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夜間中学に求められる役割は

  • 2023年10月02日

「夜間中学」をご存じでしょうか?
戦後の混乱期に学ぶ機会を得られなかった人たちのために、昭和20年代に設けられました。
愛知県内にあった2校は入学者の減少で廃校となりましたが、再度、設置に向けた検討が進んでいます。
今、夜間中学に求められる役割は何なのか。
これまで、受け皿となってきた民間の「自主夜間中学」の取材から考えます。
(NHK名古屋 記者 佐々木萌)

 

名古屋市内にある自主夜間中学「はじめの一歩教室」です。
未就学児から80代までの186人が在籍しています。

そのうちの1人、山田美祢子さん(80)。
ここで漢字の読み書きを学んでいます。

戦時中に半身不随となった父親の世話をするため、学校にはほとんど通えませんでした。生活に必要な基本的な知識も知らないままだったと言います。

山田美祢子さん
「お米がどうやってできるかも知らなかった。それこそキュウリがどうやってなっているかも、なすがどうやってなっているかも全然知らなかった」

山田さんは、今、自主夜間中学に通い、読み書きができること、間違えているとわかることに喜びを感じながら学んでいます。

山田美祢子さん
「ここへ来て、『耳』とか『左』とか『右』、『目』とか『鼻』とか、そういう字も覚えて、完全に書けるようになりました。ここへ来させてもらって、いちばん幸せなんです」

ここに通っているのは、子どものころに学習の機会を得られなかった人だけではありません。

外国にルーツがある人たちです。
国籍はネパールやフィリピンなどさまざまで、日本語の習得レベルも人それぞれです。

記者
「どんなところが難しいですか?」

女子高校生
「漢字。日本で働きたい」

記者
「この教室で学ぶのはどうですか?夢は何ですか?」

男子中学生
「楽しいです。夢はエンジニア」

5年前、ネパールから来日したサプコタ・ジョティさん。
高校の途中で来日したため、日本で中学に入ることもできず、独学で日本語を学んでいたといいます。その後に出会ったこの教室で受験勉強をサポートしてもらい、今は定時制高校に通っています。

サプコタ・ジョティさん
「ここに来たのは10月で、2月が高校受験で。毎日ここきて勉強して、家でも勉強して、合格できて、すごくうれしかった。ここに来ていなければ、高校も卒業できないから大学にも行けなくて。大学に入るのはいったん諦めていたけれど、ここに来て夢が叶ってきました」

今も、進学に向けて日本語や高校の勉強をサポートしてもらうため、ここに通い続けています。

サプコタ・ジョティさん
「自分が将来のことをどうしようと迷ったら、すぐに相談できるので、すごく助かります」

この教室では、勉強だけでなく、日常生活のルールを教えているほか、防災講話も開いています。

教室の代表は、今後、設けられる県立の夜間中学は、誰1人置き去りにしない学びの場となることを期待しています。

笹山悦子 代表
「不登校の子、ひきこもりの方、外国人、高齢者、心身にハンディを抱えた方、どんな方も排除されないような学び直しの場が必要だと思う。学校教育だけで完結するのでなく、できるだけいろんな方々のニーズに応えられるように協力関係をつくっていけるといいのかな」

夜間中学の存在の大きさは、この教室が担ってきた役割だけでなく、教育委員会が行った調査でも明らかになりました。

夜間中学に期待することとして、「生活のことや進路の相談」という回答が最も多くなっていて、学習だけでなく、さまざまな役割が求められていることがわかります。

こうしたニーズを受けて、愛知県では、学習の習熟度に応じた3つのコースや、日本語指導に重点を置いた2つのコースを設ける予定です。

このほか、県内に在住・在勤する人、不登校の生徒も受け入れるほか、在籍期間も3年から最長6年まで延長できるようにするなど、柔軟な運用を行うとしています。

専門家は、多くの当事者の声を集め、きめ細かなサポート体制を整えることが必要だとしています。

東京外国語大学 小島祥美准教授
「識字に課題を抱えていたり、字が読めても、それを理解して、自分の思いを伝ることができないという課題を抱えたりした方々が、今回、学ぶ場を求めているわけです。アンケート調査だけでそうした方のニーズを把握するのは限界がある。だからこそ、学校を作っていくプロセスに当事者の声や、その方々に関わる方たちをメンバーに入れて、一緒に作り上げることがすごく重要です。また、夜間中学に通う方々の中には、生活面だけでなく、精神面、体力面にも課題を抱える方々が多くいる。ソーシャルワーカーなど、他機関、他分野でのネットワークで支えられるような体制もすごく重要だと思います」

公立の夜間中学は、愛知県が設置する4校のほかに、名古屋市も1校設置する予定です。
いずれも、多様なニーズに応えられる場となるのか、今後の検討の行方に注目していきたいと思います。

  • 佐々木萌

    NHK名古屋局 記者

    佐々木萌

    2019年入局。名古屋局が初任地。県警担当を経て現在は愛知県政を担当。児童ポルノや不登校などを取材。

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