月もプーチン大統領の側近で対外情報庁のナルイシキン長官が25日から27日の日程で北朝鮮を訪問しています。