改正DV防止法 何が変わる? 「精神的な暴力」も対象に
- 2023年05月19日
あなたの周りにDV=ドメスティック・バイオレンスに悩んでいる方はいませんか?
DVに苦しむ人は増加傾向で、東海地方でも深刻な問題になっています。対策を強化するため、5月12日、改正DV防止法が成立。改正のポイントは、身体的な暴力ではない、ことばや態度による「精神的な暴力」です。
いま悩んでいる方は、まずは相談機関にご相談を。内閣府 DV相談プラスでは24時間相談を受け付けています。
DV相談プラス:電話番号 0120-279-889 メール・チャットの相談はこちら ※NHKサイトを離れます
また、電話で #8008 (DV相談ナビ)にかけると、最寄りの自治体の相談窓口につながります。
分かりにくいDV ”精神的暴力”の実態
被害を受けた女性
「それはDVって言われても最初は分からない。手はあげない人でしたから。ただ、心に受けた傷というのは、一生です」。
かつて元夫の言動に苦しめられ、最近離婚した40代の女性です。暴言を言われるようになったのは、子どもを妊娠した頃でした。
被害を受けた女性
「『子どもはお金がかかる、いらない、何週目までだったらおろせるからおろしてこいよ』と。私がお金がないなら働くと言うと、『こんなおばはん誰がやとってくれるん』と。すごく軽んじられた。子どもをおろせまで言われた、そこの傷はやはり深いです」。
女性が意を決して離婚を切り出すと、「鬼畜野郎!」「この外道が!」、元夫は頻繁にメールや電話などで中傷を繰り返しました。
被害を受けた女性
「一時期死んじゃいたいぐらいしんどいときもあったんですよ。手はあげられていないけれど、蹴られる、殴られる、首絞められる、殺されそうになるっていう夢を何度も見て。別居できたときも、駐車場で待ち伏せしているのがわかって、外に出るのが怖いんですよ、何かされるかもしれない」。
こうした「精神的暴力」を訴える切実な声が、いま次々と寄せられています。内閣府が3年前に立ち上げた窓口に寄せられた相談は年におよそ4万件。そのうち「精神的暴力」を含むものが実に6割に上りました。
ただ、広がる「精神的暴力」に、これまでのDV防止法では十分対応できていなかったといいます。
東海地方を中心に600件以上の離婚を扱い、今回の法改正にもかかわった可児康則弁護士です。
DV防止法に基づいて出される「保護命令」。加害者がつきまとったり、家や勤務先のまわりに近づくことを禁止できるのですが、あくまで「身体的暴力」を受けるおそれが大きい場合に限られていました。
保護命令を出してほしいと申し立てた件数は、2001年にDV防止法ができた当初は増えていましたが、この10年ほどは徐々に減少してきたのです。
可児康則 弁護士
「最近は精神的暴力の訴えが増えているのに、身体的暴力でないと保護命令が使えないという状況であり、それは実際の被害者のニーズとずれてしまっている面があったのかなと。いまのDV法というのが被害者を守る武器になっていないという状況があったものですから、それをなんとか改善しなきゃいけない」。
法改正で何が変わる? ”精神的暴力”認められるには
こうした議論を受けて、5月12日に成立した改正DV防止法。精神的暴力も保護命令の対象になりました。さらに、保護命令の期間を延長。違反した場合の罰則も強化されました。
一歩前進したと言う可児弁護士。ただ、どのような言動が精神的暴力にあたるのか、どんな証拠が必要かなどがあいまいで、今後の課題も多いといいます。
可児康則 弁護士
「(精神的暴力の内容を)あまり限定するのではなくて、少なくとも典型的なものについてはすべて含めるような方向で事前に解釈基準を示すことが必要なんじゃないかと思います。
DVというのはあくまでも『支配』であって、暴力は手段にすぎないんですから、そこを区別するんじゃなくて、精神的暴力も身体的暴力も同等なものだと、同じだけ被害者にダメージを与えるものなんだというのは、ぜひ社会のみなさんもそういった意識を持ってほしい」。
もし精神的暴力をうけて・加害者から離れたい ・保護命令を出して欲しい という場合、可児弁護士は
・心療内科などからの診断書
・SNSやメールの記録
・暴言を受けたときの録音・録画
こうしたものが証拠になりうると話しています。改正DV防止法の施行は来年4月からです。
いま悩んでいる方は、まずは相談機関にご相談を。内閣府 DV相談プラスでは24時間相談を受け付けています。
DV相談プラス:電話番号 0120-279-889 メール・チャットの相談はこちら ※NHKサイトを離れます
また、電話で #8008 (DV相談ナビ)にかけると、最寄りの自治体の相談窓口につながります