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中学生たちがAEDで先生の命を救う

心筋梗塞など心臓に異常が起きて突然死する人は全国で年間7万人を越えます。
こうした人たちを救うために重要なのは、いわゆる心臓マッサージ「胸骨圧迫」とAEDによる救命処置。
その場に居合わせた人たちの行動にかかっています。
神奈川県鎌倉市のある中学校で、生徒たちが先生の命を救ったケースがありました。
名古屋放送局・松岡康子記者のリポートです。

部活動中に顧問の先生が心停止に

この中学校に勤める31歳の越川崇憲先生です。

越川崇憲先生
「ドリブルですね。練習をして、そこで笛を吹いて、指示を出したりしていました」

去年5月の大型連休のさなか、顧問をしているバスケットボール部の練習中に突然倒れました。

越川崇憲先生
「心臓がバクバクしているなと。心臓が止まる瞬間はわからないんです」

そばにいた2年生の小野蒼平さんが、そのときを振り返ります。

小野蒼平さん
「”先生大丈夫ですか?”ってみんなで駆け寄って、耳元や顔のあたりで叫んだんですが、全然反応がなくて、手首触ったりして明らかに冷たくなっていて、その後首とか目とかも確認して、明らかにまずいって状況になって」

とっさに胸骨圧迫! 119番通報へ

心臓が止まっていると思った小野さん。とっさに胸骨圧迫(心臓マッサージ)を始めました。

同時に他の部員が119番通報に走ります。
連休中の職員室は鍵がかかっていたため、電話を借りに学校の外まで走りました。

その間、小野さんともう1人の部員が交代で胸骨圧迫を続けます。
しかし先生の意識は戻りません。

AEDが必要だ!

別の3年生の部員が、体育館の入り口に設置されていたAEDを取ってくるよう1年生に指示しました。

伊藤葉月さん
「必死に(胸骨圧迫を)やっていたんですけれど、一向に(意識が)戻る気配がなくて、とても生きているような目じゃなかったので、まずいなと思いました。取ってきたAEDを受け取ってチャックを開けて、音声案内に従いながらパッドを一輝くんと2人で貼っていきました」

AEDの音声に従って電気ショックを2回したあと、胸骨圧迫を続けながら、救急隊の到着を待ちました。
倒れてから隊員の到着までの10数分。中学生だけで必死に救命処置を続けたのです。

生かされた 保健体育の実習

なぜ中学生たちは、とっさに救命の行動ができたのか。

保健体育の授業を担当する高山雅彦先生です。
今年度から適用された中学校の学習指導要領では、心肺蘇生法とAEDについて、生徒たちが実際に「できるようにする」ことが目標に定められました。

事故が起きる2か月前に2年生に心肺蘇生法などを教えていた高山先生。
授業では生徒たちが実際に動けるようになることを目指し、いざというときを具体的に想定し救命の流れをまとめた動画を生徒たちに作らせました。

高山雅彦先生
「座学だけでは分からないと思っていたので、動きをしみ込ませるために、動きを実際に取り入れながらやった方がいいと感じた」

生徒たちは授業が生かされたと話します。

大森一輝さん
「(胸骨圧迫は)深さは5センチ以上深く沈めて、強く、速く、絶え間なくやれということだったので。授業のたまものですね」

伊藤葉月さん
「授業を受けていなかったら、もっと混乱していてできなかったかもしれない」

”生きていて幸せ”

生徒たちに命を救われた越川先生。
1か月後には仕事に復帰。後遺症もなく、以前と変わらない生活を送っています。

越川崇憲先生
「普通に部活の顧問ができていることが、本当に幸せなんだということを感じさせてもらってます。本当にありがとうね。本当に生きていて俺は幸せだよ。ほんと、みんなに出会えて幸せ」

全国に広がる救命実習

中学生が心肺蘇生法とAEDを使えるようにする取り組みは、全国に広がっています。
名古屋市内の中学校でも、1年生を対象にした保健体育の授業で、実習が行われました。

保健体育の教師
「自分の目の前で倒れている人を見かけたとき、完璧じゃなくていいから、勇気をもって一歩前に出て行動を起こせる人に、皆さんにはぜひなってもらいたい」

学んだ中学生
「こうしたことが起きたときに、自分で冷静に対処できるように覚えておきたい」
「自分のできる範囲で救命に関わって、AEDを持ってきたりとか胸骨圧迫をしたりしたい」

講習会の受講を

居合わせた人の救命処置によって1年間で2000人以上が命を取り留めています。
救命講習は、新型コロナの影響で、延期や中止されている場合もありますが、各地の消防署などで実施しているほか「日本AED財団」がオンラインでの講習会を開いています。
家族も含めて誰かが目の前で倒れるということはありうるので、私たち大人もいざというときに動けるようにしておかなければならないと思いました。

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