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感染対策どこまで必要?

新型コロナウイルスの感染が再び拡大しないよう、「新しい生活様式」が求められています。
感染対策は、何をどこまでやればいいのか。
感染症の専門医、公立陶生病院の武藤義和医師に聞きました。
NHK名古屋放送局の松岡康子記者が取材しました。

まずは、再開した学校現場での対策についてです。

Q 教室でフェイスシールド必要ですか?

【デメリットのほうが大きい】
フェイスシールドは本来、目に入ってくる血液など飛まつを予防する医療用のものです。
ウイルスの横からの侵入は防げず、感染リスクが劇的に減るというものではありません。
直接飛んでくる飛まつを除けば、マスクのみと比べて感染を予防する効果に差はないと思います。
みんながマスクをしているような今の状況では、飛まつが目について、しかも運悪く感染するということはほぼないです。
むしろつけていることによる不快感や、曇って転んだときのけがのリスクのほうが高いと思います。

Q 休み時間に遊具や本は使ってもいい?

【使わせないより手洗いを】
使ってもいいです。
しかし使ったあと手洗いをすることが大事です。
もし感染した人が使用していたら、遊具や本などの表面から感染する可能性は確かにあると思いますが、使用した後に手を洗うことで、そのリスクは最小化できると思います。
屋外で遊具で遊ぶことも、それ自体が集団発生のリスクというわけではなく、手を洗わないことが問題ですので、休み時間が終わったらすぐに手を洗う、これが重要です。
ピアノや黒板などの共有物も一緒です。
触ったらまずは手洗いをしましょう。
顔を触る前に手を洗う。これを守れるなら、学校で何を触っても問題ないと考えます。

Q 体育は感染リスク高い?

【屋外のスポーツならリスク低】
体育では、顔を近づける行為、組み合う行為、3密の行為、これらが感染リスクとされています。
具体的にスポーツ名を挙げるのはそれぞれの状況にもよるため難しいですが、少なくとも屋外の広いスペースで行う行為で、多少ぶつかることがあるくらいのスポーツでは、リスクはほぼないと思います。
しかしもちろん終了後の手洗いは重要です。
また、これから暑くなります。スポーツ庁からも体育中のマスクの積極的使用は推奨していないため、熱中症のリスクからも無理してマスクを着ける必要はないと思います。

Q 給食の配膳は先生がやったほうがいい?

【先生がすることで感染が少なくなる根拠なし】
しっかりとした感染対策ができていれば、誰がやっても問題はないと思います。
つまり、マスクをしてきちんと手を洗うことが重要で、そういう場合は子どもたちがやることでも何ら問題ないと思います。
むしろ子どもはふだんの行動範囲が狭いため、外からウイルスを持ち込んで感染を広げるリスクはそれほど高くないです。
やらせないと最初から決めつけるより、しっかりと感染対策について教育した上で、子どもたちに自らやらせるほうが、結果的には長い目でみた場合に有効な感染対策となると思います。

Q 給食時のついたては必要ですか?

【ついたては不要】
確かにマスクをしない状況ですから、アクリル板などは、フェイスシールドよりは有効であるとは思います。
ただ、換気を良くして、みんなが対面ではなく、前を向いて給食を食べる状況であれば、飛まつを浴びるリスクがないため必要ないと思います。

Q トイレ掃除は先生がやったほうがいい?

【感染対策をとれば誰がやってもリスクが上がるわけではない】
確かにダイヤモンドプリンセス号の感染者が使用したトイレなどからもウイルスが検出されたという報告がありますが、換気が悪いトイレで、密閉空間であったことが原因とされています。
このためトイレ掃除のときは換気をすること。
そして掃除をしたあとはしっかり手洗いをすべきですし、使い捨て手袋を用いての掃除もいいかと思います。
そういう意味で、行う人がしっかりとした感染対策の知識を持っていれば、年齢は関係ないと思います。

Q 掃除道具の消毒の頻度は?

