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自転車の信号どれを守ったらいいの? NHK名古屋「マチコエ」

みなさんの「疑問」「不思議」をもとに徹底取材!
  • 2023年02月13日

みなさんが日常で感じる「疑問」や「不思議」をもとにNHK名古屋が徹底取材する新コーナー「マチコエ」。第1回の疑問は「自転車の信号機、どれを守ったらいいの?」。身近な疑問ですが、調べてみると意外と知らない“複雑なルール”が見えてきました。

(NHK名古屋 記者 田川優)

交差点で困った“サイクル爺さん”

去年11月、名古屋局にこんな「疑問」が届きました。

「自転車で車道を走っていて、交差点を車用の信号に従って直進しようとしたら、トラックのドライバーに注意されました。“歩行者用の信号を守れ”とのことです。どっちの信号を守ればいいのでしょうか」(ペンネーム「サイクル爺さん」)

愛知県警・交通部の取材を担当している私(=記者)。この質問を読んだとき、恥ずかしながら「どっちなんだろう…」と思ってしまいました。

同僚の記者に「どう思う?」と聞いてみると「たしかに気になっていた」という声が。これは取材せねばと、まずは疑問を投稿してくれた「サイクル爺さん」に会って話を聞いてみることに。

待ち合わせ場所は半田市にある知多半田駅前。
待つこと10分。
道路の向こうからクロスバイクにまたがったスポーティな男性が。

記者

投稿をくれた人ですか?

そうです

「サイクル爺さん」こと、河合さん(72歳)。
5年前に体力維持のため自転車を購入。
週に2回ほどサイクリングを楽しんでいるんだそう。

ヘルメットを身につけて車道を走るなど、日頃から自転車の交通ルールを意識していた河合さん。

しかし、去年の秋。
いつものようにサイクリングを楽しんでいたところ、予期せぬことに直面しました。
ある交差点を渡ろうとした時のこと。

現場の信号機に記されていたのは「歩車分離式」の文字。
「歩車分離式」の交差点では、車用の信号が青の時は、歩行者用の信号はすべて赤となります。

当時、車道を走っていた河合さん。
車用の青信号に従って直進しようとしたところ、反対車線から右折しようとしていたトラックに「歩行者用の信号を守れ」と言われたといいます。

河合さん

『自転車は軽車両だから車と同じだ』という解釈で車道を走っていて、車用の信号が青だったので、直進したわけです。そしたら、反対車線のトラックの運転手に指摘を受けたんです

びっくりされませんでしたか

びっくりしましたよ。びっくりしましたけど、うん?って思いましたね。『何が正しいんだろう』って

河合さんの疑問をしっかりと受け取り、調べてみることにしました。

みんな知りたい自転車のハテナ

「自転車はどの信号機を守ればいいのか」
まずは名古屋・栄の街なかで道行く人たちに話を聞いてみました。

20代男性
「僕は歩行者用の信号を選んでます。(Qそれが『正しいか』って聞かれたら?)うーん、ちょっとハテナなところはありますね…」

30代女性
「信号機に『自転車』って書いてあればそっちの信号を見ますね。その時に歩道を走っていれば歩行者用の信号を守るようにしています」

10人ほどに話を聞きましたが、判断はさまざま。
街の人たちも信号機には悩まされているようでした。

それもそのはず。
街なかをじっくりと観察してみると、交差点にはさまざまな標識やマークがあるのです。

「スクランブル式」の文字。
車道上に描かれた自転車のマーク。
信号機に併設された「歩行者・自転車専用」の標示板、などなど。
少し歩いただけでも、4パターンの交差点が見つかりました。

教えて、B-Force!

深まる、信号機の謎。

「ここは“あの人たち”の力を頼るしかないか」
答えを求めて会いに行ったのは…。

「自転車対策小隊、B-Forceです!」
背筋をピシッと伸ばし、ヘルメット姿で敬礼するこの人たち。

愛知県警の自転車専用の取り締まりチーム「B-Force」。
2016年に誕生し、子どもや高齢者向けに自転車教室も開催する、交通ルールのプロ集団です。

単刀直入に疑問をぶつけてみました。

記者

自転車はどの信号を守って渡ればいいんでしょうか?

愛知県警“BーForce”山口貴哉巡査長
自転車で車道を走っている場合は、車用信号機に従って走行していただく。逆に歩道を走っている場合は、歩行者用信号機に従って走行してもらいます

答えは意外にもシンプル。
交差点を横断する際は『自分が走ってきたほうの信号機を守る』のだそうです。

『歩行者・自転車専用』に注目!

