インタビュー

作・大森寿美男さん インタビュー【前編】

人の心に流されながら、
人生を見いだしていくヒロイン

長く一つの物語を書くと、
一時期そこに住んでいたくらいの記憶が残る

連続テレビ小説の脚本執筆は『てるてる家族』以来、2度目になりますね。

そうですね。『てるてる家族』みたいな作品をもう一回作りたいと思ったのがきっかけです。長く一つの物語を書くと、一つの人生を体験したような余韻が残るんですよね。ふるさとを一つ得たというか、一時期そこに住んでいたくらいの記憶が残る。『てるてる家族』では、見てくれる人たちともそのような感覚を共有できた気がして。そういう体験をもう一度してみたいと思ったんです。

『てるてる家族』のときは作り終わるまでそんな良さにも気づかないくらい大変でしたが、今回は2度目だから初めから大変さが分かっている(笑)。フルマラソンと同じです。1回走ったから、どの辺りが苦しいか、どのくらい準備したらいいか分かる。今回は覚悟ができているし、楽しむ余裕もできている気がします。

誰と出会いどんなことが起きるかによって、
人生は無限に変わっていく

今回のヒロイン・奥原なつの人物像は?

東京大空襲で両親をなくし、運命的に十勝の開拓者の一家に育てられるヒロイン像を考えたとき、自分の意思を貫いて生きていくヒロインではないと思いました。
普通、家族って成長過程で空気みたいな存在になりますよね。でも、なつの場合は成長しても家族を大事にしないと、家族自体を失ってしまう環境なんです。だから、家族の思いを人一倍受け止めて、自分はどういう思いを人に返していくかを考えるような人。人の心に流されながら、出会いと関わりのなかで、人生を見いだしていくヒロインだと思ったんです

-----なるほど。ブレないヒロインではないのですね。

僕らは宿命的に境遇を選べず生まれてくるけれど、その先は誰と出会いどんなことが起きるかによって、人生は無限に変わっていく。そこのリアリテイだけは逃げずに描きたいと思いました。ヒロインに限らず、周りの人々も、ヒロインと出会うことでどんな変化が起きていくのだろうと。そこはしっかり表現したいです。

やっぱりね。広瀬すずさんはすごいっすよ(笑)。

ヒロインを演じる、広瀬すずさんの印象は?

ポテンシャルの大きな広瀬さんには、壮大な物語を当てはめたい思いがありました。北海道という物理的な壮大さと、アニメーションという無限に広がる想像力の世界、その2つを合わせれば、今までにないスケールの朝ドラになるんじゃないかと。広瀬さんはそれを背負って立つのにまさにふさわしいヒロインです。彼女が十分やりがいを感じられるものを描きたいと、どんどんイメージが広がった感じですね。

---実際にご本人の演技をご覧になっていかがですか?

やっぱりね。広瀬すずさんはすごいっすよ(笑)。どうやりたいかじゃなく、どう感じたかを一番大事にして、それを素直に出せる能力がある役者さんだと思いました。
僕の中では“なつ”の答えを出せる唯一の役者さんだと思っています。彼女の芝居を見たとき、僕は問いかけるだけでいいんだなと思ったんです。「こういうとき、なつはこのセリフをどういう気持ちで言いますか?」と。それだけでなつは自然に生まれていく。そう思うと、書くことがどんどん楽しくなって、無限にイメージを膨らませていける。頼もしさを感じます。

難しい役だと思うんです。自分のキャラクターを押し通すヒロインではなく、人と関わる中で変化し、相手の思いを受け止めて返していく中で、自分の意思を強くするヒロインなので、自然にやるにはそれだけの器がないと演じきれない。
広瀬さんには、僕の実力が追いつかないんじゃないか?と思うくらいの器の大きさを感じるんですよ(笑)。

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