Special コラム  十勝晴れ

【第17回】北海道ことば指導・助川嘉隆さんにインタビューしてきたべさ!

なつと夕見子、それぞれの恋が描かれた第16週 。夕見子の駆け落ち騒動にはやきもきしましたが、泰樹おじいちゃんによる“抹殺”で清々したライターTです!

今回注目したのは、「北海道ことば」。第16週では、雪次郎くんが芝居のため、なまりを矯正しようと奮闘していましたね。それでも、同郷のなつや夕見子との会話でついついなまってしまう場面に、ほっこりしました。

ドラマのさまざまなシーンで飛び交う「北海道ことば」。舞台が東京に移ってからも、ことばのおかげで北海道の気配を感じます。今回は、出演者に「北海道ことば」を指導している助川嘉隆さんにお話を伺いました!

「北海道ことば指導」とは

北海道釧路市で生まれ育った助川さん。ふだんは東京で俳優活動をされています。十勝はお母様の出身地で昔からよく訪れており、第2の故郷のように思っているそうです。

ライターT:まず最初に「北海道ことば指導」って、どんなことをされるんですか?

助川さん:まず、脚本家の大森先生から届いた台本を読み込みます。台本に書かれていることばが自然な「北海道ことば」かどうか、全員分のセリフを声に出して確かめるんです。そうやってチェックを終えたら、台本に書き加えて戻します。もちろん、すべてが採用になるわけではありませんが(笑)。

ライターT:なるほど、初期段階から関わっていらっしゃるんですね。

助川さん:次に、台本のセリフをシーンごとに録音します。台本1冊が1週間、6話分なのですが、その舞台がすべて北海道だと、声を吹き込むのに4日ほどかかります。“ひとり柴田家”“ひとり雪月”状態ですよ(笑)。録音した音声データを助監督さんが俳優さんたちに渡して、事前に発音や言い回しを勉強してもらっています。

ライターT:“ひとり柴田家”(笑)。聞いてみたいです。でも、4日もかかるなんて、大変ですね…。撮影現場でも、ことば指導をされるんですか?

助川さん:もちろんです、本番がすべてなので。役者さんたちは本番を含め、最低4回演技をします。そのなかで、この言い回しは「北海道ことば」的に違うなと思うところがあると、修正していきます。自分ひとりで音源を吹き込んでいるときに正しいと思っていても、実際の演技を見て「こうしたほうがいいな」と思うこともあるので、撮影現場で確かめることは重要です。逆に、役者さんが言いにくそうにしているときなど、演技に支障がある場合はなまりを控えることもあります。ことばのせいで、気持ちが入らなくなるのは避けたいので。役者さんの気持ちを第一に優先するようにしています。

ライターT:さすが俳優さんならではの観点ですね。「北海道ことば指導」を俳優さんがしているのが少し意外だったのですが、ことばだけでなく役者さんの気持ちが分かるからなんですね。

助川さん:そうですね。演出的な観点から指導することも多いので、言語学の専門家による指導とは違う効果があると思っています。それから、北海道に知り合いがたくさんいるのも強みですね。たとえば、とよばあちゃんのなまりは年配の親族を参考にして、語尾を強調して「田舎っぽさ」を表現しました。「この発音、合っているかな」と不安になったときも、十勝に住んでいる親族に相談できるので心強いです。

ライターT:基本なつは「北海道ことば」を話していると思いますが、なつがいるときはいつも助川さんは撮影現場にいらっしゃるんですか?

助川さん:はい、なっちゃんがいるときは、ほぼ付きっきりです。なっちゃんは東京に住んでから、少しずつ標準語に変わっているんですが、感情が高ぶると「北海道ことば」に戻るんです。なので、舞台は東京に移りましたが、撮影に参加するようにしています。それに、すばらしい俳優さんたちの演技を見られるので、自分自身の勉強にもなります。

ライターT:ちなみに北海道出身のTEAM NACSのみなさんにも、ことば指導されるんですか?

