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夏、プールサイドに立ち続けて

  • 2023年06月14日


「夏、プールサイドに立ち続けて」

「プールサイドに4時間いたこともありました」
そう語ったのは市立小学校の教員です。強い日差しが照りつける中、プールサイドでプールの授業を見守っていました。本格的な夏を迎え、学校では水泳の授業が始まります。プールの維持管理や水泳指導に監視役まで。これまでの学校の水泳授業は、教員の重い負担によって成り立ってきた現実がありました。(NHK名古屋 吉川裕基)

15年続けたプール管理

大府市立大府小学校に勤務する村上誠教諭(41)です。学校では教務主任という役職を任されています。小学校全体の時間割や学校行事のスケジュール管理などを一手に担っています。教員になって15年という村上教諭が、新任の頃から毎年続けてきた仕事があります。それは、学校のプールの管理です。

村上教諭
「もともとは中学校の教員をしていて、新任の時に先輩の教員からやり方を教えてもらったんです。それからずっとプールの管理をしてきました」

私(記者)の記憶をたどれば、一緒にプールに入って指導をしてくれた先生の記憶はなんとなく思い返すことができます。でも、プールを管理している先生の姿を思い出すことはできませんでした。そこで、村上教諭からプールの管理について話を伺うことにしました。

雨の日も、土日も

学校のプール開きは毎年6月初めごろ。1学期が終わる7月半ばごろまでプールの授業が続く学校もあります。取材に訪れたのは5月末。職員室から鍵を持ち出してプールに向かいます。事故が起きないようにプールの門は常に鍵がかけられています。

鍵を開けてまず向かったのが機械室。プールの水をきれいにするための機械が収められています。村上教諭は、プールがある時期は毎朝7時に出勤。授業が始まるまでにプールの水質がきれいな状態に保たれるように消毒を行います。

授業の合間にも水質が落ちていないか1日に7回、プールの3か所で塩素などの濃度を確認してきました。授業が中止になった雨の日も、学校のない休みの日も、子どもたちが安全に授業が行えるように水質を管理してきました。

村上教諭
「プールは子どもたちが非常に楽しみにいしているので水質が悪くて授業がなくなるのはかわいそうなので管理は徹底してやっていました」

4時間プールサイドにいたことも

それだけではありません。プールの授業では、指導する教員とは別に監視を担当する教員も必要です。担任をしていない村上教諭は、教頭や校長などと交代しながら監視を続け、長い日では4時間に及びました。真夏日になるような暑い日にも、プールサイドにある監視台の上で、おぼれそうになっている子どもがいないか監視を続けてきました。

村上教諭
「大きめの水筒を持ってここに座っていました。子どもたちが楽しくやっているので、いいなあと思いながらも、安全に授業ができているか、十分注意して緊張して座っていました。プールの時期は当たり前かのようにやっていました」

民間プールなどの利用が増加

こうした教員の負担を軽減しようと、大府市では令和5年度から市内の小学校全9校でプールの授業を民間のスポーツクラブで実施しています。今回、NHKが愛知県内すべての市町村の教育委員会に取材したところ、公立の小学校960校のうち、およそ14%にあたる132校で今年度、水泳の授業を民間や公営のプールなどで実施することがわかりました。
その理由について教育委員会の担当者からは
「プールの老朽化が進み、建て替えるよりも民間のプールを活用した方が経費が削減できる」
「プールの水質管理が教員の大きな負担となり長時間勤務につながっている」などといった意見が聞かれました。

民間プールでの水泳授業とは?

小学校の水泳授業を民間のスポーツクラブでどのように実施しているのでしょうか。
大府市の小学校で初めてスポーツクラブで授業を実施した日に取材しました。午前8時20分、朝の会が終わるとすぐに廊下に整列。およそ1キロ離れたスポーツクラブまで移動します。1年生から3年生はバスで、4年生から6年生は歩いて移動します。取材したのは4年生のクラス。子どもたちが水泳の道具が入ったカバンと水筒を肩に下げて歩いて移動します。担任の教員1人が先頭に立っておよそ30人の児童を引率します。

天気はくもり、気温は27度。少し汗ばんできた頃にスポーツクラブに到着。およそ20分かかりました。移動と授業の時間を考えて、この学校では2時間分の授業をプールに費やしています。授業が始まる前に初めての授業について子どもたちに話を聞きました。

4年生男子児童
「クラスの中でここ(スポーツクラブ)に通っている友達もいて、きょうの(スポーツクラブの)先生は知っている人だから楽しみ」

4年生女子児童
「はじめて来る場所だからドキドキする。クロールとか泳げるようになるといいな」

8時50分授業開始。毎週木曜日、スポーツクラブの休館日を利用して小学生だけが貸し切りで授業が行います。およそ30人の児童に対してインストラクター3人とスタッフ1人、引率の教員1人のあわせて5人で授業を見守ります。学校のプールでは、指導する教員1人と監視役の教員1人のあわせて2人でした。まず、インストラクタ-が子どもたちがどの程度泳ぐ力があるか見極めた上で、レベルに応じた指導が受けられます。指導内容は、スポーツクラブと小学校が事前に相談をして学年別の目標に応じた内容を指導しているといいます。教員は、プールサイドから子どもたちの安全や様子を見守ることに専念していました。

4年生の担任の教員
「学校のプールで1人でやっていた時は評価がほんとにしづらくて、教えてくれる人がいて自分が横から見ているものだから僕も子供たちの様子が見やすかったです」

4年生の男子児童
「楽しかったです。ボビングとかクロールがやれてうれしかった」

4年生の女子児童
「泳ぎが上手だからプールの先生の方が教えるのが上手だった。クロールを泳げるようになりたいな」

教員にゆとりができた

学校のプールを使わなくなったことで、時間にゆとりができ、教員どうしや子どもたちと接する時間が増えたといいます。プールの取材から帰った後、職員室に入ると村上教諭がほかの教員たちと打ち合わせをしていました。
 

同僚の教員
「プールの時期になると本当に空きの先生がいらっしゃらないような状態だった。職員室には誰もいない。手の空いてる動ける先生が何人かいらっしゃるってことはすごく大事だなっていうふうに感じます」

村上教諭
「学校でプールの授業をするのは当たり前だったので、少し寂しさもあります。プールをスポーツクラブで実施できることになって、担任の先生にも時間のゆとりと心のゆとりもできますので、今まで以上に子どもたちと楽しく学校で過ごしていきたいと思います」

 

  • 吉川裕基

    NHK名古屋放送局

    吉川裕基

    盛岡局、岐阜局を経て2022年から名古屋局 教育分野を担当 教員の長時間労働、部活動改革、校則問題などを取材

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