ただしここで大切なのは『例外もある』ということ。

愛知県警“BーForce”山口貴哉巡査長
「いちばん見ていただきたいのは、歩行者用の信号機に『歩行者・自転車専用』という標示板があるかないかです。これがある場合は、それまで車道を走っていても一度歩道側に移動して『歩行者・自転車専用』の信号機の方に必ず従って下さい」

なるほど…。
交差点を渡るときには、いろいろと注意して見なければいけないようです。

《記者の取材メモ》
「歩車分離式」の交差点であっても、「歩行者・自転車専用」の標示板がある場合は歩道側の信号機を守ることになります。
疑問を寄せてくれた河合さんがトラックに注意された交差点には「歩行者・自転車専用」の標示板はありませんでした。なので車道を走っていて車用の信号を守った河合さんの渡り方は正しかったということになります。疑問の投稿、ありがとうございました!

自転車が走るのは「歩道?」「車道?」

当初の疑問にはお答えできた一方、もう一つ聞いてみたいことが。

今回、街なかでたびたび聞かれた疑問。
「そもそも自転車って、歩道と車道どっちを走るの?」という声です。

これについては…。

愛知県警“BーForce”山口貴哉巡査長
「自転車は“軽車両”なので原則、車道を走ってください。ただし、『13歳未満の子ども』や『70歳以上の高齢者』、『体が不自由な方』は歩道を走行していただいてもかまいません。また『自転車通行可の青色の丸い標識がある場合』、工事や道幅が狭いなどの理由で『車道を走るのが危険な場合』も歩道を走ることができます。歩道を走る場合は中央から車道寄りの走行をお願いします」

なるほどここでも“例外”があるんですね。
調べるほどに自転車のルールの“複雑さ”も見えてきました。

《記者の取材メモ》
車道を走るのが危ないかどうかはその時々の判断になりますが、歩道を走る場合でもあくまで「歩行者が優先」。速度を出しすぎたり「チリンチリン!」とベルを鳴らしながら歩行者の間をすり抜けて走ったりするのはダメだということです!

どうしてこんなに複雑なの?

では自転車のルールはなぜこれほど複雑になっているんでしょうか。
交通部歴20年、警察本部の姫嶋次長に聞いてみると…。

愛知県警察本部交通規制課 姫嶋祥光次長
「もともと自転車は完全に“車両”として扱われていたので、車のルールに従っていればよかったのですが、交通事故死者数が非常に多くなった1970年に、自転車利用者の犠牲を減らそうということで、道路交通法が改正されました。これによって自転車が歩道も通行できるようになりました。その結果、若干わかりにくいようなところも出てきてしまったのかなと思います。自転車の性能もかつてとは変わってますし、利用目的も時代によって変わっていますので、それに応じて自転車利用者に強くお願いするポイントというのも変わってきているんです」

時代と共に自転車の走る場所が変化してきたことが、交差点の渡り方に複雑な事情を生んでいたことがわかりました。

調査結果、あらためてまとめます。

《ポイント》
①「自転車に乗っている際に守る信号は『自分が走行してきたのが歩道か車道かによって決まる』」
②「ただし『歩行者・自転車専用』の標示板があるときは歩道側の信号を守る」

自転車は子供もお年寄りも使う、生活に身近な乗り物です。
私も学生時代はほぼ毎日乗っていましたが、今回調べてみて、意外にもそのルールをちゃんと教わる機会はほとんどなかったなと思い返しました。
そして私と同じように多くの人が“迷い”を感じながら自転車に乗っていることもわかりました。

去年、愛知県内で起きた自転車が関係する事故による死傷者は5798人。
そのうちおよそ76%で、自転車側に交通違反があったということです。
警察もルールの周知が課題だとしています。

基本的なルールは警察のホームページなどで確認できますが、もし「わからない」ということがあれば最寄りの警察署に問い合わせてほしいと話していました。

あなたの“マチコエ”お待ちしています!

このコーナー「マチコエ」では、みなさんの疑問を投稿フォームで募集しています。
「これってどうして?」「調べてほしい!」という疑問がありましたら、ぜひ声をお寄せください。
あなたの「マチ」のあなたの「コエ」が取材のスタートです。

▼『マチコエ』投稿フォームはこちら▼
https://forms.nhk.or.jp/q/PSFWSCCU

  • 田川優

    NHK名古屋放送局

    田川優

    2021年入局。名古屋局が初任地で、愛知県警担当として事件・事故を取材。
    自転車は月に1回乗る程度。趣味は将棋。勝負の人間ドラマに魅せられています。

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