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消える学校と継ぐ島の伝統 愛知・日間賀島

  • 2023年04月28日

2023年3月、愛知県南知多町にある離島、日間賀島で唯一の中学校が閉校になり、76年の歴史に幕を閉じた。その学校には受け継がれてきたある伝統があった。
(NHK名古屋 中川聖太)

島唯一の中学校の最後

愛知県南知多町の日間賀島

愛知県の南知多町の南端にある師崎港から船でおよそ20分。
人口およそ1700人の島、日間賀島。

 

日間賀中学校で授業を受ける生徒

島唯一の中学校、日間賀中学校が2023年3月、閉校した。昭和22年に開校し、高度経済成長期にはピークとなる235人の生徒が在籍。これまで3230人の生徒を送り出してきたこの学校も最後は全校生徒の数が47人にまで減少していた。

伝統の太鼓

この学校で受け継がれてきたのが、太鼓の授業だ。生徒たちは月に2回ほど練習し、毎年、夏祭りなどで披露するのが島の伝統になった。「島太鼓」と呼ばれ、島民に親しまれてきた。

 

日間賀中学校の最後の校長 長田智幸さん

島太鼓の歴史を日間賀中学校最後の校長、長田智幸さんが教えてくれた。

きっかけは24年前、島の祭りでプロの太鼓奏者に演奏してもらったこと。
太鼓の魅力を知った島民が中学生に伝承してもらいたいと太鼓奏者を指導者にして生徒に学ばせることにした。
次第に上級生が下級生に教えるようになり、生徒自身で練習メニューを考えて太鼓の技術を磨いていくようになった。
先輩たちから受け継いできたことを後輩に伝えていく。
それが日間賀島の島太鼓だった。

日間賀中学校 長田智幸 校長
「1つの日間賀島を象徴するものだなと思ってます。島の人たちもその太鼓を待ってくれているので、これは絶対無くしてはいけないっていう風に思ってます」

島太鼓の魅力とは

卒業生の鈴木敦之さん

閉校で岐路にたった伝統の島太鼓。それをなんとか残そうと、卒業生たちが動いた。
その1人、島の旅館の支配人の鈴木敦之さん。
鈴木さんは日間賀中学校の授業で太鼓に触れてその魅力にのめり込み、高校以降も練習を続けて、大学生の時には海外でも披露した。

鈴木敦之さん
「ドンっていう音だけだけどでもそのドンが深いというか。本当に人を楽しませる、喜んでもらうっていうところを本当に伝えれるいい楽器だなって」

閉校後、どうやって島太鼓を残していくか。鈴木さんたちが考えたのは地域のクラブを立ち上げて、学校の授業に代わって受け継ぐ場をつくることだった。

地域クラブ 代表 鈴木敦之さん
「うまさとか下手くそとか何かそういうことよりかは何を伝えたいか、で見ている人にそれが一番伝えるのが一番重要かな。僕自身は本当にそう思ってる」

地域クラブとして受け継いでいく

放課後に学校に集まる生徒

閉校の11日前の2023年3月13日、日間賀中学校の体育館に鈴木さんと生徒たちの姿があった。

地域クラブを立ち上げて初めての練習。授業ではないため、参加は任意だったが、多くの生徒たちが集まった。

地域クラブに加入する生徒
「日間賀島の行事だからしかも今年で閉校するから。練習してうまくなりたい」

生徒に教える鈴木さん

閉校前に練習を重ねた子どもたち。目的は母校の歴史の締めくくりに閉校式で太鼓を披露することだった。

夜も遅くまで生徒たちは一生懸命ばちを振る。

迎えた閉校式

閉校式を迎える生徒

2023年3月24日、日間賀中学校の閉校式。
生徒たちははっぴ姿で76年の歴史に終止符をうつ式にのぞみ、最後に太鼓に向かった。
演目は日間賀島をイメージして作られたという“日間賀の風”。

島太鼓を披露する生徒

1年生から3年生まで47人全員が力の限りばちを振るった。

保護者
「この子たちが集まって何かをやるっていうのはすごく私たちも仕事の励みになりますし、生活でもがんばっているからがんばれるっていうのはあります」。


「みんなが中学校が閉校していまうっていう悲しい気持ちと新しい生活の門出じゃないですけど、そういう気持ちもあってそれが音に乗っているなってすごい感じました」

 

2年生の生徒

2年生の生徒
「もう来ることないんだなと思ってこの場所に。悲しかったです。島太鼓は伝統的な行事になっているので これからの人たちもやっていってほしいです」

3年生の生徒

3年生の生徒
「小学生の時から太鼓を見てたのでやりたいなっていう時があってきょうは自分たちで太鼓をたたくのは最後だけどやっててよかったなって」

長年、子どもたちを育んできた日間賀中学校。その歴史は終わっても伝統の太鼓は続く。

取材を終え

取材で感じたのが、島民の人たちの伝統への愛でした。

同時に学校の存在の大切さも感じました。学校があったからこそ受け継がれ、島の伝統として残ってきたのではないか。
地域の核だった学校が閉校となるなか、文化や伝統をどう継承していくのか。地域のつながりの重要さも実感しました。
 

  • 中川聖太

    NHK名古屋 中部空港支局

    中川聖太

    2020年入局。警察、司法取材を経て2022年8月から中部空港支局で知多半島を担当。

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