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公立高校入試 何が変わる?なぜ変わる?

愛知県教育委員会は、公立高校の入試制度を、2023年の春から、大きく見直すと発表しました。
試験の回数を2回から1回にし、解答はすべてマークシート方式にするという抜本的な見直しに、中学生や保護者からも関心が集まっています。
入試制度は、なぜ今、大きな改革が必要なのか。
名古屋放送局の佐藤裕太記者が取材しました。

珍しい「複合選抜」制度

「『複合選抜』は『複雑選抜』になりつつある。もう少しシンプルな制度にすべきだ」
「受験回数を1回にして生徒や教員の負担を減らすべきだ」――。
2020年6月、公立高校の入試制度の見直しを検討するため、愛知県教育委員会が設置した会議の初会合。
専門家や中学・高校の校長たちから、現在の入試制度の課題を指摘する意見が相次ぎました。

「複合選抜」とは、現在の愛知県の公立高校入試で採用されている、全国でも珍しい入試制度です。
この制度のもとでは、県内の公立高校はAとB、2つの日程のグループに分けられていて、この中から自分の住む学区の高校を1校ずつ選んで、それぞれの日程で受験することができます。

試験は、3月上旬のほぼ同じ時期に行われるので、受験生は、AとBそれぞれのグループの試験を立て続けに受けることになります。
これが、受験生はもちろん、採点などに当たる教員にも大きな負担になっていると指摘されてきました。

2023年春から大幅見直し

こうした中、愛知県教育委員会は、2023年春の入試から、2つの高校を受験できる制度はそのままに、試験は、1回だけに見直すことにしました。
そして、それに伴って、必要になったのがマークシート方式です。

2023年春からは、試験は、第1志望校での1回のみとなり、第2志望校の合否判定には第1志望校での採点結果が用いられます。
第1志望校は生徒によって異なりますから、記述式の問題で採点基準にばらつきが出ると、第2志望校の合否判定で、公平性が損なわれるおそれがあります。

そこで、すべての問題をマークシート方式にすることで、採点基準のばらつきが起こらないようにしたのです。

これまでは、国語と英語、それに社会の問題の中で、文章を要約させたり、資料をもとに説明させたりする記述式の問題が出題されてきました。
愛知県教育委員会は「問題の内容を工夫することで、記述式の問題で測ってきた能力も問うことができる」としています。
このほか、愛知県教育委員会は、推薦入試の日程をおよそ1か月早めるほか、中学校の校長の推薦がなくても受験生がみずから出願できる「特色選抜」という新たな制度も、合わせて導入することにしています。

大胆な改革は、なぜ、今

なぜ、今、こうした大改革が行われるのでしょうか。

現在の「複合選抜」制度は、1989年(平成元年)に導入され、30年以上、ほぼ変化なく続けられてきました。
「2回の試験が負担だ」という指摘の一方、「2校受けられるのは安心だ」という声もあったからです。

それが、今回大きく変わることになった背景には、受験生の「公立高校離れ」が急激に進んだことがあります。
特に、2021年までの5年間で、高校入試の倍率は急落。2021年春の入試では、全日制課程全体で、募集人数に対して合格者が2600人あまり少なく、倍率は初めて1倍を割り込みました。

先日、愛知県教育委員会は、2035年まで、およそ15年間かけて進める、県立高校の再編構想案を発表しました。
入試改革と同じ、2023年春に、再編の第1弾として商業高校の学科改編や高校の統廃合などを行うというものです。
((参考)WEB特集「県立高校『定員割れ』急増の衝撃 変革が進む現場は」

今回の入試改革も、県立高校を取り巻く環境の急激な変化への対応策の1つと位置づけられています。

なにより子どもたちのために

今回の入試改革は、1989年以来の大きな見直しとなるだけに、受験生の試験対策にも、大きな影響を及ぼすのは確実です。
私は、以前、塾で高校受験を控える中学生を教えていました。当時の教え子たちは、この春、大学受験に臨み、「大学入学共通テスト」の初めての受験生となったわけですが、記述式問題の導入や英語の民間試験の活用などをめぐる突然の方針転換に、受験生たちから不満や不安の声が上がったのは記憶に新しいところです。
愛知県教育委員会は、なによりも受験生の混乱を招かないように、入試改革の内容を、より具体的に、かつ丁寧に説明していくことが求められていると思います。

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