【手を洗ったほうが効果あり】
木材や鉄材などにも確かにウイルス付着は1~3日間ほどあると思います。ただし、その都度手を洗うことで、そのウイルスからの感染リスクは断つことができます。
毎日消毒するならまだ効果があるかもしれませんが、誰かが触れた瞬間に汚染されるため劇的な効果はないと思います。
基本的には使用後に手を洗うことを徹底するほうがよっぽど効果があると思います。

Q ゴミ箱の撤去必要?

【ゴミ箱を撤去する必要なし】
ゴミを捨ててはいけない理由はないと思います。ウイルスはティッシュなど何かに付着した後に舞い上がることはないです。ちゃんと手袋をしてゴミ出しをするなどの対応と手を洗うこと、これだけで十分だと思います。
ゴミ箱を撤去してしまうと、逆に鼻をかんだティッシュを周囲に捨ててしまう可能性もあり、不衛生となるリスクが高いのではないでしょうか。

続いて、日常生活での感染対策についてです。

Q スーパーの店員は手袋着用がいい?

【手袋は感染を広げる】
手袋のつけっぱなしは、むしろ感染を広げるのでおすすめできないです。手袋は自分を守ることはできますが、お客さんのお金、食材、カゴなど全てを触れて、その後に次のお客さんのものを触るため、自分の手袋を介して人から人へ感染源となっていきます。
さらに、「手袋の上からアルコール消毒すればいい」と言う人がいますが、それは間違いです。手袋のゴムはアルコールに弱く、見えない穴が開くうえに、ゴム表面のアルコール消毒効果は素手よりも弱いです。手袋での接客は感染の橋渡しとなるどころか、自分すら守ることができません。
医療現場では一人の患者さんを診療するたびに交換します。手をその都度しっかり洗うだけで必要にして十分であると思います。

Q レストランは何人なら大丈夫?

【人数より手洗い、3密避ける、換気が大切】
人数を明確に決めることはできないと思います。少人数のほうがリスクは小さいと思いますが、1000人でごはんを食べても誰も感染者がいなければ感染は起こり得ないし、3人で食べても感染者がいたら集団発生が起こり得ます。だから家族の食事でみんな感染することもあれば、大きな集会でも誰も感染しないということも十分あります。
現在のような非流行期においては、個別の感染リスクを考えるよりも、換気の良い条件下で、手洗いをしっかり行うこと、3密を避ける、可能なら2メートル程度空ける、という対策が最も効果があると思います。加えて、人数によらず、行くのであれば同僚や家族などのようにふだんの行動をよく知っている方々と行くことはそれほどリスクではないと思いますが、初対面の事前の行動歴がわからない方々との食事は今は避けたほうがいいと思います。

Q つり革、手すりは安全ですか?

【顔を触る前に手洗いを】
つり革や手すり、ブザー、紙、おもちゃなどのようなプラスチック表面にもウイルスは24時間程度生存できると言われています。
だからこそ使用後の手洗いが極めて重要と考えます。

Q マスクはいつも着用?

【怖いのはウイルスより人の目】
私自身は、屋内で周りに人がいなければしていません。
それは屋外でも同様です。屋外は感染リスクは限りなく低いですし、熱中症のおそれもあります。
いまの日本の中で私が恐れているのは、ウイルスではなく、人の目です。マスクは必要な状況で使い分けて使用するものなのですが、「あいつはマスクをつけていない不道徳な人間だから糾弾しても良い」という社会的な圧力が蔓延しています。
こういう圧力が強まる社会になってしまうと、正しい感染対策がなされないどころか、「集団でひぼう中傷を受けるので患者と診断されたくない」として検査をすることを拒否する方が出てきます。現実に、4月頃までは全く疑いがなくても「検査してほしい」と病院に来られた方が多かったのですが、最近はむしろ「患者と診断されたくない」という方が増えています。社会全体が患者さんを守ろうとする気持ちを持つべきであることを忘れないでほしいです。

いま大切な感染対策のまとめ

▽子どもに使わせないより、使ったあとの手洗いを。
▽ゼロリスクはない。
▽“なんとなく”ではなく根拠に基づいた感染対策を行う。
▽感染に気を取られすぎてほかのリスクを高めない。
▽怖いのはウイルスより人の目。

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