助川さん:ほとんどないですね、完璧なので。逆に、ほかの俳優さんたちに指導していただいています(笑)。「得意でな、昔から」っていう照男くん(清原翔さん)のセリフがあったんですけど、発音に苦戦していたところ、菊介さん(音尾琢真さん)が何度も教えていたのが印象的でした。

<なまっている自覚がない!>

ライターT:助川さんは、いつまで北海道にいらっしゃったんですか?

助川さん:上京する18歳までです。高校卒業と同時に、お芝居がやりたくて東京に出てきて、演劇を学べる短大に入りました。20歳のとき、西田敏行さんに憧れて「文学座」に入ったんですが、西田さんは、「文学座」じゃなくて「青年座」だったんですよね。間違えちゃいました(笑)。

ライターT:え〜!そんなことあるんですか!

助川さん:ちゃんと調べればよかったですね。

ライターT:ドラマでは雪次郎くんがなまりをなおそうと頑張っていますが、助川さんは上京したばかりのころ、お芝居や私生活において、ことばで困ったことってありましたか?

助川さん:上京したてのときは「なまってる」と頻繁に指摘されました。でも、ぜんぜん分からなかったんですよ。「どこがなまってるの?」と思っていました(笑)。単語のイントネーションは特に、気づきづらいです。「ながぐつ(“が”にアクセント)」とか「コーヒー(“コ”にアクセント)」とか。

ライターT:えっ!これ、なまっているんですか!?気づいてなかったです…。

助川さん:北海道の人ってみんな、なまっていないと思っているんですよ。いたって、ふつうだと。

ライターT:ですね。私としては、「ながぐつ(“が”にアクセント)」のほうが、なんかあたたかい感じというか、愛を感じます。

助川さん:ですよね。分かります(笑)でも、これがいつのまにか、標準語になっていくんですよ。いまでも、「わや(めちゃくちゃ)」とか「うるかす(水につけて、ふやかすこと)」とかはよく使いますけど、「ばくる(交換する)」とか「かっちゃく(ひっかく/かきむしる)」とか使わなくなっちゃいました。

ライターT:さみしいですね。「うるかす」とか、ほかのことばだと一語で表せない気がします。

助川さん:すごく便利なことばですよね。東京に来て、一番指摘されたのは、「ごみを投げる(捨てる)」でした。

ライターT:「投げる」は「通じるでしょ!」って思いますね。「はんかくさい(あほらしい/ばかげた)」とか、劇中で使われていてうれしかったです。「はんかくさい」って、東京の人が言うと「うざい」とかになると思うんですけど、「はんかくさい」のほうが否定的に聞こえないというか…優しく感じます。

助川さん:確かに。「うざい」って言われたほうが、ショックが大きいですよね。東京の人からしたら、僕たちが「はんかくさい」っていうのと、変わらないんだと思うんですけどね。北海道のことばは、標準語では言えないような「核心」をソフトにつくことばだと思います。同じ意味でも相手を落ち込ませないというか、愛がありますね。

ライターT:分かります!言いたいことを遠慮せず、傷つけずに伝えられますよね。「北海道ことば」大好きです!最後に、頑張ってなまりを矯正している雪次郎くんに、一言アドバイスをするとしたら、何でしょうか?

助川さん:平坦にしゃべったらいいよ!ってことですね。気持ちが入るとなまってしまうのは当然なんです。北海道を愛していると、出ちゃうんですよね。とにかく平坦に(笑)!


自分自身がなまっていることを改めて自覚したインタビューでした(笑)ことばって本当におもしろい。助川さんの北海道愛、北海道ことば愛を感じるとともに、自分の北海道ことば愛も深まりました。終始、笑顔で答えてくださった助川さん、ありがとうございました。

最新情報によると、助川さんは『なつぞら』に役者としても出演するとか。楽しみに待っています!

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