制作者から

小田朋美
【音楽】小田朋美

作曲家、ヴォーカリスト、ピアニスト。東京藝術大学音楽学部作曲科を卒業後、音楽活動を開始。ソロ活動に加えて「CRCK/LCKS」のメンバーとしても活動。CM、ドラマ、映画などの映像音楽制作も行う。ソロアルバムに『シャーマン狩り』など。Eテレ『天才てれびくんhello,』の音楽や映画『東京喰種【S】』(2019)『素敵なダイナマイトスキャンダル』(2018)の音楽を菊地成孔とともに担当。

『命のバトン』オリジナル・サウンドトラック配信中。

今回このドラマの音楽のお話をいただいたとき、出産や養子縁組について<自分ごと>として真剣に考えたことがないわたしで務まるのかどうか正直不安で、お引き受けしようか迷っていました。ですが、打ち合わせをしていくうちに、演出の大橋さんをはじめとしたスタッフの方々のこのドラマにかける思いの大きさが伝わってきて、私にできることがあれば、と思って音楽を担当させていただくことにしました。
一番最初にできたメインテーマの曲は、未来から聴こえてくる声を想像しながら歌いました。最近、「先」という漢字について考えていたのですが、「先」は過去を表す言葉でもあり、未来を表す言葉であるという事実に改めて驚かされます。未来は同時に過去でもある、そんな大きな時間の捉え方の豊かさを感じながら歌っていたら、聴こえているのは自分の声のはずなのに、誰の声なのかわからない感覚になる瞬間がありました。
この物語は、これから生まれてくる子供も含めて、色んな人の人生を<自分ごと>として引き受けた人びとが描かれています。鈴木梨央さんをはじめとした俳優の皆さんの眼差しが忘れられません。素敵なドラマに参加させていただけて、とても光栄でした。ぜひ、ご覧ください!

【制作統括】江川寛

ひとりの女子高生が妊娠に気づくことから始まるこの作品、ドラマの物語はフィクションですが、丹念な取材に基づく事実が細部にまで絶妙に練りこまれています。そんな背景をちょっと頭の片隅に置いてご覧いただくと、“絵空事ではない事実”だからこそ心に刺さるインパクトを感じていただけると思います。「そんなこと全く知らなかった」。まずはここから思いを巡らせていただけると幸いです。俳優のみなさんもリアルな役作りに粉骨砕身してくださいました。児童福祉司役の倉科カナさんは、本物の児童相談所職員からプロの姿を学ばれています。そしてリアル高校生の鈴木梨央さん、難しい役どころですが見事な演技力でスタッフ一同をうならせてくれました。特に出産シーンは、撮影に協力してくださった産婦人科の方々もびっくり!迫真の演技です。ぜひご覧ください。

【作・演出】大橋守

自分のおなかを痛めて産んだ赤ちゃんを育ての親に託すと決めた女性には、いろんな事情がありました。
育ての親に託すことができると知らず我が子を死なせてしまった人にも想像を絶する事情がありました。
申し訳なく思いながらもいろんな事情を聞きました。養子縁組の当事者の方々や、児童相談所の方々が、私のぶしつけな質問にていねいに答えてくださいました。言いにくいはずの事情もお話ししてくださった当事者の皆さまのお気持ちに添えるようにと何度も何度も脚本を書き直し、改稿は撮影中まで続きました。
この企画に共感してご参加くださった出演者の皆さまからも励まされ、いろんなアイデアもいただいて、素晴らしい音楽に彩られ、番組は完成しました。ドキュメンタリードラマと銘打っていますが、そんなに難しくお考えにならずにご覧ください。僕自身知らなかったことを番組を通してお伝えしたいと思います。

【ディレクター】猪瀬美樹

“思いがけない妊娠”をした女性が、追い詰められた末に赤ちゃんを殺害したり、遺棄したりする事件が相次いでいます。私たちは「ひとりでも多くの命を守りたい」と、名古屋発のこのドラマ・プロジェクトを立ち上げました。事件が起こると多くの場合、妊娠した女性ばかりが罪に問われ、「なぜ周囲に助けを求めることができなかったのか」が省みられることはほとんどありません。このドラマは、これまでに取材したさまざまな実例に脚色を加えたストーリーで、追い詰められていく女性たちの実像の一端を伝えます。番組をきっかけに「もし、自分や大切な人が“思いがけない妊娠”に直面したら?」、「どんな支えがあれば、命を救うことができるのか?」など友達と、交際相手と、家族と、そして、地域で…。《対話》を行う機会になれば幸いです。