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どう考える? “子連れ出勤” 愛知 豊明市が本格導入へ

  • 2023年04月28日

愛知県豊明市で、行政初の試みだとして行われた職場への「子連れ出勤」
1か月間の試験導入の結果を検証し、市は子連れ出勤を今後、本格導入することを決めました。

大きな理由は「一定のニーズがあり、業務にも影響がなかった」こと。
一方で、この試みについては賛否両論さまざまな意見が市に寄せられたといいます。

子育て世帯をはじめ、多様なライフスタイルを受け入れる「寛容な社会」を目指そうとするこの動き。

あなたはどう考えますか?
(NHK名古屋 鈴木博子 吉川裕基)

子どもがワチャワチャできる役所を目指して

豊明市役所

愛知県豊明市では3月6日からの1か月間、子連れ出勤を試験的に導入しました。

対象は「0歳から小学校3年生までの子ども」。

“子どもがワチャワチャしていてもかまわない職場”というイメージから、この取り組みを「ワークwithチャイルド」(愛称「ワチャ」)と名付けました。

庁舎内に貼り出されたお知らせ

試験導入のきっかけは、市長や担当課長らが、子育て支援を議論する内閣府のWEB会議に出席したこと。

豊明市でも、多様化する働き方への支援ができないかと考えました。

試験導入した時期は年度末。
保育園や学校の休みなどの事情から、どうしても子どもを職場に連れてこなければいけない場合もあると考え、あえて市役所の業務も忙しくなるこの時期に取り組みを始めたといいます。

豊明市 小浮正典 市長
「多種多様な業務のある市役所でできれば、民間のほかの事業所でもできるのではないかと考えた」

豊明市の“子連れ出勤”そのルールは?

“子連れ出勤”といっても、何でもOKというわけではありません。
市では、いくつかの条件を設けました。

《条件》
▼託児所や託児スペースは設けず、子どもの世話は職員自身が行う。
▼毎日ではなく、一時的や緊急的な場合を想定。
 業務に支障が出る場合、子どもを帰宅させた方がいいと判断した場合などには早退する。
▼自席のほか、サテライトオフィスの利用も可能。
▼保育施設、清掃事務所、給食センターの職員は、現場での対応が必要となるため対象外、など。

サテライトオフィス

子連れ出勤 実際どうですか?

市役所での子連れ出勤、実態はどんなものなのでしょうか。
3月20日、試験期間の折り返しの時期に、市役所を取材しました。

午後1時半、小学校2年生の子どもを連れた女性職員が出勤しました。
ふだんと同じ職場で隣に子どもを座らせ、宿題をする様子を見守りながら業務をこなしていました。

この女性職員はふだん、自分が仕事で家にいられない放課後の時間帯などには、祖父母に面倒を見てもらっているといいます。

家族の負担を少しでも減らせたらと、今回の試験導入を期に初めて職場に子どもを連れてきました。

女性職員
「子どもが何をしているのかを確認しながら仕事ができるので、すごくよかったと思います」
職員の子ども
「ママの働くところを見れてよかった。楽しかった!」

市は、試験導入の期間に子連れ出勤を利用した職員にアンケートも実施しました。

1か月間での利用者は、対象となる正規職員やパート職員およそ200人のうち23人。

内訳は男性10人、女性13人。
子どもの年齢は未就学児よりも小学生以上が多かったということです。

《アンケート調査結果》※回答は任意

◇利用者のうち
 「また利用してもいいと思った」 71.4%
 「利用は難しいと思った」    23.8%

〈自由記述の回答〉
 「緊急時の保障があるのがありがたい」
 「子育てと両立できる」
 「仕事を気にしながら休むよりも少しでも仕事できた方がいい」など

◇子どもを受け入れた職場の人のうち
 「子どもがいてもかまわない」 70.2%
 「受け入れ不可」        7.1%
 「どちらでもない」      22.6%

〈自由記述の回答〉
 「和んだ」
 「雰囲気が良くなるなどプラスの側面がある」
 「市民の目が気になる」
 「業務に集中できない」
 「仕事をする雰囲気ではない」

この取り組みには、市民だけでなくそれ以外の人からも意見が寄せられ、賛成と反対の割合は「2:1」程度だったということです。

また、試験導入を進めた担当者の中でも、公務員には職務専念義務があるため「子どもがいる状態でも仕事ができるのか」という懸念があったといいます。

豊明市は4月28日の会見で、今後、子連れ出勤を本格導入することを発表しました。

利用した職員の声のほか、特に業務上の問題が生じなかったことなどが理由だといいます。

豊明市 小浮正典 市長
「市役所の業務は多岐にわたり、子どもを連れて働きやすい環境と、深刻な相談を受け付ける窓口業務など、そうではない環境がある。それでも仕事を進めなければいけない時はあり、親子ともに安心していられる環境の一つとして職場があると思う。全てのニーズには応えられず、不十分ではあるが、ベターな選択だと思う」

豊明市 小浮正典 市長

また、市の取り組みだけで終わらせたくないとして、今後は民間企業にも働きかけていくとしています。

豊明市 小浮正典 市長
「今回予算は一切かけていない。市役所でできたことは、民間の事業所でもやれると思う。『子どもを社会で見ていく』という考え方に、多くの人は同じ方向を向いていると感じた。一方で制度の趣旨を十分理解してもらえない人からは否定的な意見もあり、行政として説明責任を今後も果たしていく必要がある」

みなさんは「子連れ出勤」どう考える?

豊明市のこの取り組み。
賛否をさまざまな意見が寄せられたということからも、職業の違いや職場環境の違い、子育て中かそうでないかなどの違いによって、感じ方はさまざまに異なるのだと思います。

取材した私も、同僚と一緒に考えてみました。

20代 鈴木記者(1歳育児中)
「0歳の頃に子連れ出勤を試みたことがあるが、無理だった!周囲からの視線もしんどかったし、謝りまくった。でも、在宅ではできない仕事があるのも事実。どうしても…の時に連れて行ってもいいんだと思える場所があるか、ないか、その違いは大きい」

30代 男性記者(4歳育児中)
「4歳くらいの子どもはなかなかじっとしていられないし、嫌になったら『帰りたい!』と騒ぐくらいの自己主張もあるので、正直この時期はちょっと無理かなと思った。でも、ふだん家庭と保育園ばかりで過ごしている子どもが、職場の人ともふれ合えれば、子どもの世界が広がるきっかけにはなりそうで、それはちょっといいなと思う」

50代 女性デスク(高校生の子どもあり)
「子どもが小さいころ、土曜や日曜に短時間の仕事があるときなどは、子どもを職場に連れてきていました。男性デスクの中にも子どもを連れてくる人もいて、『熱が出た』といえば顔が浮かび、お互い助け合える雰囲気に。たくさん助けてもらったので、管理職となった今、子育て中の女性、男性、みんなが働きやすい職場を作っていくのが役目だと思っています」

  • 鈴木博子

    NHK名古屋放送局

    鈴木博子


    2017年入局

    初任地の高松局で警察・司法・県政取材を担当。
    2023年から名古屋局。育児と仕事を両立しながら、自分自身も働き方を模索しています。

  • 吉川裕基

    NHK名古屋放送局

    吉川裕基

    盛岡局、岐阜局を経て2022年から名古屋局 教育分野を担当 教員の長時間労働、部活動改革、校則問題などを取材

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